日本のラノベ、ネット小説は時代遅れだと中国で言われるのはなぜか 中国オタク事情新年編【中国オタクのアニメ事情】

2020年01月01日 12:000

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中国における日本「軽小説」枠の変化


以上のような中国のネット小説の大きさ、活発さなどが、現在の中国のオタク界隈で日本の「軽小説」を時代遅れだと見なす空気の大きな原因となっていますが、ほかにも中国における日本のラノベ作品を取り巻く環境の変化、ラノベ原作アニメの変化などの影響が考えられるそうです。

一時期の中国本土では、天聞角川などの正規ルートにより現地の店舗でも比較的単価が高く手頃に扱える商品として日本のラノベ作品が流通していました。
しかし2012年頃から日中関係の悪化による日本のコンテンツに対する規制が発生し、中国に入るラノベ作品も激減したそうです。さらにその後、日本のコンテンツに対する空気が変わっても、市場環境の変化や中国のオタクの世代交代もあってか、ラノベに関してはあまり持ち直さないまま今に至るといった状況が続いているとのことです。

また日本のラノベ界隈の変化も中国からは把握し難いそうで、近年は旧来のライトノベル作品とネット小説出身の作品(およびネット小説としての活動)が、どちらもひっくるめて「軽小説」として扱われるようになってきているので、議論の際にも何かと混乱しているそうです。この辺りについては、日本でもラノベ作品とネット小説出身作品の境目がどんどんなくなってきているので、余計にヤヤコシイことになっている感もあるとのことです。

そしてもっとも影響が大きいのはラノベ原作アニメだそうで、近年の中国で正規配信されている日本のラノベ原作アニメは異世界モノばかり、それも中国で「龍傲天」(日本で言うところの「俺TUEEEEEE」的なスラングだとか)と言われるような内容のものばかりということで、広い範囲の視聴者から
「ずっと同じようなジャンル、同じような内容の作品ばかりで変化がない。中国のネット小説では常に新しいネタを取り入れているのに!」
という辛い評価が出るようになっているそうです。さらに近年の新作アニメは1クールの短い作品が多くなっているのも、粗製乱造的な印象につながっているという話です。

もちろん、中国に入る日本のラノベ関係の作品の新しい動きがまったくないわけではなく、たとえば近年は、ネット小説などが原作のコミカライズ作品が増加しているといった動きもあり、アニメに関してもコミカライズ経由で原作の知名度が上がり、事前に内容を把握する人も増えているそうです。しかし内容的にはやはり異世界転移、転生系の作品ばかりということで、需要はともかく中国のオタク界隈での評価はあまりプラスになっていないそうです。


では日本の「軽小説」作品が中国で人気にならないのかというと……?


しかし日本のラノベ、ネット小説系の作品が中国で人気にならないわけでもないようです。
日本の異世界系の作品は現在の中国でも需要はそれなりにあるようで、日本のアニメを配信している中国の動画サイトで異世界転移、転生系の作品は比較的安定した再生数を稼ぐジャンルとなっています。

これに関しては、
「中国の視聴者はよくも悪くも爽快感のある展開を強く求めている」
「ライト寄りの視聴者からは楽に見ていられる作品、手軽に話題にできる作品の需要が高い」
といった事情などが影響しているといった見方もあるそうです。ジャンルや設定から来る印象は微妙なことになっているものの
「実際に見てみると、なんだかんだで楽しめるし、話題にできる」
のだとか。

さらに興味深いのは、日本の異世界転移、転生系作品のお約束や定番ネタが中国のオタク界隈にも広まってきたことから、そういった要素に関するパロディを盛り込んだ作品がかなり「刺さる」ようになってきていることです。
実際、2019年秋の新作アニメでは「慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~」「私、能力は平均値でって言ったよね!」などのパロディ要素の強い異世界系作品が大きな話題となりましたし、「慎重勇者」のほうは秋のシーズンでトップクラスの人気作品になっています。

日本と中国では笑いのツボが微妙に異なるのもあってか、ギャグ要素が強い作品が中国で人気になるのは難しいのですが、いったん「笑える作品」ということで人気になれば、ライト寄りを中心とした広い層からのファンが集まりますし、人気や話題が比較的長い期間続くことも期待できます。
そんなわけで、日本のライトノベル、ネット小説系の作品に関してはネガティブな扱いが目に付くものの、現在の中国オタク界隈における共通認識や定番のネタの知識が蓄積されているのは、かなり面白い状況に感じられますね。

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(C) 土日月・とよた瑣織/KADOKAWA/慎重勇者製作委員会

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