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内面を考えながら、アニメキャラを“リアル系”に落とし込む
── 最近、林さんは「機動戦士Zガンダム」のハマーン・カーンや「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」のシーマ・ガラハウを、リアルっぽくアレンジして作っていますね。 林 以前、ホビージャパン誌で「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のサイクロプス隊やクリスチーナ・マッケンジーを、リアル寄りに造形したことがあったんです。あくまでもアニメキャラですから、実在の人物をスキャンして作れるものではないし、デジタル造形なら、より自分の好みのラインに落としこんだアレンジが試せるんじゃないだろうか。そう考えて、ハマーンやシーマのようなアニメキャラのシリーズを始めてみたんです。「Zガンダム」の中ではハマーンが好きで、強い指導者でありながらもシャアに憧れていた乙女心をバックストーリーとして織り込むと、その内面が造形にも現われるみたいです。
── それで、ちょっと憂いのあるハマーンになっているわけですね。 林 バックストーリーを設定してフィギュアを作りはじめたのは、オリジナルの「青春少女」シリーズからです。それまでは漠然と形だけ追っていましたが、「この女の子は故郷から飛び立つ夢を持っていて、そんな無鉄砲な彼女を見守る友だちがいて……」と、ストーリーを考えながら作ると、すごくノレるというか、入りやすい。しかも、手に取ってくれた方たちにも、そのイメージが伝わるみたいなんです。
おそらく、アニメフィギュアを得意な原型師たちは、アニメを見て「このキャラが好きだ、好きだから作りたい」という気持ちが強いので、魅力的な造形物を作れるんでしょうね。自分には、そういう感情はあまりなくて、とにかく設定資料に近づけることばかり考えていました。最近、その姿勢が変わってきて、キャラクターの内面を考えて作るようになったんです。
── ちなみに、年上のキャラクターのほうが好きですか? 林 どちらかというと、そうですね。いろいろな感情をフィギュアに込めたいので、そうすると人生経験の豊富な女性の色っぽさに惹かれてしまいますね。あと、男性のフィギュアも作りたいのですが、売れないんです。露出度の高い女性フィギュアが、いちばん売れます。
── なんとも、わかりやすいですね(笑)。 林 高い技術力で、品質のよいフィギュアを作れば絶対に売れるはずだと勘違いしていました。だけど、技術力は売り上げには関係なかった(笑)。その点、自分の意識を変えていかなくてはいけないし、フィギュア単体では寂しいとも感じはじめています。ジオラマの中に置いてもらえるフィギュアだとか、カーモデルやバイク模型の横に置いてえるリアルなフィギュアも、積極的に作っていきたいですね。
(取材・文/廣田恵介)