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デジタル造形によって見えてきた「圧倒的な利点」とは?
林 デザイン事務所をやめた後、人形作家の四谷シモンさんの学校があると知って、お金をためて入学しようと考えました。ちょうど同じ頃、デザイン事務所に勤めていたときの先輩が「映画の小道具を作る会社を紹介してやるよ」と、声をかけてくれました。その会社にアルバイトとして入社し、市川崑監督の実写映画「つる -鶴-」の特撮用プロップを手伝ったんです。原型を作って型どりをして、その型に素材を流して複製して……と、一連の流れを勉強できました。「これなら自分ひとりでもできるな」「あれも作れるしこれもやりたい」という気持ちがふくらんで、1年間ほど実家にこもって原型づくりと型どりに専念して、その後、「メタルスキンパニック MADOX-01」のフィギュアでホビージャパン誌に載せてもらえたわけです。
── そこで、先ほどの「戦え!! イクサー1」の話につながって、アニメフィギュアの原型師になるわけですね。 林 幸いにも、バンダイさんやWAVEさん、そして海洋堂さん、数社から仕事をいただけるようになりまして、「うまく仕事としてこなせているな」という実感がありました。だけど、心の底から自分が作りたいリアル系のフィギュアを作らないと、本当の意味ではレベルアップしないのではないかとの懸念もありました。それで個人ブランドの「アトリエイット」を確立して、ワンダーフェスティバルなどのイベントに出るようになったんです。
── 最近はデジタルでも原型を手がけてらっしゃるようですが、何年前に始めたのですか? 林 3年ほど前です。最初は「面白そうだな」という興味から勉強しはじめたのですが、業界全体からデジタル原型ができないと仕事が来なくなるのでは……という風潮も感じました。なので、まず3DCGのソフト(Zbrush)を買って逃げられないようにして、毎朝少しずつ勉強するようにしました。
── デジタル原型は、手で作るアナログ原型と比べていかがですか? 林 いやもう、完全にデジタルのほうがやりやすいです。たとえば、1か月かけて1体の原型を手で作ったとします。鏡に映して見たら、左右で目の位置が違う。さあ、どう修正しようかと考えた場合、時間がないと楽な方法を取らざるを得ない、つまり、妥協せざるを得ないわけです。しかし、デジタルなら「目の位置全体を下げよう」と決めたら、瞬時に修正できる。1か月に1個の原型を作るのと、1か月に30回の修正を繰り返せるのとでは、どちらが目が鍛えられるかわかりますよね。
それと、デジタルなら自分の“好き”をつきつめられるんです。「このバランス、この鼻の高さ、口のラインが自分は好きだ」という微妙な部分を見つけられるんです。また、モニター内で色をつけられる機能もありがたいです。アナログ原型だと「えっ、塗装するとこんなにイメージが変わっちゃうの?」という失敗がありますから、デジタル造形を知らないと、いろいろな点で損するんじゃないかと思います。