「トップをねらえ2!」で、ガイナックスアニメーターに
─キャリア上、転機になったお仕事は?
本村 ガイナに行くきっかけになった、「トップをねらえ2!」(2004~06)ですね。別のスタジオで原画をやっていたところにいきなりガイナの人がやってきて、「うちに来ませんか」と誘われたんです。ガイナでは「トップをねらえ2!」の後、「グレンラガン」をやって、「屍姫」(2008~09)やって、「はなまる」をやりました。
─「はなまる幼稚園」で、総作画監督に抜擢された経緯は?
本村 最初に大塚舞さんとキャラデのコンペがあって、キャラデが大塚さんに決まったので、次点の自分が共同で総作監をやることになりました。
─そのほかに印象に残っている作品はございますか?
本村 視聴者さんの反応をリアルタイムで知ることができたので、「グレンラガン」をやっている時は、楽しかったですね。自分のやったことに対してリアクションがないと、モチベーションを保つのが難しいんですよ。制作さんは事務的に素材を受け渡しするだけなので、感想とかはないですし。
─「グレンラガン」は作画監督で参加されています。ロシウのアイキャッチ(第19話)は、本村さんが描かれたのですか?
本村 コンテが今石洋之監督で、その時の作監である自分が描き起こしました。
─ガイナックスのアニメーターになられた時のご感想は?
本村 その時は全然実感なかったですけど、今考えると、すごいですよね。近くに貞本義行さんや鶴巻和哉さんがいらっしゃって、緊張感がありました。
─現在はA-1 Picturesを拠点とされていますが、制作会社でやり方が変わったりしますか?
本村 関係ないですね。結局、誰と一緒に仕事するかが大事で、会社と仕事をするわけではないので。たとえ建物がきれいでも、やりにくい人がいたら、嫌ですよ。
基礎力が大切
─アニメーターに必要な資質能力とは何でしょうか?
本村 基礎力をつけることだと思います。デッサンがちゃんとできていると、デフォルメやリアル系の仕事やっても、すぐに基礎に戻れるんですよね。デッサンというのは「観察」という意味なので、日ごろから人の動作を観察して、ちゃんと描けるようにならないと。
─本村さんから見て、若手アニメーターの画力はいかがですか? 技術力の低下を感じたりしますか?
本村 いやいやいや……、むしろ逆です。最近のはやりを勉強させてもらっている感じです。今の人たちは、小さいころからネットでうまい人の作画を見ているので、強いですよ。
─「WEB系」と呼ばれるアニメーターについては、どうお考えでしょうか?
本村 WEB系の人は最初から動きありきでカットを作ってくるので、すごいと思いますよ。従来のアニメーターは背景にキャラがちゃんと載っていて、そこから動かす、といった感じなんですけど、あの人たちは「こう動かしたい!」という情熱ありきでやっている感じがします。
要するに、「初期衝動の差」があるんです。この仕事をするとは思っていなかった自分と、動かしたくてこの業界に入ってきた人たちとの差が、実はコンプレックスだったりします。
だから、使いどころというか、WEB系の人たちもいいところで使ってあげれば、いいんじゃないでしょうか。
今後は、キャラクターデザインやイラストも
─今後挑戦したいことは?
本村 キャラデ方面をやりたいですね。1枚絵で仕事がしたいなという気持ちもあるので、イラスト的なこともやってみたいです。
─お芝居の勉強もされたそうですが、演出にもご興味が?
本村 自分の中ではまだ作画をきわめていないので、途中で演出に行くつもりはありません。中途半端が嫌なんです。ただお話が来れば、将来的にやることもあると思います。
─最後に、アニメファンの皆さんにメッセージをお願いいたします!
本村 視聴者さんにはモチベーションにつながるので、なるべくアニメーターに作品の感想を送ってあげてください、とお願いしたいですね。
アニメーターを目指す人には、デッサンをちゃんとやっておいたほうがいいぞ、貯金もしておいたほうがいいぞ、と言いたいです。
●本村晃一 プロフィール
アニメーター、作画監督、総作画監督、キャラクターデザイナー。かわいい系や日常芝居の作画を得意とし、妥協を許さない仕事ぶりが業界内外で高く評価されている。美術系大学を卒業後、ゴンゾに入社。フリーになってからは様々な作品に参加、「トップをねらえ2!」(2004~06)をきっかけにガイナックスへ。現在は、A-1 Picturesを拠点に活動中。作画監督として参加した作品には「GAD GUARD」(2003)、「クロノクルセイド」(2003)、「天元突破グレンラガン」(2007)、「とらドラ!」(2008~09)、「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」(2010)、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011)、「僕は友達が少ない」(2011)、「夏色キセキ」(2012)、「とある科学の超電磁砲S」(2013)、「鬼灯の冷徹」(2014)、「終わりのセラフ」(2015)、「ローリング☆ガールズ」(2015)、「ブレンド・S」(2017)など多数。「よつのは」(2008)では作画監督だけでなくキャラクターデザインも手がけ、「はなまる幼稚園」(2010)では大塚舞さんと共同で総作画監督を務めた。
※TVアニメ「はなまる幼稚園」 公式サイト
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/hanamaru/
※TVアニメ「夏色キセキ」 公式サイト
http://www.natsuiro-kiseki.jp/
※TVアニメ「ブレンド・S」 公式サイト
http://blend-s.jp/
※TVアニメ「鬼灯の冷徹」 公式サイト
http://www.hozukino-reitetsu.com/
※本村晃一 ツイッター
https://twitter.com/wired777
(取材・文:crepuscular)