メカニックデザイナー・常木志伸 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第13回)

2017年05月03日 10:000
メカニックデザイナー・常木志伸さん

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クリエイターの生の声をお届けする本連載。第13回はメカニックデザイナーの常木志伸さん。常木さんは「小さな巨人ミクロマン」、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」、「ボンバーマンジェッターズ」、「Get Ride! アムドライバー」、「機動戦士ガンダムUC」、「ギルティクラウン」、「超速変形ジャイロゼッター」、「PSYCHO-PASS サイコパス」、「とある科学の超電磁砲S」、「甲鉄城のカバネリ」、「ブレイブウィッチーズ」といったアニメに登場する銃器やメカのデザインを手がけてこられた。当インタビューでは影響を受けた作品、経歴、仕事に対するこだわり、昨今のデザイン事情、メカニックデザイナーに求められる資質能力、今後の目標などを語っていただいた。

 

一番好きなのは「ボトムズ」

 

─本日はどうぞよろしくお願いいたします。常木さんのお話をうかがう前に、こちらはブロック玩具の「レゴ」でしょうか?


常木志伸(以下、常木) レゴは趣味でやっているんですよ。僕の写真ばかりあってもしょうがないので、作ったものをいくつか持ってきました。


─細かいところまで作りこんでおられ、すごいですね。貴重なものを見せていただき、ありがとうございます。それでは早速ですが、影響を受けた作品からお話いただけますでしょうか?


常木 僕は子供のころから「サンダーバード」、「謎の円盤UFO」、「スペース1999」のようなSFドラマを観て育ってたんですよ。誕生日になると友達に「お前はサンダーバード1号、お前は2号を買って」と、プレゼントをお願いするほどでした。「スペース1999」のお話はグダグダだったんですけど、メカはとにかくカッコよかったですね。


一番好きなアニメは何かと聞かれたら、「装甲騎兵ボトムズ」(1983~84)ですね。大河原邦男さんの作品は、「機動戦士ガンダム」(1979~80)よりも「ボトムズ」のほうが好きなんです。主人公が乗ってるロボットなのに、同じものが大量に出てきて、しかも主人公が乗り潰していくというのも衝撃的でしたね。


高橋良輔監督はメカ演出が素晴らしくて、当時は「太陽の牙ダグラム」(1981~83)、「ボトムズ」、「蒼き流星SPTレイズナー」(1985~86)と続けてやられていたのですが、どれもメカアクションを変えておられたんですよ。大河原さんのデザインは、シンプルだけどアニメーターには描きやすいブロック構造なので、ちゃんとその動きに追従できる絵だったんです。なので、設定単体で見るより、アニメで観るほうがカッコよく見えました。


─尊敬する方は? 師匠的な方はいらっしゃいますか?


常木 デザイナーの師匠というのは、正直いません。デザインする時って、「こういうふうにしてほしい」という指示は監督から来ますが、基本1人なんですよ。知り合いのデザイナーは皆さん経歴バラバラですし、「俺はもっとうまく描けるぜ」というのを持っているから、デザイナーをやっていると思うんですよね。


昔から見ていてすごいなと思う方は、竹内敦志さんですね。「太陽の船 ソルビアンカ」(1999)の宇宙船の形が衝撃的で、「天地無用!」でも見たことのない宇宙船を描かれていました。劇場版「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995)でもカッコいいメカが次々と出てきていて、当時の僕はスタジオたくらんけで、竹内さんの描いた車を動画にしていました。

 

ミリタリーSFが得意

 

─得意とされるデザインは?


常木 「近未来的な軍事もの」です。「ギルティクラウン」(2011~12)では対地攻撃衛星のルーカサイトや春夏が乗っていたバイクなどをデザインしました。


「とある科学の超電磁砲S」(2013)や「ソードアート・オンラインII」(2014)では、SF的な鉄砲が描けるのかなと思ったのですが、実際にある鉄砲を描いてくださいというお話でした(笑)。妹達の銃やシノンのヘカートIIを描いています。


メカデザイナーと聞くと、ロボットデザイナーと思うかもしれませんが、仕事としての量は多くありません。「PSYCHO-PASS サイコパス」(2012~13、2014)ではドローンを描きましたが、人が乗って戦うロボットは「超速変形ジャイロゼッター」(2012~13)ぐらいですね。

 

 

「うる星やつら」の動画マンとしてキャリアスタート

 

─キャリアについてうかがいます。最初に入られたスタジオはどちらでしょうか?


常木 かつて存在したスタジオ夢民です。社長は渡部英雄さん、副社長は敷島博英さんで、お2人とも東映のご出身です。


代々木アニメーション学院に通っていた時に先生から「今度知り合いが会社を作るので、見学だけでも」と言われ、学生何人かでスタジオに行ったのですが、気がつくと入社試験になっていました(笑)。先輩に上野ケンさん、同期には箕輪豊、菅野宏紀、藤田しげるがいます。


ちなみに、動画マンとして初めて名前がスタッフロールに載ったのは、「うる星やつら」(1981~86)です。実はそのころはまだ代アニの学生でして、動画は研修で行ったスタジオで描きました。「タップ割り」(編注:原画と原画のタップ穴が作る軌道の真ん中に動画用紙のタップ穴を置くことで、中割りが上手に描ける技術)などは学校では習わず、研修現場で学びましたね。


─もともとアニメーターをご志望だったのでしょうか?


常木 中学時代に「宇宙戦艦ヤマト」(1974~85)や「ガンダム」、高校時代に「超時空要塞マクロス」(1982~83)、「ボトムズ」、「機甲創世記モスピーダ」(1983~84)などを観ていましたので、漠然とアニメ業界に憧れがありました。その後、大学受験に失敗して、浪人生活が2年目に入ろうとした時に、親に頼んで代アニに行かせてもらいました。


─夢民では上野さんから指導を受けられたのですか?


常木 動画は社長の奥さんに教えていただきました。上野さんは原画マンだったので、原画の指導をされていました。ひどい会社はいきなり二原をやらせるところもあるみたいですけど、夢民や次に入った、たくらんけはちゃんと基礎を教えてくれました。


─たくらんけさんにはいつ頃移られたのでしょうか?


常木 夢民に入って2~3年後に、たくらんけ社長の近藤康彦さんからお声がけいただきました。


─当時のご生活は大変でしたか?


常木 僕は実家通いだったので何とかなりましたが、本当に大変でした。当時の動画は1枚150円くらいが普通だったので、部屋を借りられず、スタジオで寝泊まりする人もいました。地方から出てきた人のほうが、ガッツがあった気がしますね。

 

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