――川口さんは女性目線でのアドバイスもされるのですか?
時々ありましたね。諸星に眼鏡をかけさせたのも女性としての視点からです。情報屋のジャックとコンビになっている“レッド”という怪獣がいるんですが、彼を途中から人間の子供の姿に変身させたのも、私が強くリクエストした部分です。
――小学生キャラに膝小僧は必須だと(笑)。
いろんなタイプの男性キャラをバランスよく配置することはお話としても重要なんですが、これだけたくさんいれば「このキャラはいいな」って思ってくれるんじゃないかなって。女性って、「こういうの好きなんでしょ」ってイケメンキャラクターを出されると反発したくなるじゃないですか。「そういうことじゃないよ、わかってないわね」って。『ULTRAMAN』は、みんなただのイケメンではない癖のあるキャラクターばかり。キャラクター同士の関係性も楽しんでもらえるんじゃないかなって。
――おじさんキャラ多いですよね。諸星はおじさん枠でしょうか?
入ってないですよ、20代なんだから(笑)。おじさんは、これ以上増やさないでほしいなあ。男性読者には、おじさんって人気あるんですけどね。
――川口さんは一女性として、これまでに萌えるエピソードやコマとかってありました?
諸星がけっこうキツイセリフを言うのが好きなんです(笑)。進次郎に厳しいことを言うんですが、カッコいいんですよ。「おまえは毎年夏の終わりに落ちた蝉の死骸を見て悲しむのか?」とか、「今日から猿に合わせた生活レベルにしろと言われてそれが出来るか?」とか。諸星さんにまたガミガミ言われるなって思ってる進次郎との掛け合いも面白いですね。あとはやっぱり人間の子供になったレッドかな。たまらないかわいさです。
――『ULTRAMAN』は、今話題のモーションコミックに向いている作品だなと感じました。声がつくことで作品やキャラクターの色が濃くなっていますね。声優さんに関しては全部、作家からのリクエストなんです。もしアニメ化されたらこの人に演じてほしいというイメージがあって、描きながらその声優さんの声で脳内再生しているそうなんですよね。メインキャラクターはリクエスト通りの声優さんにしてくださっているので、豪華すぎてびっくりしました(笑)。
――編集部からリクエストしたことはありましたか。いえ、実績のある企業さんですし、お任せしています。モーションコミックをやり始めて最初の頃の作品だったので、力を入れてくれて、演出にもこだわってくださって。漫画の読み方とアニメの動かし方を知っている方たちが作っているんだなという印象がありましたね。
――漫画とアニメの長所をミックスさせた感じですよね。そうなんですよね。この作品ってコマがごちゃごちゃとしていないので、モーションコミックとの相性もよかったのかなって思います。清水さんはセリフを作るにあたって、リアルなしゃべり言葉にするよう意識されているんです。だからそのまましゃべってもらってもセリフとして違和感がないんだと思いますね。
――私個人の感想なんですが、異星人が非常に人間的で、それぞれに背景があるところが好きなんです。声優さんに演じてもらうことでより、キャラクターの感情やドラマ性が伝わってくる気がします。4~5巻のイガル星人のエピソードとかまさにそうですよね。ちょっと泣きそうになりました。
――特撮って敵を倒すものというイメージですが、『ULTRAMAN』はヒューマンドラマの要素もありますからね。進次郎も異星人を倒すとき、本当に殺していいのかって葛藤するんです。命を自分が奪うことの重圧に悩む、現代的なヒーローですよね。自分が強い力を持ってしまったことや、相手が異星人だからといって相手を殺していいのか、それって正義なのかということに悩み苦しむ。「正義の味方というキャラクターではないからこそ、本当の正義について考えてしまう」。アクションをしっかり描くことももちろん意識していますけど、根底にあるのはドラマですね。大人が読める物語だと思います。
――読む人の情感に訴えるものがあるという点で、女性も読みやすい作品だなと感じました。最初はモーションコミックから入っても十分に作品の世界観を楽しめますね。そうですね。モーションコミックは原作漫画2巻まで配信されますが、続巻も配信予定なので、この先もまだ楽しんでいただけると思います。声がつくと進次郎ってカッコいいんだなって思いましたね(笑)。木村良平さんや内田真礼さん、関智一さんなど声優さんのファンの方にもぜひチェックしていただきたいです。そこから漫画にも興味を持ってくれるといいですよね。
――『ULTRAMAN』に興味を持った方に、メッセージをお願いします。
特撮の「ウルトラマン」を知らなくても確実に面白いです。そして読んだら「ウルトラマン」を見たくなる。ウルトラマンのことを知ったら漫画がより面白くなる。つながって知っていく楽しさが味わえます。まずは漫画『ULTRAMAN』から入ると、それは楽しい世界が待っていると思います。
ウルトラマンというだけで知らない興味ないと手に取らない人もいるかもしれないですが、もったいない。海外ドラマのような要素も入ってるし、アメコミのダークヒーローみたいな世界観もある。それになにより漫画として面白いので、一気に読んでしまえると思いますよ。
表紙などを見るとアクションやバトルのイメージを受けると思いますが、進次郎や諸星ってスリムなので、男性向けのバトル漫画には出てこない雰囲気なんですよね。どちらかというと女性向けの漫画に出てきそうなキャラクター。カッコいい男性が出てくる漫画であることもちょっと知ってほしいなと思います(笑)。
(取材・文/大曲智子)
>>「ULTRAMAN」早田進次郎役の声優、木村良平さんインタビューを近日公開予定!
「ULTRAMAN」公式サイト
http://heros-ultraman.com/ <ストーリー>
ウルトラマンの遺伝子は脈々と受け継がれていく!?
初代ウルトラマンであった早田進(ハヤタ・シン)の息子、早田進次郎(ハヤタシンジロウ)は、生まれながらに特殊な力を持っていた。ある日突然、謎の敵に襲われる進次郎。そこに助けに現れた父・早田は、自分こそがウルトラマンであったと告白、敵との戦闘が始まる。
父のピンチを前に、元科特隊(もと・かとくたい)の井手(イデ)からウルトラマンスーツを与えられた進次郎は、父を助けるため、スーツを着て敵との戦いに挑む!
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