『ガンダム Gのレコンギスタ』は『機動戦士ガンダム』誕生35周年記念で制作されたガンダムシリーズの集大成的作品で、宇宙世紀(U.C.)後のリギルド・センチュリー(R.C.)が描かれる。
テレビアニメとしては、『OVERMAN キングゲイナー』から12年ぶりのTVシリーズ総監督作品となる富野由悠季に最新作への狙い、後世に託す思いを聞いた。
※2014年8月23日(土)より2週間限定公開で、第1話から第3話の『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』が全国13館でイベント上映(配給: 東宝映像事業部)。
以前は、もっとアニメを気軽に作れていた。

――タイトルは、『G(ジー)のレコンギスタ』なのか『G(ガンダム)のレコンギスタ』、どちらでしょう?タイトルの解釈は、見た人それぞれに任せます。
――「Gravity(重力)」の「G」かも知れませんね。「Ground (大地)」の「G」かも知れないでしょ?
――「元気のGだ!!」という力強いキャッチコピーを、監督みずから書かれてましたね。ええ、自分の中では「元気のG」が一番しっくりきます。でも、最初からあっけらかんと元気な作品を作り始めたのではなく、絵コンテが5~6本上がってきた頃、「元気のG」でもあるな……と気がついたんです。もうひとつ、観念的にイメージしていた「ガンダム離れ」というコンセプトが、映像から見えてきました。つまり、「え、モビルスーツが出てきてるのに、どうしてガンダムじゃないの?」という絵になったので、「やったぜ!」という気分になったんで、元気のGなわけです。
――絵コンテの話が出ましたが、富野監督のコンテは丸チョンで書いてあったからこそ、アニメーターの力量が試されたわけですよね。今回のコンテは色鉛筆まで使って綿密に描きこんでありますが?はい、本当は、あんなにも描きこんではいけないんです。だけど、これだけ現場を離れていると、あのプロセス(絵コンテの描きこみ)を踏まないと復帰できないという感覚がありました。
もうひとつ、絵コンテ作業が自分の体力チェックになるという意味もありました。若い頃は週1本で放送するのが当たり前だったけど、今の自分にはしんどいかもしれない……そういう意味で、絵コンテ作業で体力チェックをしておいてよかったし、必要なプロセスでした。
「作り手の体調」が作品に反映されてしまったとしたら、それは問題ですから。「Gは、元気のGだ!」と言い切れるようになったとき、作品として一本立ちできる勢いは得られたかな、と思いました。「元気のGだ!」のキャッチコピーは瞬間芸的に考えましたが、「これはハマるぞ」と思えたし、そういう作品を作れるだろうと予見することもできました。
絵コンテに話を戻すと、丸チョンに戻すべきなんです。そうでないと、週1本という制作ペースに耐えられませんから。こんなに時間をとられる作業は、コンテ描きではなく、いわば設定作りです。
――建物の形から、花火の色まで克明にコンテに描いてあるんですよね。

そこまで描かないと、コンテを切れなくなっていたんです。以前は、もっと曖昧にコンテを切っていたはずです。だけど、曖昧なコンテでは許されない制作スタジオ側の状況があります。『
機動戦士ガンダムUC』を作っていたスタジオ(サンライズ第1スタジオ)ですから、「フレームの四隅まで全部設定がないと、描けません」という要求がスタッフから出てくるわけです。
――絵コンテにすべて描きこまないと、今のスタッフは絵を描いてくれないという意味ですか?それだけではなく、「設定までコンテに描き込まないと、世界観が劇として定着しない……」という妙なことが起きてしまっているのです。アニメって、もっと気楽に作れていたんだけど、今はそういう部分がなくなってしまい、正直言うと苛酷に感じています。
――『ブレンパワード』のとき、「現場復帰のためのリハビリ」とおっしゃっていましたよね? 16年前の『ブレンパワード』に比べると……もう、(苛酷さの)レベルが、3~4段階も違います。その分、こちらが気を入れすぎてしまっているのか、年寄りの悪い部分が出てるのか、という自己反省もあります。だけど、シナリオが26話分できているから、今から方針を変えられないんです。ここまで来たらやるしかないんだけど、どこまで息が続くか……という心配も、正直言ってあります。