男子が大好きな“巨大ロボットへの熱き想い”と萌え萌えの「健全ロボダイミダラー」監督・柳沢テツヤインタビュー

2014年06月12日 18:080

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えっちいサービスシチュエーションと、巨大ロボットアクションが「スクランダークロス!」的に(笑)合体した『健全ロボダイミダラー』。

シリーズ構成としても、映像的な見せ方にしても、70年代~90年代のアニメの最大勢力だった巨大ロボット物のさまざまなオマージュが散りばめられていて、それを知って見るとより面白いという側面もある。もちろん、知らなくても十分に面白いのだけど、わかっていたほうが、スタッフの作品に込めた想いや狙いがより明確になるのは間違いない。

監督の柳沢テツヤさん自身、70年代のダイナミック・プロ作品(『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』『UFOロボ グレンダイザー』など)の大ファンであり、90年代では「勇者シリーズ」で作画監督として活躍されてきた、生粋の巨大ロボット燃えのクリエーターだ。そんな柳沢さんの“巨大ロボットへの熱き想い”も込められた『ダイミダラー』について、たっぷりとお話をうかがった。


手描きのメカ作画のためのスペシャルな役職


──シリーズもラストが近づきつつありますが、手応えはいかがですか?

あくまでもロボット物の面白さやカタルシスを伝えたようということでやっているんですが、最初は「ネタものだよね」と見られるだろうなと……。そこは望むところと受けて立ちましたけど、「でも見てもらえば、ビックリするぞ」と思いながら作ってました。実際、放送が始まったら、こちらの狙った形でのよい反応が聞こえてきて嬉しいです。


──リッツの過去が明かされる9話などはシリアスです。

そこはアニメのオリジナル要素として、最初から想定して入れていきました。そうした芯になるものは作っていこうというのが最初からありましたので。なかま亜咲先生も、かなりおもしろい発想される方で、そこが原作の面白さにつながってると思うんですけど、そういうものをちゃんともらって受け入れつつ、それをアニメとして成立させるにはどんなドラマを加えたらよいのか?を考えながら作ってます。


──ロボット物のオマージュとしては、発進シークエンスが『UFOロボ グレンダイザー』(※1)ぽい感じで(笑)。

あの発進シーンは、まったく打ち合わせすることなく、吉岡たかをさんが書いてきてくださったものです。「ああこれは『グレンダイザー』好きの僕に対するサービスなんだな、ならばありがたく画にさせてもらいましょう!」と(笑)。


──出撃の度に地上の一般の建物をぶち壊しちゃうのも面白すぎです。

あるときふと、浅草の街に建物をぶち破ってロボットがドドーンと立ち上がったら面白いだろうなと思いつきまして、それを打ち合わせで話したら、そこから発展して毎回建物をぶち壊して登場させることになったんですね(笑)。



──メインスタッフでは、田中良さん、糸島雅彦さん、大橋藍人さんという、メカやアクション作画が得意な方が、特別な役職でクレジットされてますね。

田中良さんは、うち(TNK)の作品では『一騎当千GG』や『ハイスクールD×D』などで、ずっとアクションシーンを面倒見て頂いているんです。またOVAの『真ゲッターロボ』などでもメカ作画を担当されていたので、今回もお願いしてます。僕と世代的にも近いので、「ロボット物の共通言語」みたいなものが通じるんですよ。糸島君とは10代の頃からの友達で、「ちょっとペンギン描かない?」って電話しました(笑)。


──糸島さんは、『蒼き流星SPTレイズナー』などの印象がありますが、なぜペンギンを?(笑)


ですよね(笑)。元々彼は『ど根性ガエル』とかAプロ作品(※2)のファンなんですよ。ペンギンは原作もそうなんですけど、ゴテゴテと動かすよりも止めのエキセントリックなポーズの面白さとかで個性を出していきたいなと思っていたので。糸島君はそういうのが好きで描けるのを知っていたので声をかけたんです。そしたら糸島君は「ペンギンって何?」って(笑)。


──普通は、南極にいるペンギンを思い浮かべますもんね(笑)。


大橋君は、うちの若手でロボット作画とかが好きなので、入ってもらいました。彼は世代としては大張正己さんとか90年代の「勇者シリーズ」辺りで、田中さんとはまた違っているんですね。ロボットの、そういう新しいタイプのカッコいい感じとか、喜んで描いてくれるのでね。


──田中さんのメカニックレイアウト監修と、大橋さんのメカアクションキーアニメーターとはどう違うのですか?


今はもうロボットを描ける方がなかなかいないんですね。なので、レイアウトやメカ作画の修正、タイミングを整えてもらう仕事を田中さんにはやっていただいてます。大橋君は、7話の6型のデズガイズへの変形とかのバンクシーンを担当してもらってます。


──手描きのロボット作画作品としてのこだわりから来た役職なのですね。


個人的に手描き作画のロボットは面白いですし見たいとも思っていますから。それからCGのロボットって、ディテールが複雑だし色もリアルすぎて、カッコいいんだけどパッと見ただけじゃ描けないんですよ(笑)。

昔のマジンガーZとかって、TVで見て「カッコイイ」と思ったらなんとなく描けたじゃないですか。そんな風に、みんながダイミダラーを見て面白いな、カッコいいなと思って、マネして描いてもらいたい気持ちが最初にありました。だからCGで1カットで流麗に動くよりも、アップや引きのカットでメリハリをつけてしっかりロボットを見せたかったんですよね。



ロボットのカッコよさを決定づけるのは、動きやポージング!


──2型やペンギンロボをカッコよく動かすための苦労などはありますか?

そこに関しては最初から自信があったというと変ですけど、不安みたいなものはなかったです。僕らが昔から見てきたロボットって、結構第一印象ではカッコよくないものが多かったんですよ(笑)。例えば『ゲッターロボ』も鉄仮面みたいに、いかついマジンガーZに比べて、ゲッター1の顔は六角形の模様みたいなのがついてるだけじゃないですか(笑)。でもゲッタービームを発射するポーズとか、画面ではすごくカッコいい!


──ああ、確かに!


装甲機兵ボトムズ』のスコープドッグも初めて見たとき、こう言ってはなんですけど、カッコいいと思った人はまずいなかったと思うんです(※3)。『魔神英雄伝ワタル』の龍神丸だってすごく頭身低くて手足が短くて、いわゆるカッコいいロボットのいで立ちじゃないわけですよ。


──でも、きちんとバンクとかでカッコよくポーズ付けてましたよね。


だから、ロボットのカッコよさを最終的に決めるのはレイアウトやポージング、動かすタイミングなどなんです。そこは肌で感じてきているので、ダイミダラー2型もペンギンロボも、映像になれば絶対カッコよく見えると思ってました。ですから話数が進んできて「ダイミダラー2型、カッコよく思えてきた」っていうファンの方の声が聞こえてくるようになって、うれしいですよね。


──Hi-Ero粒子の設定が、アニメはSFっぽい感じに掘り下げてますね。


うち(TNKアニメーションプロデューサー)の河合敬介君が「せっかくロボット物をやるなら、SF的に設定を固めたい!」というので(笑)。それで吉岡さんに考えてもらいました。河合君は「Hi-Ero粒子ってなんだろう?」とずっとこだわっていて、でも原作サイドも実はそこはあまり深く考えてないんですよ。アニメも設定を解き明かす話にはしないから、無理に掘り下げなくてもいいだろうと僕なんかは思ってたんですけどね。


──それをベースにしてのチャクラゲージや、その解説とかは、SFロボット物らしい肉付けになったと思います。


チャクラは、たぶんオッパイをもむということから東洋医学みたいな発想になったのでは?と(笑)。それで僕はマンダラっぽい感じにしたいと思ったのと、Hi-Ero粒子の活性化に合わせて『伝説巨神イデオン』のイデのゲージ(※4)みたいに発光するギミックが欲しかったので、設定発注の時にプロップデザインの宮豊さんに「マンダラっぽいイデのゲージで」って(笑)。それでできあがったのが、チャクラゲージのデザインなんですよ。



オッパイは真摯にもんでほしい!(笑)


──前半の主役の孝一と恭子ですが、孝一は熱血バカという感じですね。

そうですね。前半は熱血ロボット物としてやっていこうと意識してましたから。


──また孝一のエロエロ加減といいますか(笑)、暴走加減が楽しかったです。


孝一役の島﨑信長さんは、最初はもっと「オッパイもむぞ!」みたいな下心全開の(笑)お芝居をされてたんですよ。そこはあくまでもマジメに演じてほしいとお願いしました。変顔的な感じとか、極端なしゃべり方の芝居じゃなくて、孝一達は本当に大まじめにやってて……大まじめにオッパイをもんでるのだから、「ふざけてデレてる感じじゃなくて、真摯にもんでほしい!」みたいな(笑)。




──真摯にもんでほしい!(笑)


そうした部分を気をつけながらやってました。恭子に関しても、過剰に面白く演技するのではなくて、なおかつ、あまり生っぽくいやらしくない、よい塩梅でのバランスで演じてもらいました。役者のみなさんは、すぐにこちらの狙いをわかってくださって、素晴らしい感じになりました。


──二人が乗る2型の操縦席のタンデムシートが向き合うようになるアニメ独自のギミックが、乳もみシーンとの連動で印象深いです。


あれはシナリオ作りをしているうちに出てきたアイデアで、プリンスは美容室だから床屋の椅子みたいに上下したりグルッと回ってもよいんじゃない?ってことで(笑)。プリンスはそもそも美容室なので、そうしたテクノロジーがすべてロボット開発に生かされてるという裏設定があるわけです。



──ああ、床屋の椅子ってコクピットみたいにカッコイイと子供の頃思いました!


そうそう!(笑)それで乳もみも画としてのバリエーションもつけられますしね。


──プリンスの三博士は、アニメのオリジナルキャラですね。


三博士のアイデアは、吉岡さんだったんですよ。深夜枠での萌えアニメとしては、女性キャラが少ないのでオリジナルで女の子を増やしましょうと。それでおそらく吉岡さんが最初にイメージしていたのは、『超時空要塞マクロス』のオペレーター3人娘(※5)なんじゃないかと思うんです。ただ「3人」というキーワードの中には、当然『マジンガーZ』の光子力研究所の三博士(※6)が含まれてるはずで(笑)。で、デザイン原案をなかま先生に描いていただいたんですが、思い描くものはみんな一緒で、先生が光子力研究所の三博士の名前をもじったネーミングも考えてくださったんですね(笑)。ただ、僕のほうでそり子とせわし子の名前を入れ替えさせてもらいました。光子力研究所にバッチリ合わせるなら、背の低い博士がせわし子じゃないと(笑)。



──そり子のすごい長台詞は、脚本上では一番最後に別枠的に全文書かれてますね。


あれは基本的に各話のライターさんに完全にお任せしてます。みなさん楽しんで書いてくれているようなので助かってます。


──4話が、すごい70年代ロボットアニメのオマージュ回でした(笑)。


あれはもう、ロボット物をやる以上避けては通れないと勝手に思いこんでるワケなので(笑)。まぁ、あの手の話の大元は最初の『サイボーグ009』の「Xの挑戦」(※7)ですよね。だからサブタイトルはそれをもじっているわけですけど、お話そのものは何か具体的な元ネタがあるけじゃなくて、「どこかで見た雰囲気だけど完全に新しい話」を目指したので、完全にゼロから作ってます。元ネタをなぞるタイプのパロディは『ダイミダラー』の方向ではないですから。いろいろとオマージュはいっぱいやってますけど、あくまでも根底にある物語をより面白く見せるための手段なんですよ。



──つまり雰囲気だけ借りてくる形ですね。


ええ。それで僕がアイデアを話したら、吉岡さんはシリーズ構成表に、そのまんま「セックスの挑戦」って入れてくれました(笑)。でもタイトルだけで「後は監督にお任せします」って。なのであの回は、植竹須美男さんと僕とで作っていったんですね。僕がお願いしたのは、恋愛話とはいうものの、戦いに疲れた恭子がホッと一息つくようなところを押してほしいということでした。


──5話でダイミダラー2型がドラマチックに大破してしまいました。

そこで恭子を脱出させたのは、吉岡さんのアイデアなんです。僕は最初「恭子を残すんですか?」と驚いたんですけど、後半からラストにかけて恭子を使って盛り上げたいという算段があったみたいで。それならば恭子を残すに当たって、よりドラマチックに話を作っていけるなと。2型がみずから胸の装甲を割いてコクピットから恭子を脱出させるシーンは、おそらく誰もが原作の『ゲッターロボ』の恐竜帝国編クライマックスの、ゲッター1がみずから腹を割いて、ゲッター線増幅炉を引きずり出して自爆するあれを思い浮かべたと思うんですね。




──ええ。『ゲッターロボ』展開キタ!と思いました(笑)。


でも、そこで自分の命と引き替えに恭子を脱出させて助けるのが孝一っぽいし、『ゲッターロボ』の単なるオマージュではなくて、『ダイミダラー』なりのドラマの必然性から来たシチュエーションにもなってるんですよ。


──あそこで、真っ先に惚れた女を助ける、それが孝一の漢らしさなのか!と(笑)。


そう(笑)。あれはグッと来ますよね。そこで「好きだったぜ、お前のオッパイ」とかも言ってますけど、とにかくパートナーのヒロインの命を守ったヒーローとして散ってゆく姿に男泣きするわけです。

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関連作品

健全ロボダイミダラー

健全ロボダイミダラー

放送日: 2014年4月6日~2014年6月22日   制作会社: ティー・エヌ・ケー
キャスト: 島﨑信長、日笠陽子、花江夏樹、石上静香、洲崎綾、大橋彩香、木戸衣吹、田所あずさ、子安武人、堀秀行、村田太志、浅沼晋太郎、伊藤健太郎、保村真、福島潤、小山力也
(C) なかま亜咲・eb刊/ペンギン帝国

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