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2014年4月、NHK Eテレで突如としてスタートした3DCGアニメ「超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ」。メンコを題材としながらも、ホビーアニメの法則を逆手に取ったパロディでツッコミ要素満載の作風は、またたく間に多くのファンを虜にした。
本作の森りょういち監督は、代表作「Peeping Life」で独特なコメディアニメを切り開いた人物としても知られている。本作をどのようにして作り上げたのか、脚本を担当した細川徹氏、そしてプロデュースを担当しているファンワークス代表の高山晃プロデューサーを交えて、企画の成り立ちからキャラクター作り、少人数体勢での新たなアニメーション制作手法のお話をうかがった。
ホビーアニメの法則の"斜め上"を目指した作品作り。
――まず本作の企画の成り立ちからお聞かせください。
森:2013年10月に高山さんから学校をテーマにした1分アニメをできないかという相談を受けたのがきっかけでした。そこで考えたのが「ホビーアニメのパロディ」です。まずホビーがあって、少年と仲間がそれを使った戦いの中で成長して、世界大会があって……というフォーマットがすでにあって、そのホビーが戦略性のないメンコだったら面白いだろうなと思いつきました。
それを提案したらNHK枠の企画に持って行くことになり、NHKのプロデューサー側も「こういうのを待っていたんだよ!」とまさかの反応でした(笑)。そこから2014年4月の放送に向けてあっという間に話が進んでいきました。そこで放送まで時間もないのでプロの脚本家に頼もうということになり、ご紹介いただいたのが細川さんだったんです。
細川:僕は最初、高山さんから「メンコのアニメをやらない?」とざっくりとしたオーダーを受けました(笑)。企画の時はもっとストレートにホビーアニメだったので、もっとパロディを全面に押し出した方がいいと考え、森監督と打ち合わせをしていきながら、もっとメタ的な構造を入れてツッコミ甲斐のある作品にして、最終的にこのような形になりました。
高山:自分の息子(小5)が「あまちゃん」とか「半沢直樹」好きで、オトナにしか分からない80年代ネタとか社内抗争のゴタゴタとか食い入る様に見てるのを横で眺めてて、コドモって、ちょっと分からない位のところを背伸びするのが好きなんだなぁと思い、コドモにはちょっと早いかなぁというシュールな笑いとかオトナしか分からないパロディを盛り込んだ企画をつくりました。NHKとしては王道の子ども向けアニメの企画はいっぱい来ていたんですけど、実はこちらが考えてた方向を模索していて、そのあたりがマッチしたのかなぁと思います。
--本作はNHKの「天才てれびくん」の直後に始まるアニメですが、そうしたメタ的要素をツッコんでくれる視聴者層というのは想定していましたか?細川:考えてはいました。ただ、そもそも「そこまで子ども向けにしなくていい」とは言われていたので、なるべく大人も楽しめるような作りにしようとは思っていました。
森:子ども向け要素として足りない部分は映像で補おうと考えていました。服を脱いだりとか変な表情をしたりとか、子どもはそういうわかりやすいギャグが好きなので、そこでバランスを取っています。親子で楽しんでいるというお話もたくさんうかがうので、制作側としてもどちら向けなのかわかりませんね(笑)。
--シナリオ開発において、改めて先行のホビーアニメを研究するようなことはありましたか?細川:いえ。みんなが頭の中で思い浮かべるようなホビーアニメをざっくりと想像しながらですね。というのは、具体的にしすぎるとネタが狭くなるので、いろんな世代が見られるようにあえてぼんやりとさせています。森監督のリクエストでパロディキャラは出てきますが、それ以外は僕のイメージと知識をもとに書いています。
--パロディといえば第5話に登場したキャラクターの「イナズマまもる」は公式に許可を取られたうえで登場させたそうですね。
森:最初は細川さんが、サッカー部とグラウンドの所有権を争ったら面白いよねという話を書いてきて、面白かったから僕がまもるのデザインを「イナズマイレブン」の円堂守くんそっくりにしたんです。その時点でさすがにこれは許可をとったほうがいいかなと……(笑)。レベルファイブさんも弊社も福岡にあって、互いに近所だし横のつながりもあるんです。それで脚本もお見せしたら、つかさがまもるに対して言った「サッカーは宇宙でやれよ!」ってセリフで爆笑してくれて、無事にOKをいただけました(笑)。
細川:DVDが発売されたんだから、それ持ってもう一回お礼に行ったほうがいいよ!(笑)。
--人気の広がりはいつ頃から感じられましたか?森:やっぱりこの第5話からですね。それまでも徐々に増えていっている実感はあったのですが、「イナズマまもる」の登場によってネットでも広まってこの作品にも興味がない方にも届いて、そこから見始めてくれて、この作品の世界観にほれてもらうという流れができましたね。
細川:やっぱり最初は視聴者の側も「この作品って笑う作品なの? パロディ?」って見方がわからなかったと思うんです。それがこの回でハッキリとわかったのでは。
--そのあたりも想定されていましたか?細川:ありましたね。全32話を見てもらうための方法論で作っているので、最初はわからなくてもよくて、どこから食いついても最後まで見たくなるような作りにはしています。
森:ホビーアニメの法則はあるんですけど、それを裏切っていく展開なので、次も見たくなるし前の話数も見たくなるという謎の中毒性が封じ込められているんです。