「ソードアート・オンライン」シリーズの監督、伊藤智彦インタビュー

アキバ総研 | 2014年10月12日 08:00
「ソードアート・オンライン」シリーズの監督、伊藤智彦インタビュー

ネット小説として注目を集めた後に電撃文庫から刊行され、国内累計発行部数1400万部の大台を突破した『ソードアート・オンライン』。2012年にはTVアニメ化され、ゲーム内での死が現実の死につながるショッキングなストーリーや、ゲームごとに華麗な転換を見せる世界観を巧みに描き出した。

放送終了後もその人気は冷めやらず、2013年の大晦日には特別編「Extra Edition」をオンエア。今年7月からはファン待望の2期がスタートし、さらなる盛り上がりを見せている。

今回はシリーズ全作を手がけた伊藤智彦監督にお話をうかがった。創作のこだわりや声優の起用法、そしていよいよ突入する《キャリバー》編、《マザーズ・ロザリオ》編についてなど、本作をより深く楽しめる秘話が明かされている。



絵描きではない演出家が何をするのか?



――続編制作のお話はいつごろ監督のもとに届いたのでしょうか?

2012年の1期制作の終わり頃には続編の話が出ていましたね。

――というとファンの反応もビビッドだったのでしょうか?

いえ、作品の反響はよくわからなかったというのが正直なところですね。海外のイベントに行くとチヤホヤされるため錯覚してしまうのですが、それ以外は実感がありませんでしたね(笑)。ただ制作時にはA-1 Picturesの別スタジオから「早く続きが見たい」と言われ、身近に見たがっている人がいて嬉しく思ってました。

――2期に向けて、どのような準備をされましたか。

《ファントム・バレット》編の舞台である《ガンゲイル・オンライン》(以下、GGO)はMMORPG(大規模オンラインRPG)と言いつつもFPS(一人称視点のシューティング)の要素が強く、銃がキーアイテムになるので、1期が終わってすぐ銃器監修の時雨沢恵一さんに引き連れられて、原作の川原礫さんやスタッフといっしょにグアムへ銃を撃ちに行きました。慰安旅行みたいでしたね(笑)。銃声を録音するために効果音のスタッフも同行していましたが、実際に現地で銃を撃ってみたら衝撃的でしたね。もう「大変なものを手にしてしまった……」という感じです。
グアムでの体験は第4話でキリトが射撃場で銃を撃つ場面にも影響しています。あそこではいくらキリトさんでもしょっぱなから銃を手にしてそう簡単に当たるわけがないという射撃に対しての説得力を持たせたかったんです。

――時雨沢さんもシナリオ段階から参加されていたそうですね。

時雨沢さんは、原作にはないアイデアを提供してくれましたし、お持ちのモデルガンも参考用に貸していただきました。銃の扱い方についても、引き金に指がかかっていると素人っぽく見えてしまうといった細やかな監修がありがたかったです。
第3話で詩乃の銃が排莢(はいきょう)不良を起こす場面は、そのほうが危なっかしく見えるという話だったと思います。海外のファンの中には「詩乃の時間はこれで止まってしまったのだ」と考えてくれている人もいると聞いたことがあります。
また、銃に関しては作画的にも注意を払いました。新たなスタッフとしてアクション作画監督に竹内哲也さん、銃器作画監督に青木悠君というニューカマーが入ってくれたのもデカいですね。竹内さんがいなかったらキリトもああいう風に弾を斬っていなかったかもしれないし、青木君がいなかったら銃をあんなにきちんと描けなかったかもしれない。特に青木君はひたすら銃だけを描き続ける作業をして、ラッシュチェックでも正しく描けているか確認してもらいました。銃は詳しい人でないと本当にわからない分野ですからね。

――伊藤監督は今作ではじめて脚本(第1話)を担当されました。こちらの手応えはいかがでしたか?

絵描きではない演出家が監督をするにあたって他に何かできるかというと、文芸と音響なんです。それで音響監督は『銀の匙 Silver Spoon』でやらせてもらったので、次はシナリオを書いてみようかと。とは言っても原作がしっかりしているので、それをピックアップして、調整していけばいいだけの話ではあるのですが。

――監督が付け加えた描写などはありますか?

第1話ではコンテの作業時に、後の《マザーズ・ロザリオ》編につながるアスナと母親の描写を加えました。キリトが将来の夢を語る場面は、制作が後半まで進んだ後に思いついたんです。そうやってコンテだけでなく編集の際にもフレキシブルに対応して、できる限り最善の策をとろうとしています。

――第11話でキリトがシノンのお尻を見る場面もシナリオにはありませんでしたね。

あのシーンは、はじめは腰にある拳銃のホルスターを見る場面だったんですけど、ホルスターを見たら自然と尻に目が行くだろうと思ってイタズラをしてしまいました(笑)。マジメにやるだけだと面白くないと、どこかで思ってしまうんですよね。第13話でも恭二君が「アサダサン」って何回言うのかなぁ、誰かカウントしてくれないかなぁと思って、花江さんに「アサダサンって沢山言って!」とリクエストしたりと、本線があまりブレないようなかたちでいろいろと盛り込めていければと考えています。

――オープニングとエンディングについても教えてください。

オープニングではなるべく最初のカットで世界観を込めた何かを見せたいと思っていて、あの赤い線は弾道予測線なんです。だから『古畑任三郎』じゃないんだということは大きく宣言しておきたい(笑)。どちらかといえばヒッチコックの映画ぽいって言われたいですね。『サイコ』や『北北西に進路を取れ』のオープニングを手がけたソール・バスのリスペクトでー・・・というオーダーで撮影の廣岡さんに仕上げてもらいました。
エンディングは本編とは毛色の違う、俺の中からは出てこない映像がほしかったので佐藤信子さんに依頼しました。リクエストとしては詩乃とシノン、さらに幼い詩乃もいるのだとか、水色っぽいイメージかなあ・・・ということを漠然と伝えました。完成した映像を見たときは「こうなるんだ」みたいな、いち視聴者としての立場で楽しんでいましたね。

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