きっかけはHEROMANのフィギュアから。「ベイマックス」コンセプト・デザインのコヤマシゲト インタビュー!

2015年01月01日 00:000

――「ベイマックス」での体験は、国内の仕事に影響していますか?

それが、意外と影響していないんですよ。確かにディズニーで仕事したんですけど、意外にも平常心でいられたというか、プレッシャーは感じませんでした。むしろ「ベイマックス」の企画が完成するかどうかを、本気で心配していました。コミコンでドン監督と会ったときも、「大丈夫そう? がんばってね」という会話になってしまって(笑)。というのも、彼が3年前からずっとあたため続けた企画に、ちゃんと結実してほしい、という思いが強かったんですね。


『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(2006年~)に参加したときも、富野由悠季監督とのお仕事もそうなんですが、憧れていたスタッフといっしょに仕事ができるという喜びがあると同時に、仕事が始まったら大先輩たちとも“仕事仲間”として対等にならざるを得ない。そこはやはり、ファン心理ではいられません。スタン・リー(マーベル・コミック原作者)に会ったときも、周りの人は気を使っていたけど「面白いおじいちゃんだな、どんどん話しかけよう」と思ったし、富野監督と会ったときも「緊張して黙っているなんてもったいない、怒られてもいいから、とにかく話しかけてみよう」思ってましたし(笑)。僕は、いつもそんな感じなんです。ディズニーへ行っても、「まずはスタッフのみんなと話してみよう」です。

もちろん、ディズニーのスタッフたちは世界のトップスタジオのクリエイターたちですから、同じ「絵描き」という意味ではいっしょに仕事したことで刺激になったり、大きな糧になったりはしました。だけど、僕はベイマックスの一部分を作ったにすぎない。みんなで作ったキャラクターなんです。街にポスターが貼られていると、「やっぱりハリウッド作品はでかいんだなあ」と思うぐらいで、僕自身が大きく変わったということではないですね。

――逆に、周囲の扱いが変わったりはしませんでしたか?

日本のアニメ業界の方たちが、こういう形でハリウッドの作品に関わること自体が稀だとは思うので、「……なんで?」とは聞かれます(笑)。でも、「いっしょにご飯を食べる機会があって、意気投合したから」としか説明のしようがない。何しろ、ドン監督は僕の今までの仕事をいっさい知らなかったわけですから。出会った時ですら「『クマのプーさん』にやけに興味のある変な日本人」としか思われていなかったでしょう(笑)。だけど、僕の『HEROMAN』のデザインだけで認めてもらえた。そこは、素直にうれしかったですね。



――もし、「僕もディズニー作品でキャラクターをデザインしたい」という日本の若い人がいたら、どうアドバイスしますか?

デザインはデッサンの正確さよりも、伝えたい要素が絵にちゃんと出ているかどうかの方が重要だと思うので、ていねいにうまく描くことより、考えていることをどんどん出す。うまい絵を描こうと意識すると、逆に伝わりづらい気がしますね。


僕の場合は日本のアニメ業界で鍛えられたのですが、アニメーターさんは画力が勝負かもしれませんが、デザイナーはアイデア、発想がキモなんです。へたくそな絵を人に見せるのは絵描きとしてはカッコ悪いんですけど、それを恥ずかしがってはいけない。ディズニー・スタジオに行ったとき、僕がしゃべっていると、その場でメインスタッフたちがズラーっと並んでて、その場で絵を描き始めたりするんです。その描いてる絵を見たら、もう、めちゃくちゃうまいんですけど(笑)、そこでビビってはいけないんですよ。

だから、もし本当に興味があるなら、海外へ行ってみちゃうのがいいと思います。海外のコンベンションに行けば、有名なアーティストが来ていて、彼らは相手が誰だろうと関係なく絵を見てくれます。たとえ僕のことを知らなくても、「君はこういう絵を描いているのか」と見てくれる、そういう文化の土壌があるんです。「これはいい絵だ」「こっちはよくない」と話してくれます。言葉の壁はありますが、絵を見せれば一発で通じるんですよ。



(取材・文/廣田恵介)

【コヤマシゲト プロフィール】
デザイナー。東京都出身。
2004年、OVA「トップをねらえ2!」に参加したのをきっかけに、多数のアニメ作品にかかわる。
代表作として「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」「交響詩篇エウレカセブン」「HEROMAN」「キルラキル」「キャプテン・アース」など。現在、富野由悠季監督最新作「ガンダム Gのレコンギスタ」が放送中。





書籍プレゼント


世界に1冊だけ!
コヤマシゲトさんの直筆サイン&ベイマックスイラスト付きの書籍『The Art of Big Hero 6』(英語版)を1名様にプレゼントするキャンペーンを2015/3/20から実施。

春のわくわくプレゼントキャンペーン開催中!



BIG HERO 6 - Concept Art by Shigeto Koyama. (c)2014 Disney. All Rights Reserved.

画像一覧

関連作品

ベイマックス

ベイマックス

上映開始日: 2014年12月20日   制作会社: ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ
キャスト: 川島得愛、本城雄太郎、小泉孝太郎、菅野美穂、新田英人、浅野真澄、武田幸史、山根舞、金田明夫、森田順平
(C) 2014 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ガンダム Gのレコンギスタ

ガンダム Gのレコンギスタ

放送日: 2014年10月3日~2015年3月27日   制作会社: サンライズ
キャスト: 石井マーク、嶋村侑、寿美菜子、佐藤拓也、高垣彩陽、福井裕佳梨、逢坂良太、辻親八、藤真秀、田中敦子、広瀬彰勇、木下浩之、水野龍司、たかはし智秋、中井和哉、小清水亜美、子安武人
(C) 創通・サンライズ

キャプテン・アース

キャプテン・アース

放送日: 2014年4月6日~2014年9月21日   制作会社: ボンズ
キャスト: 入野自由、神谷浩史、茅野愛衣、日高里菜、小山力也、鈴村健一、坂本真綾、工藤晴香、内山昂輝、山本希望、潘めぐみ、豊永利行
(C) BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS

キルラキル

キルラキル

放送日: 2013年10月4日~2014年3月28日   制作会社: TRIGGER
キャスト: 小清水亜美、柚木涼香、洲崎綾、三木眞一郎、檜山修之、吉野裕行、稲田徹、新谷真弓、関俊彦
(C) TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

HEROMAN

HEROMAN

放送日: 2010年4月1日~2010年9月23日   制作会社: ボンズ
キャスト: 小松未可子、木村良平、小幡真裕、チョー、保村真、石塚運昇
(C) B・P・W/ヒーローマン製作委員会・テレビ東京

交響詩篇エウレカセブン

交響詩篇エウレカセブン

放送日: 2005年4月17日~2006年4月2日   制作会社: ボンズ
キャスト: 三瓶由布子、名塚佳織、藤原啓治、山口太郎、根谷美智子、宮野真守、水沢史絵、志村和幸、チョー、松本保典、大木民夫、石森達幸、中村彰男、浅野まゆみ、青野武、山崎樹範、辻谷耕史
(C) 2005 BONES/Project EUREKA・MBS

トップをねらえ2! 第1巻

トップをねらえ2! 第1巻

発売日: 2004年11月26日   制作会社: GAINAX
キャスト: 福井裕佳梨、坂本真綾、沢城みゆき、岩田光央、山崎たくみ、高島雅羅、東地宏樹、堀勝之祐
(C) 2003 GAINAX/TOP2委員会

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事