シナリオは面白いことが大前提!アニメ「妖怪ウォッチ」監督 ウシロシンジが語る制作の裏側

2014年12月13日 21:000


すべては、面白いかどうか。



――そのサブ・エピソードでは、大人でないとわからないお話もある気がするのですが?

まず、「こういう話が面白い」、「こういうパターンにすれば面白い」というアイデアが大前提にあります。物語が成立したうえで、「そういえば昔、こういうのがあったよね」と味付けしているわけです。「太陽にほえるズラ」シリーズも、まず「刑事モノを面白くやる」という部分から入っています。そこを外してしまうと、子どもにとっては面白くないし、大人にも一部の人にしか受けない。結局、誰にも受け入れられない可能性があるわけです。



――たとえば、「このサブ・エピソードは全○回で完結」と決めてあるんですか?

いえ、まったく決めていません。やりたい時にやって、次に面白いものが見つかったら「次いこう!」という感じです。「これはもう完結させたほうが面白いね」となったら、その時に終わります。

――だけど、新たにキャラ表まで起こすのは大変な労力でしょう……

ほとんどすべてのサブエピソードにおいて、新たにキャラクターと美術の設定を作りますし、それぞれ新しいキャラも出てくるし、もう凄まじいですよ。このノリで、それぞれのパートのスタッフに頑張っていただいているわけです。

――サブエピソードは、すべて雰囲気が違いますからね。

そうですね。しかも、次々と新しいエピソードが出てきます。「いや、大変だからやめようよ」と言わずに「面白いからやろう!」と、OLMのスタッフの皆さんがノッてくださってるんです。

――5人のライターさんが分担して、それぞれのサブエピソードを書いているのですか?

いえ、各話ごとに1人のライターさんが担当しています。つまり、サブエピソードの流れも本編の流れも、同時に把握していないといけない。誰が何を提案したか覚えていないとシナリオを書けないので、全員が毎週の打ち合わせに参加する必要があるわけです。

――すると、1回につき数話分を1人のライターさんが書いている……

そうです。次のネタも考えながら、オリジナルの話を毎週数話ずつ書いていく。これと同じシステムを他の場所でやろうとしたら、確実に怒られてしまうのではないでしょうか(笑)。

――レベルファイブさんが「ちょっと待って」と止めることはないんですか?

レベルファイブさんも打ち合わせに参加されていて、むしろ日野さんを先頭にみんなでやっていますので止める人はいませんね(笑)。

――アニメ番組としての『妖怪ウォッチ』の今後の方向性は?

方向性というのは、特にないですね。とにかく自分たちの好きなことをやっているだけという感じです。

――だけど、プレッシャーは感じてらっしゃるでしょう?

「このように決められているから、必ずその通りに作らねばならない」といったプレッシャーは感じていません。「このアイデアを打ち合わせで言って、もし誰も笑ってくれなかったらどうしよう?」というプレッシャーは、強烈にありますね。

――シナリオ打ち合わせの雰囲気は、どんな雰囲気なんですか?

みんなで何時間も笑いながらやっているので、外から来た方に「居酒屋ノリですね」と言われたこともあります(笑)。スタッフそれぞれが、お互いにオーディションをしているような雰囲気なんです。役を演じながら、同時に審査員もやっている。笑ってはいるけど、緊張感がみなぎっています。今日の打ち合わせも、楽しかったですよ。もう「面白い」を通りこして、『妖怪ウォッチ』でなければできないことをやっている……と感じています。これだけいろいろな要素を詰めこめるほど懐の大きな、自由な気風の作品は、他にないでしょうね。



――なぜ、そこまでの自由が許されたのでしょう?

レベルファイブの日野さんが、「面白いかどうか」を大前提にしてくれたからでしょう。常識にとらわれて「やっぱり主人公はこうでなくちゃね」「こういう展開じゃないとね」と流されてしまうところを、「それ、面白いの?」と聞かれる。最初のアイデアが悪いわけではないけど、別の面白さはないのか探っていく。そこに、とにかく徹底的に時間をかけるんですよ。「面白いかどうか」だけは、日野さんは妥協されないので、その一点はとにかく守っていこう……。それに尽きます。

まずは、会議室に集まった十数名のスタッフたちを笑わせること。そこで笑ってくれないと、誰にとって面白いのか、尺度がわからない。場合によっては「自分が子どもだったら絶対に面白い」でも「自分の子どもたちは絶対に笑ってくれる」でも、尺度はいろいろあっていいんです。だけど、基本は子どもの側に立って、自分の身近に寄せたとき、笑えるかどうか。それだけなんです。フタを開けるまで、作っている僕らですらどうなるのかわからない、びっくり箱のような作品になっていると思います。

(取材・文/廣田恵介)


■プロフィール
ウシロ シンジ
アニメ監督、演出。代表作は『俺たちに翼はない』『祝福のカンパネラ』『おまもりひまり』(監督)など。


<あらすじ>
ごくごく普通の街「さくらニュータウン」に暮らす、ごくごく普通の小学5年生「天野ケータ」は、ある夏の日に白い奇妙な生き物「ウィスパー」に遭遇した。それからケータにつきまとうようになったウィスパーは、なんと妖怪だったのだ! 不思議な時計「妖怪ウォッチ」をウィスパーから渡されたケータは、その日から街のいたるところに現れる妖怪たちが見えるようになってしまった・・・! 日常にあふれる困ったことは、すべて妖怪の仕業だった!? ケータは困ったことを引き起こす妖怪を説得し、時には戦って問題を解決する。そして、その妖怪と友達になるんだ!


(C) LEVEL5/妖怪ウォッチプロジェクト・テレビ東京
(C) 映画『妖怪ウォッチ』プロジェクト 2014

関連作品

妖怪ウォッチ

妖怪ウォッチ

放送日: 2014年1月8日~2018年3月30日   制作会社: OLM
キャスト: 戸松遥、関智一、小桜エツコ、遠藤綾、奈良徹、佐藤智恵
(C) LEVEL5/妖怪ウォッチプロジェクト・テレビ東京

映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!

映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!

上映開始日: 2014年12月20日   制作会社: OLM
(C) 映画『妖怪ウォッチ』プロジェクト 2014

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事