“金田一”だからこその醍醐味は、小さいお子さんにも伝えたい
──新シリーズの放送が開始して約1ヶ月、周りの反応はいかがですか?主にネット上の反応しかわからないんですけど(笑)、やはり「金田一が帰ってきた!」と喜んでくださっている方が多いですね。ただ、メインとなる視聴者はお子さんたちだと思うので、その層がどう感じているのかは気になるところです。
──確かにネット上の反応だと、大人の意見が多いですからね(笑)。なかには「第1話からはじめちゃんが美雪の胸をつかもうとした!」とか、そういった部分に反応して喜んだり、昔を懐かしんだりしている方もいましたね。お子さんが観るにはシリアスでやや難しい部分もある“金田一”ですが、制作するうえでそういった幼い視聴者を意識されたことはありますか?残酷な表現はなるべくマイルドにしようとしています。ただ、推理劇や人間ドラマという部分は、お子さんでもわかってもらえると思って作っています。そういう要素が“金田一”の醍醐味でもありますから、お子さんにも伝わるよう作っていきたいです。
──ではその他に、制作するにあたって“金田一”だからこそ難しい部分はありますか?原作をアニメのシナリオに落としこむうえで、若干縮めなければいけない場合があって削る部分も出てくるのですが、すごく緻密に伏線が張り巡らされている作品なので、気をつけていても矛盾が出てきてしまう場合があるんです。削った分、うまく説明を足したりしてつじつまが合うようにするのですが、後で絵コンテの作業をしてみると、その時点で矛盾を発見したり……。そういう時は後から説明の台詞を足すなどしてつじつまを合わせます。複数の回にまたがっている伏線などは特に気をつけないといけませんね。そういう点が“金田一”独特の難しさだと思います。
──なるほど。なお、今回、新シリーズのスタートを飾るエピソードに「香港九龍財宝殺人事件」を選んだ理由はなんだったのでしょうか?理由はいくつかありますが、特に金田一復活の幕開けにふさわしい、スケール感ある事件だったからです。
──確かにスケールが大きいですし、とてもスピード感あふれるストーリー展開の事件ですよね。そうなんです。アニメでは原作よりもさらに縮めてスピードアップさせている部分もありますしね。
──このエピソードの次は何がくるのでしょうか?5月3日の第5話では、1話完結型の短編「速水玲香と招かれざる客」を放送します。大人気の玲香ちゃんがついに登場しますよ。キャストも前シリーズと同じ飯塚雅弓さんが担当してくれました。第6話からは、引き続き玲香ちゃんが活躍する「錬金術殺人事件」がスタートします。
──玲香ちゃんの登場、楽しみです!「速水玲香と招かれざる客」はいろいろお楽しみがある短編になっています。先ほどお話しした
数少ないコメディ回のひとつですね。ちなみに、以降の話数でオリジナル要素を少し取り入れた回もあります。
──オリジナルの部分を入れる時というのは、どういったことを意識されるんですか?原作が完成されたものとしてあるので、変にオリジナル要素を入れると蛇足になったり、異物が混じったようになってしまったりするんです。そうならないよう、うまくなじませることを意識していますね。
──そういったことは、土田さんと脚本の方々で話し合われるんですか?そうです。脚本はエピソードごとにライターさんが担当していますので、その方と私、ときにはプロデューサーを交えながら話し合い、作っていきます。ひとつの事件にひとりのライターさんという形なので、「担当事件があるって、なんだか警部さんみたいだね(笑)」とみんなで話していました。なんだかかっこいいね、と。
「金田一少年の事件簿R」は“懐かしさ”と“新しさ”を併せ持った作品
──“金田一”で土田さんが特に好きなキャラクターは誰ですか?はじめちゃんは天才型なので、ちょっとついていけない時がありますね。やっぱり好きなのは剣持警部かな。気取ったところもなく、素朴な親父さんという感じがいいです。
──今回のシリーズで剣持回はあるんですか?ありますよ。詳しくはまだ言えませんが、楽しみにしていてください! 直近で言うと第5話の「速水玲香と招かれざる客」も剣持のおっさんが面白い回なので、ご期待ください。「小杉さんのあのかっこいい声で、そんなこと言っちゃうの!?」と驚かれると思います。あと、実は5話の犯人のキャストにもひとひねりあるんですよ。その点にもご注目いただきたいです。
──いろいろな意味で第5話は注目の回ということですね。楽しみです。では最後に、今の土田さんにとって“金田一”とはどんな存在か、教えてください。すごく手強い相手という感じです。全力で向かっていっても、あちこちほころびが出そうになってしまうような難しい作品です。大変ですが、今必死に頑張ってるところです。目指しているのは、昔から観てくださっている古くからのファンの方も楽しめるし、今回初めて“金田一”をご覧になる新しい視聴者の方も楽しめるような作品作り。幅広い層の方に受け入れていただける“懐かしさ”と“新しさ”を併せ持った「金田一少年の事件簿R」を、ぜひご覧ください。
(取材・文/福島槙子)
放送予定
#5 速水玲香と招かれざる客 (5/3)脚本:福嶋 幸典 演出:政木 伸一 絵コンテ:そかべ たかし
脱獄犯・朽沼末吉は逃走を目論み見知らぬ船に乗り込んだ。
しかしそこは今をときめく国民的アイドル、速水玲香のクルージングパーティ会場だったのだ!!
乗客の一人から服を奪い潜入した朽沼はパーティに巻き込まれてしまう。
更に不運にもそこにいたのはIQ180の高校生金田一はじめと、警視庁捜査一課の剣持勇警部であった。果たして朽沼は彼らの目を欺き通すことができるのか!?
#6 錬金術殺人事件 File.1 (5/10)脚本:福嶋 幸典 演出:佐藤 雅教 絵コンテ:西澤 信孝
謎解きクイズ番組で見事勝利を収め、財宝探しのテレビ番組に出演することになったはじめ。
共演者の速水玲香、バイトのADとして同行する美雪、そして他のテレビクルー達と共に4億円相当の金塊が眠るという「恋琴島」に渡る。行方不明の天才物理学者・絵崎蔵人の館とされる「錬金術館」に滞在することになったはじめ達。しかしその矢先、乗ってきたクルーザーが何者かに燃やされてしまった。絶海の孤島 に取り残されたはじめ達に殺人鬼・仮面の「錬金術師」の魔の手が忍び寄る…!
#7 錬金術殺人事件 File.2 (5/17)脚本:福嶋 幸典 演出:角銅 博之
ついに惨劇の幕があがってしまった。容疑者と思われる仮面とマント姿の男「錬金術師」は忽然と姿を消し、はじめ達一同は混乱する。助けが来るまでそれぞれ鍵をかけた自室で待機する面々だったが、密室の中でまた一人犠牲者が発見される。
容疑者は第一発見者である速水玲香――!?
そんな中、ただ一人アリバイのない人物が容疑者として浮かび上がる。
それは二つ目の殺人の第一発見者である、速水玲香だった…。