「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」平尾隆之監督インタビュー

アキバ総研 | 2013年12月27日 19:30
「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」平尾隆之監督インタビュー

空の境界」「Fate/zero」などの作品群で知られるアニメ制作会社「ufotable」が、企画から実現までおよそ5年の歳月をかけて完成させた劇場長編アニメーション「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」。

「魔の国」に暮らし、魔法や呪いをかけたり解いたりすることを生業とする「のろい屋」の姉妹、ヨヨとネネ。姉のヨヨが迷い込んだ先の異世界・人間界で起こる騒動を、時にコミカルに、時にシリアスに描き出した王道ファンタジーである()。

※原作:ひらりん(物語環境開発)「のろい屋しまい」徳間書店刊

監督を務めたのは、TVシリーズ「フタコイ オルタナティブ」のチーフディレクター、「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」のテクニカルディレクター等を経て、「劇場版 空の境界」第5章「矛盾螺旋」で長編監督デビューを果たし高い評価を得た、新鋭・平尾隆之監督。本作に込めた思いや制作の裏話を聞いてきました!
(取材・文/山崎佐保子)

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■「絵の力を信じたい」というのもテーマのひとつで、絵を見てぱっと何の魔法かわかるものにしたかったんです。



————映画というメディアには、主人公の葛藤や成長を2時間くらいの尺の中で描き切らなければならないという使命があるので、アニメ化の作業は大変だったのかなと。


大変でした(笑)。大変でしたけど、面白かったですね。映画にするにあたり、何か1つでも2つでもいいから、劇場を出ていく時にお客さんに何か持って帰ってほしい。そういう思いは常にあります。今回は、ヨヨというキャラクターを掘り下げた成長物語で、一本筋の通った話を作るのがいいのでは、と考えました。
ヨヨさんの住む「魔の国」は「死んでも生き返る事の出来る」世界。これが軸になった。ヨヨは6歳の時から12年間氷漬けにされていたので、まだ小さい女の子なんです。おそらく「魔の国」にもモラルはあると思うけど、ヨヨが表面的にこの事をとらえてしまっていたら怖いよなと。だとしたら、そこをお勉強して帰って行くお話にしたらいいのかなと、物語のとっかかりになったんです。舞台を現実世界にしたのも、じゃあ“死んでも生き返らない世界”ってどこだろうと。そうするとやはり人間界で、生と死を意識して「魔の国」に帰っていく、とひとつひとつ積み重ねていった感じです。

————ヨヨがそれを人間界で体感するシーンは、確かにズシンとくるものがありました。

そうなんです。ヨヨが実際に体感しないと意味がないのかなと。なので、一時的な“死”を体感してもらわないといけなかった。

————絵的にもとても力のあるシーンでした。

そこで“死”を体感した後に、生まれること、つまり“生”を体感する。その対比をヨヨに感じてもらいたかったんですね。周囲からは「ヨヨはすごい良い子になりましたね」と言われました(笑)。ヨヨはもともと素直な子で、無邪気だからこそいたずらをする時も、何かを頑張る時も常に一生懸命。だから吸収も早い。そのへんは、描きながらつかんでいった感じはあります。

————“死生観”を学んだ魔女のヨヨが、魔力を失い人間に近い状態になった時、魔力をもたない人間の力強さを知る。非常にバランスよく描かれていました。

“魔法”って何なんだろうというのが、最終的にテーマとして出てきたんです。魔法とは魔力があって使える力なのか、それとも何か別のものがあるのか。そこで、魔法とは信じる力のことだ、という答えに行き着いたんです。人間って、信じる力で奇跡を起こしてきたじゃないですか。科学でも発明でもそうだけど、人間は魔法が使えない代わりに、きっとこういう世の中になるといいなということを信じて、世の中を良くしようと努力してきたわけです。その力を魔法と呼んでも、遜色ないんじゃないかなって。もちろん体力や知識もあるけれど、根本は「そうなるといいな」という信じる力。そういう信じる力によって、正しい魔法の使い方に繋がるんじゃないかなと。魔法の使えないキャラクターたちの動きによって、変わっていくんじゃないかなと考えていました。

————ヨヨは、魔女としては最強ですよね。

そう、魔力が無尽蔵にあるっていう設定なんですよね。ただし、まだ幼いので魔法も間違える。ヨヨとネネが組むと、最強の魔女であるおばあちゃんも勝てないくらい。そうなるとドラマにならないので、2人を引き離したという側面もあるんですよ。

————後半はシリアスですが、前半は“魔女っこ”アニメ的な楽しさであふれていますよね。制作は大変だったのでしょうか。

原画などを収める“カット袋”というのがあるのですが、この映画はトータルで1300カット。制作が終わり、最終的にカット袋をいれた段ボール箱は60箱くらいになったらしい。アバンタイトル(タイトルバックまでの部分)が10箱くらいあったらしいので(笑)。それくらい枚数がかかっているんですよ。

————「ufotable」さんの総力がかかっているとの噂も。

総力がかかっているといえば、かかってるかもしれませんね(笑)。でも、結局そうなっちゃったというのが事実。ヨヨを確立させていくために必要だったんですよ。冒頭、Aパート、Bパートと、20分単位くらいで区切りをつけるのですが、そこまでに魔法をいっぱい使ってほしかったんですよ。前半はヨヨが効率的じゃない魔法の使い方をたくさんしてますが、そのムダな感じを出したくて。

————三角帽子にほうきというクラシカルな魔女でありながら、魔法はタッチパネル操作を想起させるような現代的なものというギャップも面白かったです。

原作にも空間に魔法を描くシーンがあるんですよ。昔は儀式が必要だったんですけど、それがどんどん短縮されて、この形になったみたいですね。それを見て、魔方陣をわざわざ描かなくてもいいんだって。冒頭でゾウを出すんですが、ほうきから出る軌跡で魔方陣を作る、というのをやったんです。それができるなら、指でもできるだろうと考えたんですね。もうひとつは、魔方陣みたいな難しいものにしたくなかった。「絵の力を信じたい」というのもテーマのひとつで、絵を見てぱっと何の魔法かわかるものにしたかったんです。グラフィカルなものにすれば、魔法の説明がいらないですから。

————確かに「Fate/zero」などの系列とは正反対ですよね。

あれもあれで、非常に理論があっていいと思うんです。詠唱して魔法を唱えるので、「儀式」としてはすごく面白い。ただ、「ヨヨとネネ」に関しては子どもにも見てほしいので、セリフが長いときついかなと思ったんです。でも省くのはバカにしてることになるので、そこでグラフィカルなアイデアにたどり着いた感じですね。

————グラフィカルな魔法がとても直感的でわかりやすく楽しかったです。もっともっと魔法が見たいなという気にさせてもらいました。

ハハハ。とにかく複雑化したくなかったんです。最近、何でも複雑化してきているような気がしてきていて、作品として、シンプルなものに立ち返りたかった。

————そういう意味で「ヨヨとネネ」は懐かしい感じがしました。昔見ていた古き良きアニメのような。最近複雑化しているアニメ業界ってどう思いますか?

どうでしょう? 大人向けな作品の場合は複雑な表現も魅力の一部ですが、「ヨヨとネネ」みたいに子供にも観て欲しい場合は、どんどんシンプルにして絵で見てわかるものにしようと。昔よく言われていたのは、テレビの場合“ながら見”をしている人が多いので、セリフやSEで説明して分かるものにしましょうと。劇場の場合は、“座って見る”のが前提なので、視覚を強化しようと。

————ヨヨが妹のネネよりも小さい理由を映画では説明していません。何か理由があるのでしょうか?

これは説明すると長くなるからです(笑)。実はボツにした絵コンテで、ヨヨの生い立ちを絵本形式で説明するというのがあったんですけど、それにはだいたい1分以上かかる。この1分は果たして映画にとって必要なのかと。説明がなければ、ただの小さいお姉さんに見える。それでいいじゃん、と。その分、その1分を現在進行中のドラマに割きましょう、という決断でした。僕としても入れられれば入れたかったけれど、分量として考えた時に削るしかなかった。

————全てを明かさないことで、観客に推測を楽しんでもらう意図もあるのかと思いました。

それもあります。キャラクターの設定以外でもたくさんあるのですが、映画としてもっとも必要なのは「ヨヨ」としてのドラマ。見終わった後に、「あれ何だったんだろう?」とか話してもらえればうれしいなと。直接的な説明だと、ガイドされている感じでわざとらしくなるんです。ガイドさんが存在して、この世界に来た別世界の人に説明してるように見えちゃう。今回はそうじゃなくて、ここにこういう世界がある、そこから始めたかったんです。

————すべてを語らないことで、大人が楽しめる“余白”が残っていました。

たとえば、これ(目の前のトイレットペーパー)について今説明する必要ないですよね? 普段の生活で説明の必要がないものです。ヨヨは三輪車型のほうきに乗ってるけど、その絵で子どもだということがわかる。「ヨヨ特製三輪車型ほうきです~」と説明しなくても伝わるってことは、原作もそうですしね。


■小さい頃にアニメーションを見てワクワクドキドキしたような、原初的な体験を届けたかったんです。


————キャスティングについても教えてください。意外な方を使っていてビックリしたのですが、実際に違和感がなかったり。面白いキャスティングですよね。

「ufotable」の近藤からも、「こんなキャスティングはなかなかない」と言われました。今回はすべてオーディション。この役にこの人が合う、というのをやっていたらこうなったんです。僕がもともと声優さんに詳しくないというのもありますが、知らない人でも「役に合う」と思ったらいいわけです。ネネ役の加隈亜衣さんは、当時まだデビューしていなかったですしね。

————先入観なしで選ばれたのですね。

声質も大事だけど、人の個性ってしゃべり方だったりしません? ヨヨだったら跳ねるように踊るようにしゃべる人、ネネだったら暗いものを抱えているのでそういったものを感じさせる生真面目そうな人。最近のアニメは不勉強であまり見られていないのですが、昔アニメを見ていて声優さんを気にすることはあまりなかったんです。

————近年、男性女性問わずに声優さんがアイドル化している感じはありますよね。昔は「あ、この声は○○だ!」みたいに、キャラクターで声を覚えていました。

演出としてどうなんだと言われちゃいそうですが、いまだに僕はそんな感じです(笑)。

————ビハク役に中川翔子さんはビックリでした(笑)。

うまかったんですよ! オーディションに来てくれたのですが、それもすごく好感あったし。いわゆるアニメっぽい猫の鳴き方と、リアルな猫の鳴き方をやってもらったんですね。中川さんは猫を飼ってるそうなので、本当にうまいんですよ。あとで僕も猫を飼い始めたんですが、本当に中川さんみたいな鳴き方するんですよ。とにかくうまい。ビハクはすごく重要な役なので厳しく見たんですけど、中川さんに決まった。ガチです。

————ちなみに、中川さんはビハク役狙いでオーディションを受けられたのですか?

もともとはビハクだったんですが、孝洋とかヨヨもしゃべってもらいました。中川さんは意外と声が力強いんですよ。そうするとヨヨの女の子らしさより、少年ぽさかなと。でも孝洋をやると、宝塚っぽくなっちゃう。それでビハクをやってもらったらピッタリだったんです。中川さんはちょい役だからゲストだからと手を抜くことなく、絶対に作品を読み込んでくる。もともと漫画やアニメに詳しい方ですし、作り手の苦労や努力も知ってるから、すごく勉強してきてくれましたね。「ヨヨさんが神すぎる」とか言いながら帰っていきましたね(笑)。

————ヨヨ役の諸星すみれさんも、お若いのに素晴らしいですよね。

今、中学2年生かと思いますが、ヨヨをやってもらった時は中学1年生だったんじゃないかな。本当にうまいんですよね。子役の方って演技の振り幅にどうしても限界があると思うけど、諸星さんの場合それが大きい。たとえばアフレコで演技指導していても、「ちょっとこっちに振ってみてください」ってお願いすると、次のテイクでふっと振れちゃうんですよ。そこの振り幅にびっくりした。この歳でこれができるのかと。やはりプロですね。

————振り返って「ここは苦労した!」「ここは他のアニメにはないぞ!」っていうシーンはありますか。

すべてに苦労しました(笑)。森山君という天才のイメージボーダーがいるんですけど、「魔の国」の色合いがとにかく難しかったんですよ。切り絵のような絵本のような世界をイメージしたんですよね。「魔の国」だったら木も魔法でできているような感じでいろいろな色を使いたかったのですが、たくさんの色を入れていくと飽和してしまって目に痛くなってしまう。それをやわらかくしながらも、どう色を入れていくか。トライ&エラーを繰り返しながら作り上げていきました。

————最後に、平尾監督からファンの方にメッセージをお願いします!

今回は本当になるべく多くの人に作品の面白さを届けたいという思いがあった。作品を面白くするにはどうすればいいか、常にスタッフと話し合いながら作っていました。自分を含めて、小学生の時とか小さい頃にアニメーションを見てワクワクドキドキしたような、原初的な体験を届けたかったんです。小さい子にはそういう体験を、大人の方にはかつて昔そういうアニメーションを見てワクワクしたなって元気になれる、明日も頑張ろうと思えるような作品になるといいなと。それがちゃんと映画として皆さんに届いて、笑顔で映画館を出て行ってくれるといいなと思っています。


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上映開始日: 2013年12月28日   制作会社: ufotable
キャスト: 諸星すみれ、加隈亜衣、沢城みゆき、櫻井孝宏、佐々木りお、子安武人、中川翔子、長克巳、本田貴子、氷上恭子
(C) 物語環境開発/徳間書店・魔女っこ姉妹のヨヨとネネ製作委員会

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