2本立てのエピソード、どっちから見る?
さて、2作品の「全力少年」編と「マタアイマショウ」編、どちらから見ればいいのでしょうか? 個人的には、「マタアイマショウ」編を見たあとで「全力少年」編を見るのがオススメです。主題歌の「マタアイマショウ」を最後に聴くと、切なさがつのります。できれば「全力少年」を聴いてから明るい気分で終わりたい。
でも、ここは人により、意見が分かれるところでしょうね。「全力少年」編を見て、悠大と一緒にチヅルに振り回されてから、その謎を解くように「マタアイマショウ」編を見るのもいいかもしれません。
レンタルDVDやBlu-rayには、46分で2作品をひとつに編集した「Cinema Edit Version」が収録されています。悠大とチヅル、2人の思いと行動が平行して描かれていて、わかりやすい構成になっています。見ていてもうひとりのキャラクターの行動の意味がわからず、困惑することもない。ひとつの物語を見たという満足感が一番得られるのは、「Cinema Edit Version」だといってもいいでしょう。
でも! 「全力少年」と「マタアイマショウ」の楽曲が、それぞれもっとも効果的に使われているのは、「全力少年」編と「マタアイマショウ」編なのです。やはりここは、どんな順番でもよいので、「Cinema Edit Version」を含めた3作品を見てほしい。見比べると、同じエピソードやシーンが演出によって感じが変わることを実感できるでしょう。
谷川史子ファンの方には、この作品とのコラボコミック「東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー。」(講談社刊)を一読することをお勧めする。東京で出会う前の悠大とチヅル、それぞれのちょっぴり切ない恋のエピソード。巻末には谷山先生と塩谷監督との対談や、谷山先生の手によるキャラクター原案も掲載されていて、アニメとのコラボ感が満喫できる一冊になっている。独立した谷山史子作品としても楽しめるでしょう。
水彩画タッチで描かれた、雪が降りしきる東京。そのあちらとこちらに立つ青と赤、ふたつの色のタワー。その光は、まるで近づきたいのに近づけないふたつの心のように、寂しく切なくも見える……。すべて見終わったときに、背景の美術がそんなふうに感じられたら、あなたもこの作品の甘くてほろ苦い魔法にかかったのかもしれません。
(文/やまゆー)