【犬も歩けばアニメに当たる。第27回】「COCOLORS」魅惑の実験的体験型ライブアニメの、ここが困ったもんだ!

アキバ総研 | 2017年03月05日 12:00
【犬も歩けばアニメに当たる。第27回】「COCOLORS」魅惑の実験的体験型ライブアニメの、ここが困ったもんだ!

心がワクワクするアニメ、明日元気になれるアニメ、ずっと好きと思えるアニメに、もっともっと出会いたい! 新作・長期人気作を問わず、その時々に話題のあるアニメを、アニメライターが紹介していきます。

2017年2月17日(金)・18日(土)の2日間、東京・新宿バルト9で、神風動画オリジナルアニメーション作品「COCOLORS(コカラス)」の上演がありました。

音楽と声の演技はすべてその場で演じられ、会場で映像とひとつになるという、非常にユニークな作品。その上演形態から、イベントは「スペシャルコラボLIVE」と銘打たれています。

最初に上演されたのは、2016年10月9日に、徳島県徳島市で開催されたイベント「マチ★アソビ Vol.17」内においてでした。徳島県眉山山頂ステージの、野外上演だったといいます。

制作・原作は、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」第1部~第3部のオープニング映像で好評を博した神風動画。「神風動画オリジナルアニメーション作品」というところと、ほかに例のない上演方法に興味を持ち、17日夜の第1回を観た筆者が、未体験の楽しみをレポートします。


“手さぐり感”いっぱいの、実験的な上演


大きなスクリーンの前にセットされた、7人の演奏者と6名の声優のための席とマイク。通常の映画上映では見たことのない光景だ。

オープニング前のあいさつでは、「手さぐり感を楽しんでほしい」との言葉があった。主催者側も初めての東京公演で、どう受け止められるのか、未知数なのが伝わる。声も音楽もない、これから完成していくアニメーションを見るんだという実感がわく。

演奏者と声優が入ってきて、席に着く。会場内をしんと静寂が満たした。緊張感が高い。まるで、場内が全部アフレコブースになったみたいだ。これから何かが始まるのを、みんな待ち構えている。

映像が始まって間もなく、SE(サウンドエフェクト)は録音されているものを使っていることに気づいた。そこに生演奏の音楽と、声優の演技が乗っていく。映像と合わせてひとつになるが、ちぐはぐさはまったくない。

終わってみれば、声の演技も作品内容も映像のクオリティも、非常によかった。風変わりな上演形態に注目が集まりがちだが、もともとの作品のポテンシャルとクオリティが高いのだ。世界観、ストーリー、キャラクター、作画、どこから切っても独自の魅力に満ちている、非常に作り込まれた作品だと感じた。

なのに声と音楽はその場でライブでつけるという。なんでこんな変わった方法で上演しているのか、ワケがわからない(いい意味で)。


キャストの生演技がすごい!


とはいえ、この上演での一番の注目ポイントは、やはりキャストの生演技だろう。

見る前は、「ライブだと口パクを合わせるのが大変だから、表情が見えないキャラクターにしてあるんだろうな」と、軽く考えていた。

それが実際見たら、口パクこそないものの、その分、動きやカット割りが細かくて、タイミング的に楽できるところなんてまったくなさそうだ。唯一ライブではない効果音も、緻密に入ってくる。

つまり、映像としてはまったく普通の作りのアニメなのだ。これに声をあてる声優さんは大変というほかない。

ところが、居並んだ6人の声優は、これに楽々と声をあてていく(少なくともそう見える)。会場を埋めた観客は、緊張感も不安もなく、作品に心地よく没頭できる。

これは、すごいことだ。

プロの声優は、演技のプロであるのと同時に、タイミングを合わせるプロでもある。ファンがその現場を目にできることはほとんどない。イベントで生アフレコを見る機会があるくらいだが、名台詞や名シーンを再現するぐらいで、ここまで長いものは少ないのではないだろうか。

それが、目の前でひたすら続いていくのだ。まるで水が流れるように自然に、それでいて感情をはらんで喜怒哀楽を表出しながら。

クライマックスでは、主人公のアキの感情が激発する。声をふりしぼった泣きや叫びの演技を、人はどこまでコントロールできるのだろうか? そんな職人技を、観客は目の当たりにすることになる。


顔を隠したキャラクターたちが意外にもかわいい


劇中の登場人物たちは、防護服で全身を覆われているために顔が見えない。そんなキャラクターたちの話をどう楽しめばいいのか? 見る前には、頭を働かせながら見ないと、おもしろさについていけないのではという懸念もあった。

しかし、本編が始まるとそんな不安はかき消える。防護服を着こんだ登場人物たちは子どもだ。動きが不器用でかわいらしい。思わず頬がゆるむ。顔が見えない分だけ、どんな子たちなのかと、ぐっと気持ちが引っ張られる。見ているうちに表情が見えないことなんて気にならなくなる。

キャラクターに顔がないことがデメリットにならないなんて、おもしろい。アニメに表情なんていらないのだ……と言い切るのは乱暴だろう。しかし、細やかな動き、間の取り方、声の演技から、個性も感情も伝わってくる。

この感覚は、人形劇やクレイアニメにも似ている。視聴者は、必ずしも画面の登場人物の眉の上げ下げや口角の位置に反応しているわけではないのだ。

感情の表現も抑えめだ。メインキャラのフユにいたっては、ほとんど言葉を話さない。
キャラクターは3DCGで動いているが、線に強弱があって背景ともども手描きの質感があり、映像からざらつきとあたたかみを感じる。見終わったあとは、防護服を着込んだキャラクターたちがかわいくてしょうがなくなる。

Twitterで回ってくる公式のイラストが、これまたかわいくてたまらないので、興味を持った人にはぜひフォローをおすすめする。


いつまでも眺めていたくなる、密度の濃い美術


舞台となる世界はディストピアだ。サブカルチャーになじんだ目で見れば、世界が一度滅んだあとなんだろうということは、容易に想像がつく。

年齢制限が必要な表現なんて一切ないけれど、内容は大人向けだと感じた。セリフは過剰でなく、説明も最小限だ。絵で語られ、説明せず悟らせる演出が続く。子どもが見たら、少しわかりにくく感じるだろう。

全体に、ラクして受け取ろうとするならモノ足りないかもしれない抑制のきいた表現と、少し身を乗り出して目と耳を開くことでなだれこんでくる密度の濃い情報量が、背中合わせになっている。

背景の美術の密度は恐ろしく濃い。いつまで眺めても見飽きないほど、みっしりとした曲線が、空間を埋めつくしている。民族的でもあり、廃墟のような雰囲気も持っている。

顔の見えない防護服は、仮面をつけた土着の祭りの衣装のようにも見えて、地下から出られない人間たちを、運命共同体としてつなぐ。よくも悪くも、この世界で生きる人々は協力しあわないと生きていけないのだ。

白い灰に包まれた世界は、きれいな雪が積もった街のようでもある。地下は闇が支配する。色のない世界を舞台に、「色」をテーマにした物語が描かれる。

フユは版画の手法で絵を描き、そこに「色」を乗せていく。無機質な薄暗い地下世界の中で、絵の中には光があり、色が生まれていく。

会場でもらった来場特典の封筒を、帰宅して開いてハッとした。手摺りの版画だった。まるで作中世界からのプレゼントのよう。なんて粋なセンスだろう。デジタルとアナログの融合が、ここにもあった。


とても魅力的。だから困る!


そんなわけで、隅から隅まで濃密におもしろかったこの作品は、とても困った作品でもあった。

登場人物の仕草のひとつも見逃したくないいっぽうで、美術や背景が深く濃く、そちらも気になってしまう。

映像の密度がおそろしく濃いのに、そのすぐ下で、ほかではめったに見ることのできないキャストの生の熱演が展開されているのだ。

そして、キャストと同じステージに立ち並んだバンドメンバーが、ほかでは見ることのない珍しい楽器も使いながら、ゆるやかに高く低く音楽で作品を作り上げている。

これは一体、どこを見ればいいのか……?

贅沢な話だが、それがこの作品の一番困った問題点だと思う。

……いや、そうか、困る必要はないのか。

つまり、次に上演される機会があったら、私たちはまた、この困った体験をするために、会場に足を運べばいいのだ。


“みんなで体験する”アニメの始まりか


2016年、「Pokémon GO」のブームで、ゲームが屋外でのコミュニケーションツールとなった。「君の名は。」「聲の形」「この世界の片隅に」といった映画が大ヒットして、今までより多くの人がアニメについて語り合った。

モノや時間ではなく、「体験を購入する」ことに価値がおかれる新しい流れの中で、アニメも新しい道を模索している。そのひとつが「COCOLORS」なのだろう。

とても上質で、刺激的で、濃いアニメファンに腰を上げさせる、マニアックな中編アニメ映画。

そのいっぽうで、世界観やテーマは、大人の心をとらえる絵本のように深く広くて、普段アニメに興味のない人も惹きつけるものを持っている。

声優の驚くべき職人芸は、アニメファンだけでなく、声優をよく知らない一般の人にも、驚きをもって受け止められるはずだ。

果たして、体験型ライブアニメはこの先広がっていくのだろうか? 広がればその先に、今までにないアニメの楽しみや可能性が広がっている気もする。なんだかワクワクさせられる。

未来を見てみたいなら、見た人が今やることはたったひとつ。すなわち、「『COCOLORS』よかったよー」と、感想を周囲にシェアすることだ。



(文・やまゆー)
(C) kamikazedouga

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