【犬も歩けばアニメに当たる。第19回】「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」ご町内奇譚はギャップ萌えの宝庫!

2016年07月03日 12:000

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4月にスタートした「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」は、シリーズの中でも第4部にあたる内容です。日本のM県S市杜王町を舞台に、東方仗助という新たな主人公を迎えたシリーズ。人気だった第3部「スターダストクルセイダーズ」の主人公・空条承太郎も登場し、特殊能力が具現化した「スタンド」バトルも、さらに個性や作戦を生かしたおもしろい見せ方に進化しています。

 

「~なのに、~だ」という意外性はキャラクターの大きな魅力で、惹きつけられる気持ちは「ギャップ萌え」ともいわれます。第4部にはそんな魅力がいっぱい! 連載時から原作ファンの筆者が、今回のアニメの楽しみを語ります。


治癒能力を持つバトルヒーロー・東方仗助


「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」が毎週、非常に安定しておもしろい。2012年の第1部・第2部のアニメ化から3年半、ついにここまで来たかと思うと感無量だ。

 

日本の杜王町が舞台の第4部は、王道エンターテインメントの第3部とは違ういろんな試みや仕掛けがあり、原作者の荒木飛呂彦も非常にこなれたストーリーテリングを見せてきたシリーズで、「この部が一番好き」というファンも多い。

 

原作の「ジョジョの奇妙な冒険」という作品は、部が進むごとに、常に新しい要素を取り入れて、進化してきている。

 

主人公だけ見ても、第1部のジョナサンが、一番正統派の主人公だ。正義感は強いが力を持たない良家のお坊ちゃんが、修行を重ねて強く成長し、立派なヒーローになっていった。第2部の主人公のジョセフは、ジョナサンと対照的にお茶目でノリが軽く、正攻法より奇策を好む。第3部の主人公の空条承太郎は、これまたジョセフから一転、寡黙で無表情で一見クール、しかしやるときはやるタイプ。いずれも、弱者への理不尽な暴力を許さず、邪悪を憎む熱い心を持っていた。

 

この次にやってきた第4部の主人公が東方仗助(ひがしかたじょうすけ)というわけだが、彼がまた、いろいろ、その前のヒーローのパターンからハズれていておもしろい。

 

まず、見かけがちょっとユニークだ。承太郎も誤解を受けやすく学校では「不良」扱いされていたが、仗助は特徴的なリーゼントで、この髪型に異常なこだわりを持っている。

 

そして、仗助の具現化された特殊能力「スタンド」は「クレイジー・ダイヤモンド」。承太郎の「スター・プラチナ」に似た近接戦闘向きのパワータイプだが、「破壊したものを元に戻す(人体の場合は、傷を治療する)」という特徴がある。

 

普通、殴るというのは相手を倒すことであり、ダメージを与えて壊すことと同義だ。スタンドの能力も第3部では、「どれだけ戦闘に有利な力を持っているか」が、強さの象徴とされてきた。

 

それに対して第4部では、アナクロな「リーゼント」の不良スタイルの青年が持つ「スタンド」の能力が、「殴ったら直る(治る)」なのだ。ただし仗助の機嫌が悪いと、元どおりになる保証はなく、アーティスティックに変貌することもある。

 

この「直す(治す)」力を武器に、凶悪な敵にどう戦いを挑むかが、仗助の戦いのひとつの見どころだ。その仗助の個性と魅力をいかんなく発揮したのが、承太郎との出会いを描いた冒頭の1~2話だが、改めてアニメで見ても秀逸なエピソードだった。

 

最初の敵・アンジェロとの戦いで、母親の体内に潜り込んだ敵スタンドを、仗助は意外な力の使い方をしてつかみだす。「母の体にスタンドの腕をぶちこみ、引き抜きながら瞬時に治す」「壊したガラスビンを元のかたちに戻し、その中に敵を封じ込める」という方法で。奇抜な発想と、行動に躊躇しない仗助の思い切りのよさが小気味いい。

 

だがその後、仗助は警官である祖父を亡くす。駆けつけた承太郎の目の前で、仗助は倒れた祖父の傷を、自分のスタンド能力で「治す」。それでも、一度失われた命は戻らない。

 

家族を亡くした仗助は、怒りと悲しみを抑えて雪辱戦に臨む。その中で彼は承太郎に打ち明けるのだ。「自分の傷は自分では治せない。自分が致命傷を負ったら死ぬしかない」と。

 

「クレイジー・ダイヤモンド」の特性と応用、そして力の限界を一息に見せつつ、持ち前の正義感と家族愛、喜怒哀楽のはっきりしたところを、このエピソードで余すところなく見せた。この細やかで鮮やかなストーリーテリングの妙味が第4部の魅力でもあることを、改めて思い出した。

 

ちなみに、仗助の不良らしいダボダボ学生服や、マッチョなスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの頭部のデザインに、かわいい「ハート型」があるのも、魅力的なギャップのひとつだ。


愛すべき広瀬康一と虹村億泰、油断のならない岸辺露伴


いつも仗助と連れ立っている友達、広瀬康一と虹村億泰がまた、いろんなギャップを持っていて、魅力的だ。

 

広瀬康一は、主人公の隣にいる「日常代表のクラスメイト」タイプ。小柄で、バトルとは無縁に見える高校生だ。実際、原作の初登場時には、「1話限りのモブか?」と思わせるミスリードがされている。

 

仗助と虹村兄弟が戦ったエピソードでも、最初はあっさりと傷ついて死にかけ、仗助の怒りをかきたてる役回りだった。

 

ところが、虹村形兆が射た矢によって、康一のスタンド能力が発現。パワーもスピードもないスタンドだが、それが成長して次第に進化していく。

 

8~9話で康一は、山岸由花子という女生徒にストーカーされ、恐怖を味わうことになるが、由花子が語る「康一に将来性を感じた」という言葉が、康一の意外な魅力をよく表している。普通の男の子に見えて、心は強い。小柄だが、器は大きい。一見ひよわそうな普通の男の子が、必死に勇気をふるってどんどん強くなっていく姿は、由花子ならずとも惚れそうになるほどカッコいい!

 

虹村億泰もいいキャラクターだ。「弓と矢」を持つ敵、虹村形兆の弟として登場した。ガタイがでかくてコワモテで、いかにもケンカが強そうに見えるのに、「頭が悪い」のが愛すべきところだ。気質が単純で裏表がなく、愛嬌がある。

 

10話の「イタリア料理を食べに行こう」は、敵との派手なバトルの話ではなく、仗助と億泰がイタリアレストランで食事をするエピソードだが、この回の億泰のリアクション芸は実に見ものだ。

 

スタンドは、空間を削り取る能力を持つ「ザ・ハンド」。恐るべき能力を持っているのに、駆け引きを伴う頭脳戦やとっさの判断に弱く、なかなか活躍できない。だからこそ、その弱さを乗り越えて勝利したときに、爽快感がある。兄の仇である音石明に一矢を報いたエピソードは、心が熱くなった。

 

13話から登場する岸辺露伴は対照的に、ひねくれていて油断のならない人物だ。少年誌に連載を持っている人気漫画家で、どんなことも漫画のネタにするという職業病の持ち主。好奇心が旺盛で異常で、ナチュラルに人が悪い。「だが断る」など数々の名言を持つ、強烈なキャラクターでもある。

 

仗助や承太郎と仲間たちが、邪悪なものを憎み正しい心を持つ主人公サイドなのに対し、露伴は「実はいい人」というスタンスにはならない。けれど、そのひねくれ者の視点が生きる展開がある。単純な勧善懲悪モノにならないおもしろさを見せてくれるだろう。


スタンド使いは引かれ合う! 今後の見どころ


普通に見えた隣人の奇妙な言動ひとつで、普通の日常が非日常に転じていくシーンが、この作品にはしばしばある。スタンドの存在や力は非現実的だけれども、「悪意を持った人間が同じ町内にいて、自分も家族もいつか出会うかもしれない」ことの恐ろしさは、とてもリアルだ。

 

1つひとつの「奇妙な物語」は、原作の魅力はそのままに、アニメでの見せ方もしっかりと作り込まれていて飽きさせない。「スタンド使いは引かれ合う」という不思議な法則によって、仗助たちは、学校生活や放課後の町で、次々にスタンド使いたちに出会っていく。いつもの町が、気がつけばスタンド使いだらけになっている。

 

そしてその中に、とりわけ凶悪な男がひとりいる。アニメでは、ちらりちらりと、女性の手を切断して持ち運んでいるイメージが挿入され、存在を印象づけている。

 

自分の町に、顔の見えない殺人鬼がもし、潜んでいるとしたら? 今も殺人が続いているとしたら? ストーリーは少しずつ緊迫感を帯びていく。

 

新たなスタンド使いを生み出す「弓と矢」の事件については、中ボス・音石明との戦いでひとつの決着がついたかに見えるが、新たなスタンド使いとの出会いはまだまだ続く。少年コミック誌の週刊連載を楽しむように、極上の「ぼくらの町の奇妙な冒険」を、毎週楽しんでいきたい。

 


(文・やまゆー)
(C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会

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