【犬も歩けばアニメに当たる。第9回】いろんな思いがかきたてられる次世代編!「BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-」

2015年08月22日 11:000

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似ているようで似ていない!? ナルトとボルト父子


あの小さな、ひとりぼっちだったナルトが、ずいぶん遠くまで来たなあ……と思う。その思いは、昨年末に見た「THE LAST -NARUTO THE MOVIE-」の時より強いかもしれない。

「BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-」は、「NARUTO-ナルト-」の劇場版最新作だ。成長して夢をかなえたナルトは、ついに木ノ葉隠れの里のリーダー、七代目火影となり、父親となった。

この映画の主人公は、うずまきボルト。昨年公開した劇場版「THE LAST -NARUTO THE MOVIE-」で結婚した、ナルトと日向ヒナタの子だ。

ちょうど「NARUTO-ナルト-」スタート時のナルトと同じ年頃の、いたずら坊主のボルトに懐かしさを覚える。そうそう、「NARUTO-ナルト-」ってこんな作品だった。すっかり大作大河ドラマになったけれど、元はといえば、1人の少年のひりひりするような孤独や辛さ、悲しさから始まった物語だった……。

ところが、ナルトの時とは時代が違えば家族環境も違う。ボルトは第四次忍界大戦が終わった木ノ葉隠れの里で戦争を知らずに生まれ、家族の愛を受けて育った〝現代っ子〟だ。苦労知らずで、子どもらしいズルさもある。そして何より、忙しすぎて家族と向き合う時間のない父・ナルトに強く反発している。根は素直でいい子なのだけれど。

そしてナルトのほうも、すっかり〝オトナ〟になった。憧れた火影になって待っていたのは、詰み上がる書類にデスクワーク、家にも帰れない過労の日々。このあたりは現実感がありすぎて、ちょっと切ないものがある。

両親に先立たれたナルトは、父親としてどう子どもに接していいのかわからず、ためらっている。ボルトは、父親に十分に構ってもらえない寂しさから屈折している。戦いに満ちた「NARUTO-ナルト-」が時代劇だったとすれば、これは「家族」がテーマの現代ドラマだ。

考えてみれば原作コミックの連載スタートから15年が経った。連載開始時に10歳だった読者も25歳になっている頃合いだ。社会の厳しさを味わって「こんなはずじゃなかった」なんて思っている頃かもしれない。そう考えるとこの変化も、かつて子どもだったファンにも、意外になじむのかもしれない。


ナルトとサスケの共闘は、ファンにとって一番の御馳走!


いろんな楽しみ方があるけれど、これまで見てきたファンにとってやはりうれしいのは、ナルトとサスケの息の合った共闘ぶりだろう。

ふたりは同じ第七班で一緒に研鑽した友であり、ライバルだった。里を抜けた許されざる抜け忍と、処分を命じられた追っ手として対峙したこともあった。恨みと憎しみに凝り固まるサスケに、ナルトの思いはもう届かないとも思われた。だがナルトは、決してサスケを取り戻すことをあきらめなかった。その結果……。

長かった戦いの日々を越えて、ふたりの関係性はこういうかたちになったのかと思うと、しみじみしてしまう。

アクション描写も、全編にわたって見事だ。アニメで映える「NARUTO-ナルト-」の忍アクションの楽しさが、全部盛りになっている。

まず、目を引く螺旋丸や影分身などの忍術勝負。わかりやすく忍者っぽくて、子どもが見てもおもしろい。修行の過程もおもしろい描写ができる。

そして中忍試験では、意表をつく展開や1人ひとりの個性・戦術が生きてくる。かつてナルトたちが受けた中忍試験が懐かしく思い出される。

さらに、身体能力の限りを尽くし、ガチでぶつかりあう体術勝負。忍術に制限のある舞台に持ち込む流れは、さすが自然でそつがない。

クライマックスにくるのは、すべての力を出しつくした怪獣大戦争! ここで阿吽(あうん)の呼吸でナルトとサスケが協力しあうから、いやがうえにも盛り上がる。

オトナになったナルトやサスケの戦いぶりは、貫禄十分。かつての大戦での、はたけカカシや波風ミナトら、教官・親世代の強さを思わせ、「受け継がれるもの」を体現する。

盛り上がるバトルの一方で、すでに亡くなった思い出深い人物の姿がイメージでちらちらと差し込まれ、細やかなサービスにもぬかりはない。いなくなった彼らも、今の木ノ葉の里の平和と無関係ではないことが示され、ファンの心を満足させてくれる。


親戚のおじさんおばさん気分であれこれ気になる!


「NARUTO-ナルト-」では、主人公のナルトの行動や成長とともに、読者の視野も広がっていった。「BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-」ではボルトが主人公だが、群像劇として登場人物それぞれの視点からも見ることができる。よく知っている親戚の一家を見るような気持ちで、物語を見守ることもできるだろう。

本当に、ボルトやサラダたちジュニア世代を見ていると、ついつい親戚のおじさんおばさん気分になる。彼らの今後もあれこれ考えたくなるのが、こうした続編のオイシサだろう。

ボルトは、努力しないで最強になりたがるあたり、「ゆとりか!」といいたくもなるが、根っこにあるのは「父親にかまってほしい」という子どもらしい寂しさなので、憎めない。

予告を見たときから、「ナルトの息子でサスケの弟子って、ボルトおいしい立場だな」と思っていた。親父のライバルが師匠とは、「DRAGONBALL」のピッコロと孫悟飯の師弟関係を思い出す、燃える設定だ。

ナルトの根幹だった寂しさとハングリーさ、ド根性を持たない子が、何を支えにどう頑張れるのかが、この映画のテーマのひとつだろう。

サスケとさくらの娘でクールなメガネっ娘、うちはサラダもなかなかかわいい。いかにもなヒロインでないところは、母親のさくら譲り。ボルトとはいいチームメイトだ。彼女が親子関係で悩んだり、写輪眼に目覚めたりした、映画の前日譚になる事件については、コミック「NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~」で楽しめる。

ボルト、サラダと3人1組のチームを組むミツキは、言葉付きがていねいで穏やか、いつも冷静で頼もしい少年だ。コミック外伝によれば「少し前に他里から来た」ということで、ボルトとサラダも彼のことをまだよく知らない部分がある。

ミツキが誰の子どもかという謎が、映画のお楽しみのひとつだ。今回のストーリーの本筋ではないだけに引っぱること! 結局、見終わったあとに一番頭に残っていたのはその答えで、「え、ということは……? だとすると……? それはむしろ続編で見たい……!」とあれこれ考えていた。


まだまだ終わらない! ボルト世代の続編にも期待


今回はナルトとボルトの物語だったが、こうなってみると、ボルト、サラダ、ミツキのスリーマンセルの活躍も見たい。また、忍五大国に新たに不穏の種が存在することも示されている。

そうなれば、「BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-」の続編もつい期待してしまう。そんな気分にさせられるのも狙いのうちだと思うが、乗せられる。続きがあったら映画館に見にいってやんよ!

いや、そもそも、テレビシリーズの「NARUTO-ナルト- 疾風伝」は、まだ終わっていないのだ。

「NARUTO-ナルト- 疾風伝」は、現在原作の流れでいうと最後の戦い、第四次忍界大戦中だ。オリジナル編や、それぞれのキャラクターを掘り下げたエピソードを差し挟みつつ、じりじりと時間をかけて展開している。

これも考えてみればすごい。原作コミックは昨年秋に完結。映画では青年となった主人公の恋や、ジュニアたちのストーリーが、原作者監修の下で本格的に描かれているのに、テレビアニメではあの、コミック最終巻にあたるクライマックスがまだなのだ。

まだこれから見ることができるのだ。

「BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-」を見て、小さいナルトが懐かしくなったら、アニメやコミックでさかのぼって見るのもいい。そこから長かった物語を改めて追ってきたら、アニメのクライマックスを今からリアルタイムで味わえるかもしれない。

往年の人気コミックやアニメの続編や次世代ものが次々登場しているけれど、本編の完結後、間をおかずにこうやって次世代ものが展開されると、こんな楽しみ方もできるんだなと思う。なんとも贅沢なことだ。

15年の連載を終えて、まだ新たな展開が続く「NARUTO-ナルト-」が、前人未到の領域でどんな歩みを見せるのか。楽しみだ。


(文・やまゆー)

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関連作品

BORUTO -NARUTO THE MOVIE-

BORUTO -NARUTO THE MOVIE-

上映開始日: 2015年8月7日   制作会社: studioぴえろ
キャスト: 三瓶由布子、菊池こころ、竹内順子、杉山紀彰、木島隆一、阿部敦、小野賢章、早見沙織、浪川大輔、安元洋貴、竹内良太、石田彰、宮田幸季、武田華
(C) 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C) 劇場版BORUTO製作委員会 2015

劇場版NARUTO -ナルト-『THE LAST《ザ・ラスト》』

劇場版NARUTO -ナルト-『THE LAST《ザ・ラスト》』

上映開始日: 2014年12月6日   制作会社: studioぴえろ
キャスト: 竹内順子
(C) 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C) 劇場版NARUTO製作委員会 2014

NARUTO -ナルト- 疾風伝

NARUTO -ナルト- 疾風伝

放送日: 2007年2月15日~2017年3月23日   制作会社: studioぴえろ
キャスト: 竹内順子、中村千絵、井上和彦、落合るみ、鳥海浩輔、川田紳司、水樹奈々、小杉十郎太、森久保祥太郎、柚木涼香、伊藤健太郎、江原正士、増川洋一、遠近孝一、勝生真沙子、根本圭子、飛田展男、本田貴子、佐々木望、関俊彦、大谷育江、下屋則子、重松朋、大塚芳忠、石田彰、朴璐美、加瀬康之、中田譲治、渡辺英雄、川本克彦、青山穣、くじら、神奈延年、杉山紀彰、石川英郎、内田直哉
(C) 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ

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