ホビー業界インサイド第20回:ジオラマ作家・WildRiver荒川直人に聞く、「シチュエーション」と「スケジューリング」の重要性

2017年02月27日 19:300

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どの角度から見てもいい「円形劇場」の意味


── 荒川さんのジオラマをよく見ると、小さなはずのものが、わざと大きくディフォルメしてあったりしますね。「紅の豚」の工房のジオラマでも、床に散らばっている木片が大きめじゃないですか?

荒川 この木片は、スケールどおりに小さくしてしまうと、奥行き感がなくなってしまうので、遠近的に強調しています。それと、このジオラマの中に実は4匹、豚が隠れているんですよ。

── えっ、そうなんですか?

荒川 ね、そう言うと探してみたくなるでしょ? そういう遊びも好きで、ジオラマの中に隠し要素を入れたりもします。

── 荒川さんは、ご自分の作品を「円形劇場」と名づけていますよね? それはなぜですか?

荒川 月刊モデルアートで、イラク戦争のジオラマを作ったことがありました。ハンヴィー(アメリカの軍用車両)がひっくり返っていて、敵がどこから撃ってくるかわからない……という、360度すべてが物語の舞台になっている作品です。その時から、自分の作品のすべてに「円形劇場」というサブタイトルを、つけるようになりました。だいたい、ジオラマには作品のタイトルプレートが貼ってあって、なんとなく正面が決まってますよね。円形劇場の場合、「どの方向から見ても何かしら物語がある」のを目指しています。 もし可能なら、ジオラマの真ん中に頭を入れて、ぐるりと周囲を見回してほしい。その鑑賞法が、理想ですね。
今まで、2回ほど個展をやったのですが、回転台座のうえに作品を置いて、「お客さんが自分の手で回していいし、写真撮影もOK」にしました。お子さんが触って、ちょっと折れたりしても、興味をもって没入してくれたんなら、それでいいんですよ。「気にしないで、どんどん見て見て」って。お客さんが腰を低くして、作品に見入っている様子を後ろから眺めるのが、好きなんです。


── これからジオラマを作ってみたい、という若い人にアドバイスをいただけますか?

荒川 最初から「戦車が好き」「ガンダムが好き」と、そのジャンルだけにこだわるのでなく、色々なジャンルに挑戦してみてほしいです。
ジオラマのシチュエーションを考えるときは、いろいろな要素が絡んできます。飛行場では飛行機をどうやって運用させているのか、海岸での上陸戦はどうやって展開しているのか、自分の好きなジャンルと関係なく、なるべくたくさんの色々なジャンルの資料を読んで、「自分の引き出しを多くする」ことが大切。その知識があるのと無いのとでは、最終的に自分の好きなジャンルのジオラマを作った時に、ぜんぜん違ったものになると思います。

── 荒川さんの本業はエンジニアだから、理系じゃないですか。そのことと模型と、何か関係はありますか?

荒川 いえ、特にないです(笑)。ただ、私は土日をメインに作っているせいもあり、スケジューリングは徹底しています。ノートの上に「コクピットのデザイン」「組み立て」「サフ吹き」「塗装」など、必要なシークエンスを細かく書いておきます。ジオラマって、今どこを作っているのか、わからなくなっちゃう場合があるんです。だから作業を終えたら、ノートに書いたシークエンスを消していき、ノート全体を見たときに、消し線の割合で、今どれだけ進んでいるのか確認して、モチベーションを維持するわけです。
あと、カミさんと息子に手伝ってもらうこともあります。家内制手工業(笑)。私は凝り性なので、やるとしたら徹底的にやる。ワインやガーデニングなど、けっこう多趣味なんですが、熱しやすく冷めやすいかも。でも、ジオラマモデリングだけは違いますね。


(取材・文/廣田恵介)

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