ホビー業界インサイド第20回:ジオラマ作家・WildRiver荒川直人に聞く、「シチュエーション」と「スケジューリング」の重要性

2017年02月27日 19:300

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模型に別れをつげた「闇の世界」から「復帰の世界」へ


── 話は変わりますが、本職はソフトウェアエンジニアなんですよね?

荒川 はい。本職のほうでは、今はプログラムを組んでいません。模型のほうでは、電飾制御用のマイコンプログラムは作っていますが。

── 画像編集ソフトであるPhotoshopのプラグインを個人的に開発していた……と、聞きましたが?

荒川 それは、本職とは関係ないです。ちょっとAdobeと付き合いがあって、プラグインの開発キットをもらって、自由に作って配布してもいいという話でした。当時はホームページが流行っていて、ホームページ用のボタンを自由にカスタマイズできるDekoBokoというプラグインと、7つほどのシリーズを作りました。メールウェアで配布したところ、日本・海外で広く使われるようになり、「製品化しないか」と声がかかって、アメリカで“Best Photoshop Plugins of the year”という賞もいただきました。……模型とは、まったく関係ない話ですね(笑)。

── その頃、模型の方はどうしていたんですか?

荒川 まったく、模型は作っていませんでした。私の模型史は「闇の世界」篇と「復帰の世界」篇とに別れていて、その狭間に、さっきの「Photoshopの世界」の話が入るんですが。
大学生だった20歳のときに「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」が公開され、「帝国の逆襲」に出てくる、AT-ST……当時はチキン・ウォーカーと呼んでいましたが、「この二足歩行メカは、もう絶対に作りたい!」と思って。洋書店で手に入れた「帝国の逆襲」のブルーブックというデザインスケッチ集の中に、AT-STのコンセプトデザインが何種類も載っていたんです。当時は大学の機械工学科に通っていたので、1/72スケールで図面を引いて、フルスクラッチで模型を作りました。完成したAT-STを、あるコンテストに出品したら、最優秀賞をもらったんです。お店にも展示してもらっていましたが、ちょっと色々あって模型はもういいかなと。その後、作るのはすっかりやめて、模型的には闇の時代でしたね。

社会人になって、仕事でいろいろプログラムを書くようになりました。Photoshopと出会い、ちょうどプログラムに凝りはじめた時期でしたので、先ほどのPhotoshopのプラグインを開発したんです。デザイン業界につながりが出来たし、Adobeとの付き合いも出来たし……そのあたりが落ち着いてきた頃、1999年に「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」が公開されました。「エピソード1」のコンセプトブックを買ったら、ポッドレースのエンジンを運ぶキャリアの絵があったんです。とても気に入ったので、スカルピー(粘土)やプラモデルのジャンクパーツを使い、そのコンセプトデザイン画を模型で再現しました。「せっかく作ったんだから、コンテストに出そう」と決意して、模型の世界に帰ってきました。
それが15年前ですから、今年は、ちょうど模型復帰15周年なんです。と言っても、当時は42歳のおじさんでしたから、いきなり模型雑誌に載せてくれるはずがありません。名前を売るしかないので、陸海空・キャラクター物とわず、コンテストに出しまくりました。少しずつ業界に名前が知られ、知り合いも増え、「月刊モデルアート」で初めて雑誌ライターとして、作品が掲載されるようになりました。


── ということは「スター・ウォーズ」で模型をやめて、「スター・ウォーズ」で模型に帰ってきたわけですね?

荒川 そう、だから「スター・ウォーズ」には、こだわりが深いんです。「スター・ウォーズ」で闇の世界に落ちて、Photoshopの世界へ行って……。

── だけど、Photoshopは「スター・ウォーズ」のVFXスーパーバイザーのジョン・ノール氏が開発に関わっていますよね(兄のトーマス・ノール氏と共同開発)。

荒川 実は、プラグインの関係をやっていた昔、夏休みにアメリカの展示会に行く機会があり、ジョン・ノール氏と会ったんです(笑)。今では、ジョン・ノール氏は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の原案から製作総指揮から、思いきり関わってるじゃないですか。その「ローグ・ワン」のジオラマを、仕事で今作っている。だから、自分の人生は、けっこう面白い気がしています。

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