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妻の漫画を夫がアニメ化夫婦間自主制作という試み
――「名探偵夢水清志郎事件ノート」(講談社青い鳥文庫同名小説のコミカライズ。以下「夢水」)のPV、これは小説ではなく漫画版のPVですね。これは漫画家である奥さん(えぬえけい)のほうから「作りましょう」という話が来たのですか?
吉田 まず、「夢水」の漫画が、2009年に講談社漫画賞(第33回講談社漫画賞児童部門)を受賞したんです。ある朝、ご飯を食べていたら、「漫画賞をもらえるらしいんだ」という話が妻から出まして、それはめでたいことなので、僕から「じゃあ、アニメでも作る?」と簡単に言ったのがきっかけです(笑)。PVが1本あれば、賞を取ったことの告知にもなるし、さまざまな広がりも作れますよね。
――とはいえ、まず講談社に断らないといけないですね。
吉田 妻は、ほぼ講談社とのみ仕事をしている漫画家なので、すでに信頼関係がありました。それと、講談社は著作者を立て、守る出版社なんです。なので「サポートするので、どうぞ進めてください」との返答をいただけました。
――お金はどうしたんですか?
吉田 夫婦で出しました。完全な自主制作です。絵コンテも僕が切るし、原画も僕が描く。動画と撮影は、これまで付き合いのあった会社にきちんとした金額でお願いするということでスタートしました。
――だけど、このPVが完成しても、すぐ何かにつながるわけではないですよね。
吉田 そうですね、未経験のことですから、まず完パケ(映像を放送・上映できる状態にすること)させることを目標にしました。完パケさせて以降は、知り合いに見せに行ったり、現在進行形です。どんな展開が出来るかは、出会った方との話次第だと思います。
――記念でPVをつくって終わりではなく……
吉田 そうですね。きちんと仕事をしている一般社会の大人の人たちに自分たちの作った物を提示することで、何か得るものがあるかもしれない。それはアニメ業界に予算を持ってきてくれる人たちが普段やっていることかもしれませんが、それを絵を描いている人間みずからやってみようということです。
――「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」のように、クラウドファンディングでお金を集める方法もあると思いますが?
吉田 他の人の方法を参考にせず行動することが、逆に選択肢を広げる結果に繋がるのではないかと思います。「それって○○でしょ?」と他の何かと同一視されると、業界内での選択肢が狭まってしまう気がして。業界に一石を投じる……というより、石をボチャンと投げ入れたまま、沈んでしまうかもしれませんけど(笑)、「だけど、投げ入れてはみたんだよ」という事実は、残るんじゃないでしょうか。
――奥さんのえぬえけいさんは、アニメにも関与しているんですか?
吉田 全カットを修正しています。ただ、アニメ独特の絵と漫画の絵とは勝手が違うところもあるので自分のキャラクターであっても描きながら四苦八苦があったようです。アニメ業界の中では、最も原作の絵に近い形でのアニメ化でしょうね。