今月は斉藤朱夏、諏訪ななか、鈴木愛奈ら、Aqoursメンバーのソロワークに注目! 【月刊声優アーティスト速報 2020年11月号】

2020年11月30日 19:100

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当月にリリースされた、声優アーティストの注目作品をレビューする本連載。2020年11月は、声優ユニット「Aqours(アクア)」のメンバー3名が、ソロアーティスト作品を立て続けにリリースしているため、それぞれのサウンドや歌を通して届けられる想いなどについて想いを巡らせていきたい。

■SUNFLOWER/斉藤朱夏
斉藤朱夏さんが11月11日に発売した2ndミニアルバム「SUNFLOWER」。リード曲「ゼンシンゼンレイ」は、斉藤さんが外出自粛期間中に書き溜めたメモを基にした、ファンとのライブ空間を意識したエンジン全開なシンセロックナンバーに。続く「月で星で太陽だ!」でも、自身とファンの間にある、相乗効果的にポジティブを生み出す関係性を描写。

 


同楽曲の作詞は、Aqoursとしてもなじみ深い畑亜貴さんが担当しており、斉藤さんのトラックリストにこれまでありそうでなかった……というよりも、“この楽曲がなくて今までどうやって生きてきたんだろう”と不思議になるほどにしっくりくる、彼女のアーティスト活動を象徴するような1曲だ。

 

また、アルバムでも特に遊び心にあふれていたのが、DJみそしるとMCごはんさんのプロデュースによる「親愛なるMyメン」。同楽曲では、斉藤さんが初のラップにチャレンジしており、ゆったりと肩を揺らしたくなるフロウや、フックに向けて楽曲をさらにキャッチーにすべく重ねられる高音域でのコーラスをはじめ、曲中で鳴るご機嫌なカウベルやスクラッチなど、絶妙なゆるさの歌モノラップとして、とにかく心地よい要素が詰まっている。

 

ところで、“Myメン”というタイトルだが、その意味はとりわけ仲のよい友だちの“マイメン”ではなく……なんと彼女の大好きな“麺”。終盤に登場する〈ゆれろ「HEY」〉というリリックも、ヒップホップらしいフロアの“アゲ方”と同時に、麺が鍋で茹でられる状態を歌うというダブルミーニングになっているユニークぶりだ(あわせて、中盤ではボロネーゼを〈いただきます!〉と楽しむ場面もあるのだが、同フレーズまでは再生から約2分半。訓練された朱夏人らはすでに、“理想のアルデンテ”でカップ麺などをすすったのではなかろうか)。

 

2019年8月発売のデビュー作「くつひも」は、斉藤さんが当時まで見せてこなかった自身の弱い部分と向き合う1枚だったが、今作はいわば誰もがイメージする天真爛漫さ、もっといえば“斉藤朱夏役の斉藤朱夏”を存分に感じられるものだった。同年11月発売の1stシングル「36℃/パパパ」を含めて、ここまでの3作品が揃いようやく、“斉藤朱夏"というパーソナリティーの詰まった音楽を、完成形に近い形で味わえるようになったのではないだろうか。さらに、自身を太陽、ファンを向日葵(ひまわり)になぞらえた楽曲「ひまわり」に代表されるように、今作の収録曲は彼らに向けて、その毎日を高らかに応援する内容揃い。このまっすぐな姿勢が、彼女がアーティストとして届けたい想いを何よりも象徴していると思う。

 
■Color me PURPLE/諏訪ななか

諏訪ななかさんが11月4日に発売したミニアルバム「Color me PURPLE」。同作は、彼女の2枚目のリリースに数えられ、そのコンセプトには、自身の好きな”紫色”を据えたという。ただ、同じ紫色とはいっても、「Morning glow」の“朝焼け”や「Lilac」での花言葉に“初恋”を持つ“ライラック”など、その濃淡や明度/彩度は楽曲ごとにさまざま。同様に、諏訪さんの歌声もグラデーションのように表現豊かなところが、このアルバムを読み解くポイントである。

 

 

たとえば、つややかでカオティックな「Poison Girl」と、跳ねるようなピアノロック楽曲「揺れていたい」を聴き比べてみてほしい。どちらも恋愛をテーマにした楽曲だが、前者は歌詞にあるややパラノイア的な側面を引き立てるよう、ほかの楽曲よりも駆け足でとげを感じる歌声に。対して、1stアルバム収録曲「溶けるみたい」の後日譚として制作された後者の楽曲では、“恋の進展は自分の勇気次第”と考えながら、そんな状況に少し浮き足立つ心模様を、弾むような声色で響かせているのに気が付くことができる。

 

つまり、前述した斉藤さんが真正面から聴き手に向き合う歌唱スタイルだとすれば、諏訪さんの場合は楽曲の主人公になりきり、さまざまな歌声のアレンジを楽しませる、いわば完成されたショーを届けるような作品性になっているのだ(もちろんその双方に優劣は存在しないが)。なお、今作で制作ディレクターを務めたのは、これまでに内田彩さんらの作品にも携わっている井上哲也氏。彼が得意とするガールズロックを主体とした統一感を織り成しながら、さまざまなテイストの楽曲を1枚に収める手法は、「Color me PURPLE」でも確かに感じられたところだ。その理解を深めるうえで、彼が直々に記しているディスクレビューはとても参考になるため、ぜひご覧いただきたい(参考:「Color me PURPLE」全曲レビュー)。

 
■もっと高く/鈴木愛奈

鈴木愛奈さんが11月18日に発売した2ndシングル「もっと高く」。表題曲は、現在放送中のTVアニメ「いわかける! - Sport Climbing Girls -」オープニングテーマに起用されている爽やかなポップナンバー。スポーツクライミングを通して、物理的にも精神的にも“高み”を目指す少女たちの想いを代弁するような1曲に仕上がっている。

 

 

そんな同楽曲で、鈴木さんは堂々としながらも、繊細な機微を表現しきる持ち前の歌唱力で、ミドルテンポのトラックと高い親和性を発揮させている。ただ、特技の民謡でつちかい、今や彼女のオリジナルな持ち味といえる歌の“こぶし”は、この楽曲では特に見つけられない。というのも、今回のアニメのタイアップ曲ということもあり、楽曲に込められたメッセージをスムーズに伝えられるよう、こぶしを抑えた歌い方を意識したという。

 

これは鈴木さんだけに当てはまることではないが、アニメタイアップ楽曲を通して表現の幅を広げるというのは、声優アーティストというよりも、どちらかといえばアニソンシンガー的なアプローチといえる。そのうえで、彼女は学生時代に「アニソングランプリ」に出場するなど、かねてより歌うことに対して強い想いを抱いてきただけに、そのスタイルは“アニソンシンガーの顔も持ちあわせる声優アーティスト”と評したほうが正解かもしれない。

 

そのほか、10月には高槻かなこさんがシングル「Anti world」で念願のソロアーティストデビューを果たしただけでなく、12月23日には降幡愛さんが2ndミニアルバム「メイクアップ」を発売予定など、何かと話題にこと欠かないAqoursメンバーによるソロアーティスト活動。特に降幡さんは、1980年代サウンドを本気でリバイバルした衝撃作「Moonrise」から3か月という短期スパンでのリリースとなるだけに、その活動の充実ぶりがひしひしと伝わってくる。

 

 

 

高槻さんと降幡さんを含めて、上記5名のほとんどが2作目、3作目を発表している現状。そんなタイミングだからこそ、各人の今後の方向性を予想するだけでなく、楽曲の歌詞やサウンドを通して、作品数をこなしたことによって広がった表現の自由度をリアルタイムに楽しむこともできる。来年以降も引き続き、期待感に満ちた彼女たちの活動を追いかけていきたい。

(文/一条皓太)

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