彼女たちの得意とするジャンルは、佐高陵平さん(別名義はy0c1e)が作詞、あのDJ Genkiこと彦田元気さんが作編曲を手がけた表題曲のような、アッパーなエレクトロダンスチューン。キャスト本人らもたびたび口にしているが、Perfumeの世界観に近しいものを感じるだろう。また、カップリング曲「A lot of life」は、佐高さんが作詞、fu_mouさんが作編曲を務めたフューチャーベース楽曲。その歌詞では、人が孤独を抱えながらも寄り添い合う様子を、宇宙の星々になぞらえた温かさを秘めている。そういった楽曲のメッセージを、押し寄せるシンセサイザーの音の波に負けず、熱っぽく歌い上げるメンバーの歌声がまた心に響いてくる。
ちなみに「D4DJ」に登場する各ユニットには専属の音楽プロデューサーが就くのだが、Photon Maidenは、自身もDJとして活動するアニメ監督・水島精二氏を迎えている。そのほか、前述した佐高さんやfu_mouさんらは、「tokyo 7th シスターズ」でもアニソン×ダンスミュージックの軸で数々の名曲を作り上げてきた人物。佐高さんが作詞と編曲、本稿では詳説できなかったが、佐藤陽介さん(別名義は4sk)が作曲を手がけたPhoton Maidenの代表曲「Here’s the light」もまた素晴らしいので、ぜひ聴き漏らさないでほしい。
続いて、本連載の常連ともなった「電音部」。リリース日こそ9月末ながらも、同作のアザブエリアを拠点とする港白金女学院の配信楽曲より、白金煌(CV:小宮有紗さん)「MUSIC IS MAGIC」を紹介したい。
同楽曲を手がけたのは、兵庫・神戸出身のトラックメイカー・tofubeatsさん。「LONELY NIGHTS」などの楽曲で広く知られる人物だ。そんな彼が届ける「MUSIC IS MAGIC」は、全体的にミニマルかつ軽やかなアレンジに。アーバンなサックスや華やかなブラスをのせたトラックで、彼の代表曲である「水星」や「朝が来るまで終わる事のないダンスを」を想起させられる(tofubeatsさんのファンにはおなじみだろう、あの“笛”の音が聞こえてきた)。また、別作品などで板についた小宮さんのお嬢様口調だが、今回は少しあどけなくほわっとした雰囲気で、音楽をきらびやかで不思議なギフトととらえるtofubeatsさんらしい歌詞を歌いあげてくれる。
全体的にラフな仕上がりとなったが、おそらく「電音部」がここまで発表してきた作品の中では異色に映るかもしれない。ただ、同じアザブエリアより、ケンモチヒデフミさんが手がけ、秋奈さん(黒鉄たま役)がラップを披露する「いただきバベル」や、澁谷梓希さん(灰島銀華役)が歌唱を担当し、以前にも本連載で取り上げたパソコン音楽クラブらしい80年代志向のサウンドを楽しめる「Haiiro no kokoro」など、そもそも麻布=富裕層が集う街というイメージもあってか、他エリアよりもクラブ感を押し出さない方向性となっているのだろう。作品全体を俯瞰したうえで、非常にバランスの取れた試みだ。
そんな同作に登場するのが、「涼宮ハルヒの憂鬱」の楽曲などを手がけた斎藤滋さんがプロデューサーを務め、Machicoさんら4名のメンバーで構成されるダンス&ボーカルユニット「NO PRINCESS」。彼女たちが10月7日に発売した2ndシングル「MUST BE GOING!」表題曲は、90年代のJ-POPらしいセンチメンタルなシンセのメロディや、“力強い女性像”を感じさせる凛としたボーカルが特徴的な1曲だ。
また歌詞については、おそらく過去の恋人なのだろうが、街ですれ違ったその人を一瞥しながらも、〈かかとを鳴らして歩き出す〉というまさに90年代らしい描写が、懐かしくも新鮮に感じられてしまう(過去を忘れて未来に進むという意味で、曲名を“MUST BE GOING!”と名付けたのだろう)。おそらく、ダンス&ボーカルユニットのSPEEDなどを好きな人であれば、彼女たちの楽曲は特に刺さりまくってしまうのではないだろうか。