富田美憂、伊藤美来、小倉唯、鬼頭明里──今月は楽曲を生み出すクリエイターにもフォーカス! 旬な女性声優アーティストの新譜を徹底レビュー【月刊声優アーティスト速報 2020年6月号】

2020年06月18日 10:000
富田美憂、伊藤美来、小倉唯、鬼頭明里──今月は楽曲を生み出すクリエイターにもフォーカス! 旬な女性声優アーティストの新譜を徹底レビュー【月刊声優アーティスト速報 2020年6月号】

声優アーティストによる、当月リリースの注目作品をレビューする本連載。2020年6月号では、声優シンガーとして活躍する4名の作品をピックアップした。今回は新たな試みとして、楽曲の作詞や作編曲を手がけるクリエイターごとに、各作品をバトン形式で結び付けながら紹介していきたい。

富田美憂さんは、2020年6月3日に2ndシングル「翼と告白」を発売。2019年11月にシングル「Present Moment」で声優アーティストデビューをはたした彼女だが、今回は早くもノンタイアップで“自分らしさ”を追求する意欲作に。表題曲は、“陰と陽”の二面性をテーマに、弱さがあってこその強さの意味を歌っている。同曲では、只野菜摘さんが作詞を担当。女性的でどこか母性を感じるような、人が秘める強い想いに寄り添う作詞を得意としており、大人びた印象のある富田さんにもぴったりの内容だ。

 

 

また、作編曲は前作の表題曲に引き続き、睦月周平さんが担当。ストリングスが壮麗な印象を与えるロックチューンに仕上げられているが、底抜けに明るくならない部分は、歌詞の内容に合わせてのことだろう。力強い歌声で余韻を残しながら、しなやかでよく伸びる富田さんの歌声がうまく生かされるトラックだった。

 

伊藤美来さんは、2020年6月17日に7thシングル「孤高の光 Lonely dark」を発売。表題曲は、TVアニメ「プランダラ」第2クールのオープニングテーマに起用されており、前クールより継続して主題歌を歌唱している。

 

 

なかでも、本稿で取り上げたいのは、カップリング曲「Sweet Bitter Sweet Days」。ここで前述した富田さんの項目との架け橋になるクリエイターこそ、睦月さんである。同楽曲は、大森祥子さんが作詞、川田瑠夏さんが作編曲を手がけているため、残念ながら睦月さんは不参加だ。しかしながら、睦月さんは抜け感のすぐれたポップスの作り手として、伊藤さんにはこれまでに「七色Cookie」「all yours」といったポップソングを提供してきた、彼女のキャリアにおいて欠かせない人物である。

 

今回の「Sweet Bitter Sweet Days」もまた、「七色Cookie」に通ずるようなナチュラルでリズミカルな雰囲気をまとっている。伊藤さんの音楽活動でこの路線を開拓した人物のひとりだからこそ、ここで睦月さんについて紹介することに対して違和感はないだろう。また、仕事や友人の結婚など、年齢を重ねた今だからこそ説得力を持って歌える、等身大の彼女らしい歌詞にも自然と勇気づけられるため、ぜひ意識しながら楽しんでほしい。

 

小倉唯さんは、2020年6月10日に12thシングル「ハピネス*センセーション」を発売。表題曲は、小倉さん自身も黒羽アリス役で出演するTVアニメ「シャドウバース」エンディングテーマとなっており、Kamyさんが作詞、鶴﨑輝一さんが作編曲を担当。どこまでも前向きな歌詞、小倉さんのかわいらしく朗らかな歌声、ファンファーレが豊かに響き渡る爽やかなトラックと、“ハピネスの3点セット”が揃った楽曲だ。

 

 

また、彼女演じるアリスは、カップリング曲「Look@Me♡」にも関係してくる。


同楽曲の作詞は、先ほど紹介した大森さんによるもので、アイドルとして活躍するアリスと小倉さん自身の境遇を重ねて、これまでにステージで感じたファンへの想いを歌っている。小倉さんが作詞を依頼した際には、大森さんの腕を信頼して大まかなオーダーをしたとのこと。完成後の歌詞を読むと、プロとして芯が強く、ストイックに努力を怠らない小倉さんらしい内容が綴られており、間違いない出来栄えだったそうだ。先程の伊藤さんのカップリング曲もそうだが、大森さんの人の想いを遠くからでも汲み取る能力の高さは、まさに“エスパー”のそれに近いのかもしれない。

 

鬼頭明里さんは、2020年6月10日に1stアルバム「STYLE」を発売。同作のテーマは文字通り、アーティストとしてさまざまな“スタイル”の表現を示すというもの。その全体像を語る前に、以下の2曲について振り返りたい。

 

 

まずは、リード曲「23時の春雷少女」について。アルバムを通して特にポップかつキャッチーな同楽曲だが、田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)が作詞作曲、やしきんさんと成田ハネダさん(パスピエ)が編曲を担当したと聞けば、その理由にもうなずけるだろう。変則的な楽曲を書かせたら右に出る者はいない、まさに“最終兵器”のようなクリエイター揃いだからだ。

 

実際に楽曲を聴くと、浮遊感あるコーラスをはじめ、疾走感あるサビに追い討ちをかけるよう、2ループ目でハイハットを鳴らすなど、まさに“田淵節”が詰まっている。そこからDメロでは、楽曲の主人公である少女の胸の高鳴りを表現するように、キーボードの軽やかな旋律がハイスピードで奏でられるなど、普段以上にトリッキーな仕上がりだ。

 

また、アルバム序盤の「INNOCENT」は、前項に登場した鶴﨑さんが作詞・作編曲をすべて担当したシリアスな楽曲。同楽曲でまず驚いたのは、そのギターの音圧とディストーションで、鬼頭さん自身の歌声がやや“くぐもる”ほどだったことだ(これはあくまで褒め言葉である)。彼女はこの楽曲を「バラード」と語っていたが、どこかインディー感ある質感で、ゆったりとしたトラックは、いわゆる“シューゲイザー”のジャンルにも分類されうる。また、歌詞では想い人に告白するまでが描かれているが、鬼頭さんの歌声は凛としつつもどこか物憂げで、たとえるならば曇天を見上げるような感情にさせられた。

 

おそらく、20代以上のリスナーであれば、今回のアルバムから中高生として毎日を過ごしていた当時の感情をいやおうなしに引き戻される場面もあったのではないだろうか。今作は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやステレオポニー、アニソンの枠組みであれば初期のsupercellなど、2010年近辺のギターロック的な要素をうまくまとめているだけに、収録曲のいずれかが過去とリンクし、異様な“刺さり方”をした人もいるかと思われる。

 

それと関連して、ライブを意識した楽曲があったことを踏まえつつも、今回のアルバムからは鬼頭さん自身のキャラクターはやや顔を潜めており、全体的にどこかシリアスなムードが漂い続けていた節もある。言い換えれば、楽曲至上主義的なイメージも抱けてしまうわけだ。そのうえで、全楽曲を異なる声色のアプローチで歌いこなしていた彼女には、声優アーティストとしての末恐ろしさを痛感させられるばかりである。

 

ほかにも、先程の田淵さん繋がりでいえば、6月17日にきゃにめ&配信限定シングル「あたりまえだから」を発売したDIALOGUE+があげられる。彼女たちの活動には、レーベルメイトである三森すずこさんも参加しており、ぜひ注目してほしいものだ。

 

 

本稿で記したように、声優アーティストたちの表現をそのまま楽しむのは言わずもがな、彼女たちの音楽活動における担当クリエイターを通して、自身の好きな歌詞のパターンやサウンド観を見つける作業もまた、ぜひ同時に楽しんでほしいものだ。その際には、声優アーティスト楽曲の面白さを、また違った角度から体験できることを約束しておきたい。

(文/一条皓太)

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