女児向けアニメでサブキャラを初デザイン、「ミカグラ」ではメインキャラクターも
─2003年には、デザイナーデビューもされていますね。いくつかご紹介いただけますか?
天﨑 最初の「マーメイドメロディーぴちぴちピッチ」は女児向けアニメなのですが、男性のヘアメイクアーティストのデザインをやらせてもらいました。あと、サンゴの妖精もデザインしました。これらはゲストキャラでして、その話数しか出ないので、作監さんにお願いしますというのは、よくある話なんです。
─初めてデザインされた時のご感想は?
天﨑 もともとデザインをやりたいというのがあったので、頑張ってやりました。サンゴの妖精は、最初は赤ちゃんとして出てきて、最後に赤ちゃんに化けていたとわかるのですが、サンゴの角をつけたものとか、3案くらい出して、監督チェックで決めてもらいました。絵コンテがあったので、完全にゼロからというわけではありません。
─その後、ゼロからデザインされたものはございますか?
天﨑 「.hack//Roots」(2006)の、痛みの森という特殊フィールドに出てくるモンスターは、割とゼロからに近い感じでデザインしましたね。ゲームの原作があり、絵コンテも上がっていたのですが、「ゲームに出てこないようなモンスターにしてほしい」と真下耕一監督から言われまして、自分のイメージでゲストモンスターをデザインしました。「女神転生」シリーズの敵って、後に出てくるほど強そうに見えますよね。自分もそういうふうに見えるよう、意識してやっていました。3体出てくるのですが、最初のは浅いエリアに出て来るので、「強そうだけど、回復ポッド飲みまくれば、ハセヲでも何とか倒せるぞ」と見えるように、2体目は「これ勝てないよね。必死こけば、何とか逃げられるかな」という感じで、3体目は「絶対ムリ」と思えるようにデザインしました。「.hack」はメディアミックスプロジェクトで、「それぞれで自由にやってください」という感じだったので、メーカーチェックが厳しくありませんでした。リテイクもなく、演出さんの評判もよかったですね。
─「翠星のガルガンティア」(2013)では、第5話のサブキャラクターをデザインされていますね。
天﨑 こちらも作監業務の一環として、やらせてもらいました。デブ、マッチョ、ヤセの3体のキャラをデザインしたのですが、村田和也監督のほうから「すね毛とか生えててもいいよ」というお話があったので、「ヤセキャラは毛深くしよう」と思って出したら、OK後のキャラ表には「デブ、マッチョ、ギャランドゥ」という名前になっていて、たしかにお腹のほうにも毛を描いたのですが、「なんだこれ」と思わず吹き出してしまいました(笑)。
─「ミカグラ学園組曲」(2015)ではメインキャラクターのデザインをされていますね。
天﨑 ミカグラのデザインでは、初期の段階から「原作とは違う絵にしてほしい」というオーダーと、「リアルとデフォルメのバランスのとれた絵が欲しい」という要望がありました。ほかは割と自由だったので、絵の方向性を決めるまでが、結構苦労しました。八坂ひみというキャラがいるのですが、初稿では主人公の先輩という事もあって、やや大人っぽい雰囲気もあったのですが、岩崎太郎監督から「もっと幼くしてほしい」と言われまして、今の感じになりました。結果的に、全体的なキャラのバランスもよくなり、いい変更だったと思います。鼻の描き方にもちょっとこだわってみたのですが、最近あまりない描き方で、作画さんによっては苦労されたみたいです。
「野崎くん」ではマンガ道具だけでなく、りんごアメのデザインも
─「月刊少女野崎くん」(2014)ではプロップに初挑戦されました。これはいわゆる小物のデザインですよね?
天﨑 基本的には野崎くんのマンガ道具ですね。たとえば、シャーペンを割と凝ったデザインにしたのですが、野崎くんがネタを書いていて、その後、アップでシャーペンをピッと立てるシーンがありまして、何でもないカットなのですが、さまになっていたので、「凝ったデザインにしてよかったな」と思いました(笑)。面倒くさいデザインにしてしまったので、原画さんには本当に感謝しています。色紙立てのデザインでは、山﨑みつえ監督から「ワイヤー小物にしたい」とリテイクがあったのですが、これも評判はよかったみたいです。
─マンガ道具以外のデザインには、どういったものがありますか?
天﨑 野崎くんが鹿島を載せたカートや、鹿島の牛のかぶりものなどもやりましたね。あと、最終話のりんごアメも自分がデザインしました。りんごアメって、テカりが特徴的じゃないですか。あのテカり具合の処理を設定で統一しないと、アニメーターさんによって解釈がバラバラになってしまうんですよ。まぁ、テカり具合で1回リテイクが来てしまいましたが(笑)。りんごアメの設定には、「かじられた後」もあります。最終回なのでカット数が多く、アニメーターさんも多く参加されたので、かみ具合がバラバラにならないようにするためです。
─プロップデザインのご感想は?
天﨑 それまではサブキャラなど、キャラクター寄りのお話が続いていたので、オファーをいただいた時に、一度はプロップも経験しておきたいと思いました。あと、マンガ家のお話なので、BDのリーフレットにはキャラだけでなく、プロップ設定も載せてもらいました。プロップがリーフレットに載ることはあまりないと思いますので、載った時にはうれしかったですね。