アニメーター・天﨑まなむ　ロングインタビュー！（アニメ・ゲームの“中の人”第8回）

2016年12月17日 08:000

インタビュー

企画記事

アニメ・ゲームの中の人取材

アニメデザイナーには「作家性」と「バランス感覚」が求められる

─今のアニメキャラのデザインはとても大変なのですね。

天﨑　目の処理とかもそうなのですが、最近はデザインがアニメというよりも、「イラスト化」していて、アニメのデザイナーにも「作家性」が求められているように感じます。もともとアニメは共同作業なので、「誰でも描けるデザイン」が求められていたのですが、今は「この人じゃなきゃ描けない絵」みたいなのが求められていて、実際、そういうキャラクターのほうが、人気が出やすいんですよね。「野崎くん」や「NEW GAME!」もそうなのですが、キャラクターがすごく難しいんです。でも、あのキャラデザだから人気が出ているというのがあって、違う絵だったら、同じ人気は出なかったと思います。なので、今は総作監の負担もかなり大きくなっています。

─アニメーターに求められる資質能力とは何でしょうか？

天﨑　好奇心を持つこと、いろんなことに興味を持つことが大事だと思います。アニメーターはいろんな作品に関わって、いろんなものを描くので、「面白さがわからないと、面白く描けない」と思うんですよ。自分の趣味や好みじゃない作品が来た時にも、その作品の面白さを理解することができて、理解した後はそれをちゃんと面白がれるか、というのが大事かなと思います。あとは、演出意図などに合わせた作画ができるか、チームプレイとして作画ができるか、ということも大切ですね。

─作画監督になる条件とは？

天﨑　「商品としていい絵にする」ことですね。視聴者はキャラ表を見るわけじゃありません。いい絵であれば、多少はキャラ表と違っていてもよろこばれますが、悪い絵ですと、どんなにキャラ表に合わせていてもダメなんです。総作監をする立場としても、いい絵で上げてくれたほうが、「ここだけちょっと違うから、線を変えると、もっとキャラに近づくよ」と、直しやすいんですね。悪い絵だとすべて描き直しになります。「総作監に直してもらえばいいや」という気持ちではなくて、「総作監に直させないぞ」といった意気込みで、仕事に向き合ってほしいですね。作監でいい仕事をしている人が、総作監に上がっていくというのもあるので、付加価値を認めてもらえる仕事をするのはとても大切だと思います。

─デザイナーを目指すアニメーターに、何かアドバイスはございますか？

天﨑　デザインは「無駄を足していく作業」ですが、アニメは「無駄を省いていく作業」で、真逆のベクトルを向いています。なので、アニメのデザインには、バランス感覚が求められます。何でもかんでも付け加えていくんじゃなくて、アニメーションできるディテール量を考えて、デザインすること。一見複雑そうに見えるのだけど、描いてみると描きやすい絵というのがあります。同じ線の量でも、時間がかかる絵と意外に時間がかからない絵ってあるんですよ。時間がかかる絵だと、途中で筆が止まります。たとえば、格子状の線が多いデザインだと、何度も止めて描かなきゃいけませんが、斜めの線がつながっているデザインだと、同じ線量でも流れで描けるので、早く上がるんです。「.hack」の全巻購入特典では、ハセヲのXthフォームのデザインをしたのですが、ゲーム絵はめちゃくちゃ線が多いんですよ。ポリゴンの場合は、絵としてのしなやかさが出せないので、パーツを増やして派手さを出していく、というのが多分あると思うのですが、アニメになると、うるさいだけになってしまいます。でも、単純に線を減らすだけだと、安っぽい印象が出てしまう。そこで、線を減らす場所は斜めの線に替えたりして、線が減った印象を出さないように配慮しつつ、流れでも描けるように意識しました。

─今後はどんなことに挑戦されたいですか？　監督業にご興味は？

天﨑　興味がないわけではないのですが、新しいことを始めるには勉強もしなくてはいけないので、今のTVのスパンでやるのは厳しいなと感じています。業界では「ミカグラ」のデザインの評判がよかったようなので、今はアニメのデザイナーとして、ちゃんと確立していきたいなと思っています。将来的には、もともとイラストレーター志望だったこともあるので、ゲームのデザインやイラスト、小説の挿絵などもやってみたいなと思います。画集の出版にも憧れていますね。

─アニメファンの皆さんにメッセージをお願いいたします！

天﨑　どの作品もファンの皆さんに支えられてこそだと思っています。これからも面白い作品を作れるよう頑張りますので、応援していただけたらうれしいです。

●天﨑まなむ　プロフィール

アニメーター、作画監督・総作画監督、デザイナー。3DCGの専門学校を卒業後、1997年にスタジオアド入社。現在は、動画工房所属。キャラクターの感情表現を得意とし、リアルから萌えまで万能にこなす。作画監督として「.hack／Roots」（2006）、「コードギアス反逆のルルーシュ」（2006～07）、「Phantom～Requiem for the Phantom～」（2009）、「翠星のガルガンティア」（2013）、「月刊少女野崎くん」（2014）、「干物妹！うまるちゃん」（2015）など、数々の有名作品に参加。「未確認で進行形」（2014）、「ミカグラ学園組曲」（2015）、「NEW GAME!」（2016）では作監だけでなく、総作画監督も務める。「月刊少女野崎くん」ではプロップ、「ミカグラ学園組曲」ではメインキャラクターのデザインも行う。

※TVアニメ「未確認で進行形」　公式サイト

http://mikakunin.jp/

※TVアニメ「月刊少女野崎くん」　公式サイト

http://www.nozakikun.tv/

※TVアニメ「ミカグラ学園組曲」　公式サイト

http://mikagura-gakuen.com/

※TVアニメ「NEW GAME!」　公式サイト

http://newgame-anime.com/

※「Tiphereth」　個人HP

http://www.manamu.com/

※天﨑まなむ　ツイッター

https://twitter.com/manamu_n?lang=ja