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ライブ映えする楽曲が並び、「red rose」で沸点に到達するDISC2
── DISC2の1曲目は、先ほども話題に出た「ロード・エルメロイII世の事件簿」のオープニングテーマ「starting the case:Rail Zeppelin」です。このライブで初披露された曲ですね。 梶浦 アニメがまだ放送前で、演奏していいかどうか確認を取っての初披露でした。ライブで新曲を発表するということが、私にはほとんどないので、貴重な体験でした。オープニングテーマということでできたことだと思います。
── そこから始まって、「MADLAX」や「エル・カザド」のアップテンポな楽曲になだれ込んでいくというのがDISC2の序盤で、ここは盛り上がるゾーンですね。 梶浦 この2作は「NOIR」に続く真下監督作品です。「エル・カザド」は、舞台となったのが中南米ということもあって、真下監督作品にしては作風がファンキーで、曲もそれにつられて、かっこよさがありつつ、大げさなゆえにコミカルに聞こえるものが多くなりました。そういう感じがライブ映えするし、プレイヤーも演奏していて楽しいんですよね。
── 「エル・カザド」のときは、サウンドトラックのイメージ作りのためにペルーまで行かれたそうですね。 梶浦 行ってきていいよと言われたので(笑)。セスナに乗ってマチュピチュを見に行ったり、現地でしか買えないようなCDを山のように買って帰ってきました。
── この流れに乗って、「el cazador」からEriさんのボーカル曲のパートに入り、「ツバサ・クロニクル」の「voices silently sing」、「コゼットの肖像」の「moonflower」と続いていきます。 梶浦 Eriさんのパフォーマンスを見て感じるのは、「やっぱり舞台の方だな」ということですね。歌の上手さは当然として、ステージの上での立ち居振る舞いをよくご存知なんです。この日は舞台セットとして月が天井からぶら下げされていたんですけど、Eriさんがお客様に背を向けて、月に向かって歌う場面があって。「舞台の人は、こういうふうにセットのすべてを巧みに利用するのか」と感動しました。妖しい曲を歌うときは、ステージに横になってしまうとか、そういう動きを自然にやってくださるので、すごく曲が盛り上がるんです。演奏しているのが映像と親和性が高いサウンドトラックということで、Eriさんの演技的な動きによって、楽曲のイメージがお客様により伝わりやすくなっていると思います。
── DISC2の12曲目「Crush」以降は、アンコールの曲です。ここでの注目曲は、やはり「red rose」です。 梶浦 アンコールはもうお祭り騒ぎですね(笑)。「red rose」は「Yuki Kajiura LIVE」の定番のひとつとなっていて、お客様がすごく喜んでくださるので、やらないわけにはいかない曲です。おそらく、当日のライブを見てライブCDを買ってくださる方の8割くらいは、「red rose」をもう一度聴きたいと思ってくださった方なんだろうと思います(笑)。
── それほどの盛り上がりだったということですね。 梶浦 CDに収録されている「red rose」はデジタルビートにイーリアン・パイプスを乗せたという感じの曲ですが、ライブだとプレイヤーたちの壮絶な共演になって。まさか、ライブでこうなるとは、私たちも想像していなかったんです。最後のリールはもともとイーリアン・パイプスのリールだったので、当然ライブでは中原さんにやっていただいて、どうせならバイオリンの今野(均)さんも一緒にやりませんかとなり、さらに、アンコールなのだから、いっそのこと全員でやりましょうということになり、結果的にすごい盛り上がりを見せる曲になりました。
── CDでも十分過ぎるほど迫力が伝わってきますが、現場でこれを聴いたら、圧巻だったでしょうね。 梶浦 ライブならではの育ち方をした曲のひとつですね。と言うより「red rose」がこうなったのは、リハーサルで、これもやっちゃえ、あれもやっちゃえと盛っていったあげくの事故みたいなものですけど(笑)。でも、こういう勢いもライブの醍醐味のひとつですね。
── お客さんのどよめきが、今回のライブ音源には入っているんですよね。それがまた臨場感を高めていて。タイム的にも7分近くあって、本当に聴きごたえがあります。 梶浦 本来はもっと短い曲なんですけど、ソロをやるプレイヤーさんが増えるごとに、こんなタイム数になってしまいました(笑)。ソロになると、私も観客のひとりのような気持ちになるんです。みんな、毎回本番でやることを変えてくるので、私自身にとってもすごく面白い曲です。
── DISC2の最後の曲は、2日目のラストを飾った「ツバサ・クロニクル」の「ring your song」です。 梶浦 別れの曲ですね。ライブではアンコールや締めの定番になっています。シンプルな曲なんですけど、いいメロディが書けたんじゃないかなと。私はどちらかというと複雑な曲よりもシンプルな曲のほうが好きで、言いたいことがより伝わると考えているので、ライブの最後に、最高の歌い手さんやプレイヤーさんと一緒にこの曲を演奏すると、誇らしい気持ちになります。作曲家としての幸せを感じますね。
── 「ツバサ・クロニクル」は壮大なストーリーでしたし、CLAMP作品らしいやさしさがありました。それが音楽にもよく表れていたように思います。 梶浦 「ツバサ・クロニクル」はやさしさも厳しさも温かさも恐さもあって、複雑な作品でしたね。描かれているものが多岐にわたるので音楽的にも雰囲気がひとつに絞りきれず、アプローチが難しかったです。作品の振り幅が大きい分、いろいろな楽曲を作ったなという印象があります。