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「花子とアン」からの楽曲が多く、温かな印象に満ちたDISC1
── ライブCDは2枚組です。DISC1はライブ序盤の展開に加え、1日目のボーカリストRemiさんが登場する楽曲が収録されています。DISC 2はライブの中盤以降の展開と、2日目のボーカリスト、Eriさんの登場曲という内容で、落ち着いた曲調が多いDISC1、アグレッシブな曲調が多いDISC2という印象でした。 梶浦 そうですね。DISC1は「花子とアン」の曲がまとめて入っていますし、フルートを生かす曲などの比重が多いので、落ち着いた印象があるかもしれません。DISC2は、アニメ「ロード・エルメロイII世の事件簿」のオープニングテーマ「starting the case:Rail Zeppelin」で派手に始まるので、その流れでライブの中盤に配したアップテンポな曲を続けて、Eriさんのボーカル曲に繋げていったので、力強い曲が並んだという印象になってますね。
── 「花子とアン」の曲はどれも、西欧の民族音楽風な要素があり、明るくのどかな印象がありました。 梶浦 「花子とアン」は、本当のケルト音楽ではないんですけど、そういう雰囲気を持った曲を作ってほしいというオーダーがありました。日本が舞台の話ですが、主人公が翻訳する「赤毛のアン」の世界を彷彿させるような曲ということですね。主人公が持つ外国への憧れやワクワク感を、サウンドトラックでも表現しました。
── 「花子とアン」のブロックの直後が、「プリンセス・プリンシパル」の「shadows and fog」です。これもある意味、西欧的な世界観の作品でした。 梶浦 「スパイ」と「ロンドン」がキーワードとなる作品で、それに合わせてサウンドトラックはわざとらしいくらいにスパイ物を意識したので、面白かったです。視聴者の方々の心理として、サウンドトラックにはだまされたいというものがあると思うんですよね。だから、少し大げさに作ったほうが気持ちよく聴いていただけると思うんです。「スパイ」を意識しながら、メインキャラクターが美少女たちであるということを忘れずに作ったのが、「プリンセス・プリンシパル」でした。
── DISC1には、「東京兄妹」の「first love」と、「RAINBOW」の「Rainbow~Main Theme~」という実写映画からの2曲が収録されています。この2作品にはどのような思い出がありますか? 梶浦 「first love」はSoundtrack Specialでは何度も演奏している、定番に近い曲ですね。作っていたときは、将来ライブで演奏することになるとは想像もしていませんでした。原曲はサンポーニャを使っているんですけど、「vol.#15」では赤木りえさんにフルートを吹いていただいてます。
── 「東京兄妹」は1995年公開の映画ですね。 梶浦 かなり前ですね。この作品のサウンドトラックを書いた頃はコンピューターの打ち込みではなく、生の楽器を使うことを今よりも強く意識していて、結果的にライブで演奏しやすい曲になってますね。ただ、5拍子という演奏者を悩ませる曲でもあって、ライブで演奏したことで初めて、この曲を演奏するときの緊張感がわかりました(笑)。
── もうひとつの「RAINBOW」は1999年公開の映画で、「Rainbow~Main Theme~」はタイトル通り、テーマ曲ですね。 梶浦 これも懐かしい曲です。ライブではずっとRemiさんに歌っていただいていて、今ではRemiさんをお呼びしたときの定番曲になりました。ちなみにオリジナルはデビュー前の、まだ大学生だったKOKIAさんが歌っているんです。
── 歴史ありですね。 梶浦 そうですね。当時、もうすぐKOKIAという名前でデビューするんです、と教えていただいたのを覚えています。この映画はアーティストが歌う楽曲がたくさん使われていたので、私が担当したサウンドトラックは数曲なんです。クラシック風の歌い方ができる方ということで、KOKIAさんを紹介していただいて、その中のいくつかを歌っていただいたという経緯でした。
── DISC1のラストは、Remiさんのボーカルによる「NOIR」の「a farewell song」。「vol.#15」初日の最後に披露された曲です。 梶浦 「NOIR」という作品と出会えなかったら、今のような仕事はしていないでしょうね。サウンドトラックを担当することになり、真下耕一監督に「好きに作ってください」と言っていただけたことが私の人生を変えて、今のすべてにつながっています。人生のターニングポイントはいくつもありますが、「NOIR」ほど大きな分岐点はないですし、作品自体もすごく印象深いものでした。「こんなことをアニメでやっていいんだ?」と思うようなことが次々と起こりましたし、真下監督の音楽の使い方も常識を打ち破るようなもので、忘れがたい作品ですね。
── ちょうど同じ日にSee-Sawのコンプリートベスト「See-Saw-Scene」が発売されますが、「NOIR」はSee-Sawにとっても再出発となった作品なんですよね。 梶浦 はい。それまで長く休んでいたんですけど、「NOIR」で挿入歌をやらせていただいたことが活動再開につながって。私にとっては、いろいろなことが動き出した作品でした。それに技術的な話なんですけど、ちょうど「Pro Tools」が台頭してきた時期で、私も「NOIR」を作っている間に導入したんです。