【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第23回「血界戦線&BEYOND」ほか

2017年11月18日 12:000
(C) 2017 内藤泰弘/集英社・血界戦線 & BEYOND製作委員会

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アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かがひと言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。


内藤泰弘氏の原作をアニメ化した「血界戦線&BEYOND」の舞台となるのはヘルサレムズ・ロットと呼ばれる街である。
ヘルサレムズ・ロットは“地球上で最も剣呑な街”。濃い霧の向こうに広がる異世界と現世が入り混じり、さまざまな思惑を持ったものたちが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する場所である。そんな街の均衡を守るために秘密裏に活動する者たちがいた。それがクラウス・V・ラインヘルツ率いる「秘密結社ライブラ」である。彼らは、その特殊な能力を駆使して、街の平穏を乱す異界の住人と日夜戦いを繰り広げるのである。

このヘルサレムズ・ロットは3年前の「NY大崩落」と呼ばれる未曾有の大災害で誕生したという設定。もともとはニューヨークだったのである。
だから画面には、1930年頃にNYに建設されたアール・デコ調の摩天楼(エンパイアステートビルがその代表的な存在)がよく描かれていて、少しクラシックな作品の雰囲気を形作っている。

また人間と異界の住人が入り混じって、いつも騒ぎが起きているという状況も、かつては“人種ののるつぼ”、最近では“人種のサラダボウル”と呼ばれる、多文化主義を形作るニューヨークの雰囲気から発想したのではないか――と想像できる。
「血界戦線」にとって、ヘルサレムズ・ロットは、作品の思想そのものを示す舞台というか、もうひとつの“主人公”といってもいい存在だ。

というわけで、今回は“ニューヨーク”をお題にいろんなアニメを追いかけていきたいと思う。

ヘルサレムズ・ロットのような、ニューヨークであってニューヨークでない街。そういう意味で筆頭にあがるのは「THEビッグオー」のパラダイムシティである。

パラダイムシティの住人は、40年前に起きた“何か”によって、それまでの記憶(メモリー)をすべて失ってしまった。そしてパラダイムシティ以外の世界のすべても失われてしまった。パラダイムシティは大小のドームに覆われ、富裕層はそのドームの中で暮らしている。
そんなパラダイムシティで、ネゴシエイターとして仕事をしているのが主人公のロジャー・スミス。荒っぽい仕事になった時には、ロジャーはメガデウス・ビッグオーを使い一線交えることも辞さない。

このパラダイムシティのある場所「もとはマンハッタンと呼ばれた島だった」という設定がある。街の風景にも、ヘルサレムズ・ロットと同様にアール・デコ調を思わせるクラシックなビルが登場するし、メインメカであるビッグオーもアール・デコ調のロボットである。
こうして見ると、1930年代に建設されたビル郡が、いかに日本人にとってニューヨークの中心的なイメージを形作っているかが見えてくる。

いっぽう、「ラブライブ!」の劇場版である「ラブライブ!The School Idol Movie」に出てくる街は、“ニューヨーク”と呼んでよいのだろうか。

映画の前半は、海外でライブをするためにある街を訪れたμ'sの姿が描かれる。画面には自由の女神など、そこがニューヨークとわかるような有名なランドマークなどが映ったりする。でも、登場人物たちは一度もこの街を“ニューヨーク”と呼ばないのである(アメリカという国名も出てこない)。
そのかわり、その街の活気に触れた後、μ'sのひとりである星空凛が、「わかったよ! この街にすごくワクワクする理由が! この街ってね、少しアキバに似てるんだよ!」と“この街”の魅力を語る。

ここでは“ニューヨーク”は、“ニューヨーク”そのものではなく、「ドキドキワクワク」の可能性が詰まった場所としての“都市”を体現した場所として、固有名詞を伏せて表現されているのである。

最後に紹介するのは「幻魔大戦」。地球を狙う“幻魔”の手先、ザメディと、地球を守る超能力者たちが戦う舞台になるのがニューヨークである。

この時、ニューヨークは幻魔の攻撃による地震と津波で廃墟となっている。パンナムビル(現在のメットライフビル)を津波が襲う様子などが止め絵で点描されているほか、廃墟となったニューヨークを象徴するように、顔が半分割れた自由の女神が描かれる。
こちらで描かれているニューヨークも、廃墟となっているという意味では“ニューヨークであってニューヨークではない”街といえる。


(文/藤津亮太)


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