バーンブレイバーンで浮き彫りになる今の中国では無理な要素と作品数が寂しい中国の1月新作アニメ事情

2024年02月12日 12:001

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。

今回は中国の動画サイトで配信されている日本の1月新作アニメに関する動向や、話題作の「勇気爆発バーンブレイバーン」によって改めて浮き彫りになった、中国における新作アニメの配信が難しくなる要素などについて紹介させていただきます。

現地の期待作は配信されているものの作品数は寂しい1月新作アニメ


中国では1月から2月にかけて学期末や春節(旧正月)の長期休暇と重なることもあり、中国のオタク界隈もあまり盛り上がらないことが多いのですが、今年はそれに加えて中国国内の娯楽方面の規制や経済の冷え込みなどもあり、例年と比べても微妙な空気になっているといった話が聞こえてきます。

 

実際、新作アニメの配信に関しても何かと寂しくなっているようで、1月の新作アニメで現在配信されている、あるいは何らかの動きが出ているのはダンジョン飯異修羅メタリックルージュといった作品だけのようです。

この中で「ダンジョン飯」は中国国内でも原作漫画の簡体字版が刊行されています。評価が高く、アニメ化の情報が出て以降、現地ファンの間では期待の新作アニメとなっていたそうで、アニメの配信開始後も順当に人気と再生数を伸ばしているようです。



現在、中国の動画サイトにおける新作アニメ枠の作品としては10月のシーズンから続いている「葬送のフリーレン」や、中国における配信開始が遅れた影響で更新もうしろにずれこんでいた「呪術廻戦」の第二期なども並んでいることもあってか、中国のオタクな方々からは

「ラインアップ的にはそれなりに見るものはあります。日本の特撮作品なども配信されていますし」

といった話もありました。

 

しかし、新作アニメに関する動きの少なさに関しては何かと考えてしまうようで

「中国のオタクにとって春節の時期は、実家にいて時間があるので長編作品をまとめて見る、過去の名作を再度視聴するなどといった形で、新作以外の作品を消化する、過去の作品の知識を蓄える期間にもなっています。そのため、新作アニメに関する注目は相対的に低くなるのですが、ここまで新作配信が少なくなってしまうとさすがに寂しいですね……」

などといった話もありました。

 

中国で配信される新作アニメに関しては、10月のシーズンも初動で配信された作品は少なく、新作の配信が本格的に動きだしたのは11月に入ってからでしたし、1月の新作に関しても今後また動きが出てくる可能性はあります。

 

しかし、中国国内は春節に入ると一斉に動きが止まるため、10月のシーズンよりもさらに動きが遅くなることも考えられますし、春節の長期休暇中は、新作を話題にする中国のオタク層の動きも鈍くなるので、中国における1月の新作アニメの配信に関しては、当面の間寂しい状況が続きそうです。

バーンブレイバーンで浮き彫りになる「今の中国では無理」なアニメ

 

近年の中国では、外国産アニメの配信に関して事前の審査検閲が厳格化しているのにともなって、日本の新作アニメに関しても、それ以前のような日本とのタイムラグなしでの配信が困難になっていますし、作品の配信の有無に関してもハッキリした情報が出なくなっています。



また「上の方」の審査検閲とは別に、中国のネットに整備された通報システムと合わさった現在の中国ネットでは、簡単に炎上しやすい空気感もあり、日本の新作アニメの中には、設定や作中の演出を見た中国のオタクな人達が

「この作品は今の中国で配信するのは無理だろう」

と感じて、配信に期待するのをあきらめてしまう作品も増えているそうです。

 

1月の新作の中にも、中国のオタク的にそういったあきらめざるを得ないと感じた作品はいくつかあるそうですが、なかでも勇気爆発バーンブレイバーンは、少し前の状況と違って、現在の中国ではあまりにもリスクが高いということで、内容に関する話題とは別に頭を抱えてしまう部分もかなりある作品として目立っているのだとか。

 

中国のオタクな方々に聞いた話によると、「バーンブレイバーン」に関してはまず

・主人公2人がそれぞれ自衛隊とアメリカ軍所属の軍人

という部分がやはり無視できないレベルの問題だそうで、

「いきなり出現した勇者ロボに乗って流れるアニソンBGMにツッコミを入れる、必殺技を叫ぶという行動は、日本の自衛隊でなければ困難なのは理解できますが、それとは別に、自衛隊やアメリカ軍の軍人が活躍する作品を今の中国でそのまま流すのは危険です」


「自衛隊や日本軍関連は規制強化以前から難しい要素で、2016年には「ハイスクール・フリート」の中国国内向けの配信が突然中止になる事件が発生しています。それ以前にはなぜか「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」が配信できていた時期もあるようですが……」

 

などという話も出てきましたし、世界規模のストーリーになりそうだということで

「もし中国関連の場所が戦場になった場合は難しくなる。「ダンバイン」のように直接的な描写がなくても、上海などの都市の名前が出てくるようなのはちょっと……」

といった話もありました。

 

またほかにも、放映開始後に明らかになった

  • ・主役ロボであるブレイバーンの性格と妙な距離感
  • ・主人公2人が上半身裸になりながら歌うミュージカル的なエンディング

といった、日本で大きな話題になっている部分も現在の中国ではかなり危なそうです。

 

このあたりに関して中国のオタクな方々からは

「中国ではテレビ放映の時代から裸に関しては厳しく、現在のネット配信でも日本のアニメに出てくる普通の男性の入浴シーンにはモザイクがかかります。どの程度の問題になるかは私もわかりませんが、演出での強調も含めて考えるとリスクは高いと感じられます」


「ゲイネタの扱いに関しても、現在の中国ではかなり難しいです。エンディングの演出もブレイバーンの発言も安全とは言えません。中国のネットではニコニコ動画から来た、笑えるゲイネタの人気も高いので、面白いネタとして受け入れる人もかなりいるとは思いますが、人気になって注目を集めると笑いのネタとして楽しめる層以外の視聴者が増えますし、不謹慎あるいは価値観のおかしい内容ということで批判や通報、規制の対象になるといったリスクが考えられます」

などといった話がありました。

 

「バーンブレイバーン」に関しては、現在の中国国内でも話題になりそうな要素がたくさんありますし、「完全な削除修正は難しくても一部修正などでいけるのでは?」

という考えも浮かんでくるそうですが、それとは別に現在の中国で人気になって注目を集めることのリスクを考えると

「やっぱりやめておいた方がよさそう」

といった考えになる中国オタクの方は少なくないそうです。

 

現在の中国では、人気になって注目を集めることにより「作品を笑いのネタとして楽しめる層」以外の視聴者が増え、不謹慎な笑いに対して批判・通報が発生するのは避けられません。日本の新作アニメ関連では2021年に「無職転生」が通報などにより炎上が急速に拡大して、配信プラットフォームのbilibiliとそのスポンサーに対する抗議も発生するなど、春節直前の時期に大混乱となった事件も記憶に新しいです。

 

そのため「バーンブレイバーン」のような作品に関して、現在の中国では「人気になることのリスク」が高過ぎるという見方になってしまうようです。切り取り動画やショートームービーでのネタ紹介ならともかく、商業レベルでの配信を行うのはリスクが高い、冗談では済まない問題になる可能性もあるので、扱いが難しいということになってしまうのだとか。

 

中国は、日本国外では比較的珍しいロボアニメに対する理解の深い地域で、世代によってはオタクどころか、アニメを見る人間にとっての基礎知識的な作品の中に「ガンダムSEED」が入っていたこともありますし、それ以前にも中国国内のテレビで放映された「絶対無敵ライジンオー」や「超魔神英雄伝ワタル」や「魔道王グランゾート」が人気になっています。また、さらにさかのぼると、「超時空要塞マクロス」などの作品をアメリカで再構成した「Robotech」などが大人気になっています。

それに加えて近年は「スーパーロボット大戦」などのゲームを通じて、ロボアニメ作品の知識や定番ネタがアップデートされ続けていることもあり、「バーンブレイバーン」の作中に出てくるロボアニメのお約束ネタとそのパロディに関しても理解できるオタクは多いそうです。

 

そんなわけで、中国オタク事情的にも「バーンブレイバーン」に関しては中国の広い範囲からの反応を見てみたかったのですが、現在の状況を考えるとあまり期待できそうにないのは、悲しいですね。

百元籠羊

百元籠羊

90年代から十数年中国の学校に通い「日本のアニメや漫画、オタク文化が好き」な中国人達と遭遇。以後中国にいつの間にか広まっちゃった日本のオタクコンテンツやオタク文化等に関する情報を発信するブログを運営中。

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コメント(1)
GonzoGonzo2024/02/12 22:59

「二度目の人生を異世界で」のアニメ化を制作中止に追い込んだ恨みはまだ忘れてないので、自業自得なのでは?って冷めた目でみてる。中国で見られないのは、そちらの政治のせいで、日本ですら見られなくするのはやり過ぎ。

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