どうにか期待作の配信が始まった中国の7月新作アニメ事情と 変化の続く現代中国日本声優人気事情【中国オタクのアニメ事情】

2023年09月10日 12:000

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。

今回は中国の動画サイトで配信されている日本の7月の新作アニメに関する動向や、近年また変化している中国における日本の声優の人気事情などについて紹介させていただきます。

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遅れてではあるものの、どうにか期待作の配信が始まった7月新作アニメ


中国における7月の新作アニメの配信は、初動の時点ではここしばらくのシーズンと同じように新作配信関連の情報が出てこず、配信開始となった作品も配信スケジュールが不安定な状況だったようですが、その後中国における期待作の配信が予告され(行方不明にならずに)始まるなど、ある種の小康状態になっているようです。

 

遅れて配信の始まった作品の中で人気が集まっているのは、まず「呪術廻戦 第2期」だそうで、日本での放映開始から2か月近く遅れての配信となったものの、中国でもファンの多いこの作品が無事配信されてホッとした人も少なくないそうです。


それから中国では、7月の新作扱いではないものの「NieR:Automata Ver1.1a」が新作枠で配信されているそうで、原作ゲームのキャラクターの人気と知名度からかなり注目を集めているとのことです。



またほかにも「わたしの幸せな結婚」や「文豪ストレイドッグス 第5シーズン」などが手堅い人気を獲得しているようですし、7月のシーズンの最初から配信が始まっていた「Helck」、「白聖女と黒牧師」なども、先行して獲得した分と合わせて比較的安定した人気になっているもようです。


 

現在中国で配信されている日本の新作アニメの中には、「内容や描写に関して中国ではリスクが高い」などと言われていた作品も含まれているようです。例によって中国国内向けの配信に合わせた修正削除が行われてはいるそうですが、少し前までの中国独自のリスクを恐れた自粛や、ガチガチの自主規制を行わなければならない空気ではなくなっているのかもしれません。



中国における日本のアニメ配信事業は浮き沈みが激しく、中国本土で最初に日本のアニメの正規配信ルートを確立した「楽視(LeTV)」も業務を縮小し、現在では日本のアニメとの関係は薄いものになっていますし、一時期日本の新作アニメ配信の最大手だった「愛奇芸(iQIYI)」も2018年後半に起こった日本のアニメに対する規制強化以降、日本のアニメの扱いを急速に縮小していきました。
そして現在日本のアニメ配信の最大手となっている「bilibili」でも、近ごろは配信スケジュールの混乱や規模の縮小が見受けられます。
もっとも、中国のオタクな方々の話によると近頃の「bilibili」では、一般層にも強い人気アニメ作品の中国語吹替え版の配信も拡大しているなど、過去にほかのプラットフォームで行われたような方針転換による日本のアニメ配信の急激な縮小とは異なる部分が見受けられるそうです。

また近ごろの中国の動画配信分野に関しては、日本のアニメ作品に限った話ではない「新作」の減少傾向があるそうで、「上からの規制や炎上リスクの増加だけでなく、業界全体の景気悪化の影響も感じられる」といった話も出ているそうです。

 

このところ、日本国内でも報道されているように、最近は中国全体の景気の悪化がかなり速いペースで進んでいることもあってか、景気の悪化が今後の中国の娯楽産業、オタク分野に対してどのように影響してくるのかなど、中国のオタク界隈でも何かと不安を感じる人が増えているそうです。

現代中国日本声優人気事情



日本の声優は中国でも何かと注目される存在になっており、中国のオタク界隈ではさまざまな声優関連の話題が飛び交っていますし、アニメやゲームなどの作品に手を出す理由が「気になる声優が出演しているから」ということも珍しくはないそうです。

そんな中国における日本の声優人気事情に関しては独特な部分が少なくありませんが、日本との違いが生じる理由としては、言葉の問題のほかに、オタクが日常的に接するメディアやイベントの違いによるところも大きいようです。

中国のオタクな方々の話によると、近年の中国では、人気の高い日本の声優に関する事情がかなり変わってきているそうで

人気声優に幅広い世代のファンがいて人気の寿命も比較的長い日本とは違い、近頃の中国ではひと昔前に大活躍していた声優のファンという人が目立たなくなってきています。これは中国のオタクの世代交代が速く、世代間の交流も活発ではないことや、中国では昔と比べて便利になりコンテンツが増えても、依然としてアニメ以外に声優を意識する機会が少ないことなどが理由として考えられます

 

中国国内では2000年代末頃から日本の声優を招いてイベントを開催する動きが生まれ、その後国産ゲームに日本の声優を起用することも増えていきましたが、その当時の声優人気を知っている人間によるキャスティングと、現在のオタク主流層の好みのズレが拡大しているという意見もあります

 

中国ではゲームで日本の声優の声を記憶する人も少なくありません。近ごろはスマホゲームが二次元の入り口として非常に大きいので、特定の世代の間ではゲームで演じたキャラが声優の代表的なイメージになっていることも珍しくありません。しかし人気や話題性の広がりという面ではゲームの効果は限定的です
などといった話もありました。

これらに加えて、近ごろの中国に入る声優関連の情報が多様化している影響で、現地での好みも細分化されており、日本の声優関連では「ハッキリとした大人気」というのがわかりづらくなっているという見方もあるそうです。
このあたりに関して中国のオタクな方からは
現在の中国のアニメ視聴者を探せば、どの声優に関しても好きだという人は出てきますし、ファン同士の話題も見つかると思います。しかし昔と違って、中国国内で明確に商業的な効果が期待できる規模の熱心なファンがついている日本の声優は多くないと思います
といった話も出てきました。

以上のように、昔と比べて何かとわかりづらくなっている、中国における日本の声優人気ですが、プラスの面の変化もあるそうで、たとえば現在の環境では、中国のネットで高い話題性のある人気キャラが出現した場合は、声優も含めて注目が集まり、世代を超えた広い範囲の人々の記憶に残るようになっているとのことです。

中国のオタクな方の話によると、最近では子安武人さんや大谷育江さんなどがこの例に該当するそうです。子安武人さんは以前の中国でも一定の知名度があり熱心なファンもいたそうですが、
昔の作品に関しては中国のテレビで放映されていた吹替え版を見ていた人が多く、昔の作品における声優の活躍に関して知識はあっても思い入れはない
という事情がある中国において、広い範囲での人気という面では今ひとつの状態だったそうです。
しかしアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」で子安武人さん演じるDIOが中国で悪役、ネタキャラとしての評価も含む形で大人気になり、広い範囲で認識されるようになったことから、中国のオタク層における子安武人さんの人気と評価も急上昇することになったそうです。


また大谷育江さんは、中国でもピカチュウ役などで抜群の知名度がありますが「ポケモン」新シリーズにおいて演じている敵幹部のサンゴが
ピカチュウの声の人が人間の女キャラを演じてしかも非常に萌える演技だった
ということで中国のオタク界隈の一部に大きな衝撃を与え、大谷育江さんのイメージが大きく変わるという事件が発生したそうです。



近年の中国のオタク界隈では「声優の声も老いる」ということが急速に認識されているらしく、ある意味では「ずっと聴いている声に慣れている」日本の視聴者よりも、声の老化に敏感だという話もあります。
そんな中で芸歴の長いベテラン声優が、現在のオタクにとっても魅力的に感じる演技、それも中国のオタクの一般的な認識にはなかったような演技に出会うことの衝撃は、日本よりもかなり大きいものになるそうです。

百元籠羊

百元籠羊

90年代から十数年中国の学校に通い「日本のアニメや漫画、オタク文化が好き」な中国人達と遭遇。以後中国にいつの間にか広まっちゃった日本のオタクコンテンツやオタク文化等に関する情報を発信するブログを運営中。

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