【インタビュー】作曲者・橋本由香利が語る、TVアニメ「多田くんは恋をしない」オリジナルサウンドトラック

2018年07月05日 19:000
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パロディ曲を作るのは、気分転換になりました


── 日常系、コメディ系の曲は、制作していていかがでしたか?

橋本 これらはひたすら楽しく作れました。コメディ曲は自由に作ったんですけど、楽器はあまり特殊なもの、民族的なものは使わないように、自分の中でルールを決めました。全体のテーマから楽器の選択も外れないようにしようと思いました。

── 民族音楽の楽器は、異世界ファンタジーで使われる頻度が高いような気がします。

橋本 作品のジャンルを選ぶ楽器ですね。今回はオーソドックスな楽器だけを使ってますね。ピアノとアコースティックギターが中心で、フルート、オーボエという木管楽器を、しっとりとした曲で入れています。逆に男性キャラの曲では金管楽器がソロを取っているのも多いです。全体的な印象としては上品さを意識したというか、テレサがヨーロッパから来たヒロインであることが主軸になっていますね。

── 橋本さんは、どのキャラクターがお気に入りですか?

橋本 やっぱりピン先輩ですね。本当に面白くて、最高です。伊集院もそうですけど、多田くんが朴訥(ぼくとつ)な分、周りの男性キャラがにぎやかで、よかったと思います。

── コメディ曲は伊集院やピン先輩のイメージによるものが多いのではないでしょうか?

橋本 そうですね。2人をイメージすると、スピード感がある曲が作れるので楽しかったです。


── 「変人」(DISC1/22曲目)はピン先輩のテーマです。この曲は途中でテンポががらりと変わるのが面白かったです。

橋本 真面目な写真部部長なんだけど変態という、ピン先輩の二面性を表現しようと思いました。この曲は全部、コンピューターの打ち込みで作っています。ちょっとカントリーっぽい感じが入ってますね。ピン先輩がどのくらいのテンションの人なのか、シナリオや絵コンテを見ただけではつかめなくて、キャラと曲が合っているかどうか不安があったんですけど、オンエアを見たらぴったりだったのでホッとしました(笑)。

── もっと際だったキャラには、れいん坊将軍がいます。「れいん坊将軍のテーマソング」「いつも心は虹色に!」(DISC2/16, 17曲目)がそうですね。

橋本 「れいん坊将軍のテーマソング」の元ネタは、みなさんがおわかりの通りです。TV番組のオープニングのシーンだけは、作曲に入る前に映像ができていたんですね。それにタイミングを合わせて、元ネタをイメージしつつ、そっくりにならないように作りました。パロディって、ある程度似てないと面白くないんですよね。でも、似すぎちゃうと怒られるので、微妙なさじ加減で。レコーディングスタジオで映像を流したら、みなさんウケてました(笑)。


── 「いつも心は虹色に!」は、いかがでしたか?

橋本 これは10話の「れいん坊将軍展」のアトラクションのために追加で作った曲です。時代劇テイストを意識して作りました。

── 「虹の色をひとつ言ってみろ」っていう決めゼリフは、すごいですよね(笑)。

橋本 ひどいですよね。それでひとつ言うと、「虹の色は虹色だ!」って成敗されちゃうわけですから(笑)。

── 「作戦実行中」(DISC1/20曲目)は、スパイサウンドでした。

橋本 これは話数の指定はなかったんですけど、スパイっぽいシーンがあるので作ってくださいと。「007」のイメージですね。意外といろいろなところで使われていて、驚きました。

── この作品にはもうひとつ、劇中劇があるんですよね。多田くんの妹・ゆいが愛読するミステリー「ひまわり急行 恋する事件簿」で、7話のアバンでは主人公の女探偵・山村ポワロンよしこが、実際に動いて話すシーンがありました。そのときに使われていたのが、「ミステリー」(DISC1/21曲目)です。


橋本 いろいろな仕掛けがある作品なんですよね。パロディ曲は作るベクトルが変わるので、気分転換になるんです。

── ニャンコビッグの曲も面白かったです。「ニャンコビッグ VS 伊集院」(DISC2/2曲目)は、エレキギターが鳴りまくっていて、ほかの曲とはまったく違うテイストになっていました。

橋本 ニャンコビッグが伊集院に対して怒っているイメージの曲で、エレキギターを使ってほしいという指定がありました。かなり派手な曲になっています。もうひとつ、ブルースの「俺の名はニャンコビッグ」(DISC2/1曲目)があって、ニャンコビッグは贅沢にもテーマを2曲持っているんですよね(笑)。この曲はニャンコビッグはおじさんなので、シブいブルースを作ってくださいと言われました。こういう曲は真面目に作った方が、映像とのギャップで笑えるんです。

── 5話のラストでシャルルが出てくると、高貴な曲が流れ始めました。

橋本 彼の曲は完全にクラシックですね。6話にはダンスパーティのシーンもあって、ワルツを作ってくださいと言われました。シャルルは素敵でしたね。

── 各キャラクターの曲は、ジャンルが多岐にわたっているのが、こうやって並べて聴くとよくわかりました。

橋本 主人公の話をしていませんでしたが、「多田光良」(DISC1/11曲目)がタイトル通り、多田くんのテーマです。ギター2本でシンプルな曲にして、淡々とした中にやさしさや温かみを表現しました。山﨑監督が「多田くんっぽくできて、よかったです」とおっしゃってくれて、うれしかったです。


── 情感豊かになりすぎず、でもやさしいという。

橋本 盛り上げる曲というのは、コード進行とかでわりと簡単に作れるんです。淡々としているけど、感情が入っている曲の方がどちらかというと難しいですね。シナリオを読んだ限りの印象だったんですが、多田くんはメリハリがないというか、強く自分を主張することのない抑えたキャラクターでした。だけど主人公なので、どんな要素を打ち出したらいいのか、ちょっと悩みました。

── この作品の主人公とヒロインは、どちらも自分を抑えがちなタイプですよね。

橋本 そうなんです。周りはガチャガチャしているんですけど。

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放送日: 2018年4月5日~2018年6月28日   制作会社: 動画工房
キャスト: 中村悠一、石見舞菜香、宮野真守、下地紫野、梅原裕一郎、石上静香、下野紘、水瀬いのり、櫻井孝宏、大塚明夫
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