【インタビュー】作曲者・橋本由香利が語る、TVアニメ「多田くんは恋をしない」オリジナルサウンドトラック

クライマックスのピアノは、贅沢な録り方をしました

── 10話のラストで、テレサとアレクが本国に帰ってしまい、物語はクライマックスに突入していきます。11話以降は、その話数でしか使われない曲がいくつもあったように思いました。たとえば、「退屈な日々」（DISC2/9曲目）。11話の多田の寂しそうな姿に被って流れていました。

橋本　後半の話数のために追加で発注された曲がいくつかあって、そのひとつです。後半の曲は、“葛藤”と“海外”という2つのテーマが柱になっていますね。「退屈な日々」は、多田くんの沈んでいく気持ちを表現する曲を作ってくださいという発注でした。「テレサの葛藤」「二人の距離」（DISC2/11,12曲目）あたりも“葛藤”の曲ですね。自分の恋心に気づいたからこその葛藤だと思います。ここらへんは、キャラクターが強く感情を表に出す段階ではないので、静かな曲を心がけました。

── “海外”テーマの曲は、「ラルセンブルク」（DISC2/15曲目）あたりがそうですね。

橋本　はい。文字通り、多田くんたちがラルセンブルクに行って、ヨーロッパの街並みを歩くシーンのための曲です。シャンソンっぽい感じをイメージして作りました。

── ラルセンブルクは、ルクセンブルクがモデルですよね。

（スタッフ）　そうですね。フランスの隣国で、大公が国家元首を務めている国です。監督やプロデューサーはルクセンブルクに取材に行ってました。

── 今回のサントラの演奏は、すべて生楽器だったのでしょうか？

橋本　ピアノとギター、木管金管は生ですね。ドラムやベースは打ち込みです。リズムを立てた曲は少ないので、ほぼ生で録って実感のあるサウンドになっていると思います。打ち込み中心なのはコメディ、ギャグ曲ですね。

── オンエアを見ていると、たっぷりと音楽が使われている印象がありました。

橋本　いいシーンで、雰囲気にあった曲を使っていただいているなと思います。8話の多田くんとテレサが星空の下で話すシーンで「恋は8秒」と「高鳴る鼓動」が使われていたように、恋に落ちる瞬間をイメージした曲は特に素敵に使われていて、うれしかったですね。

── 星空の下のシーンは、すごくいいシーンでした。

橋本　本当に映像がきれいで、すばらしかったと思います。11話では、中村悠一さんが歌う「ラブソング 多田光良ver.」が流れましたが、その後に「恋は8秒」がかかるんですね。中村さんの歌が素晴らしくて、素敵なシーンだったと思います。

── 美声でしたね。

橋本　本当によかったですよね。

── 素敵なお話だったので、最終話まで見終わったら、ぜひサウンドトラックアルバムで余韻を味わっていただきたいなと思います。2枚組全47曲と聴き応え十分ですから。

橋本　曲によってメリハリがあるので、楽しんでいただけるとうれしいです。

── アイキャッチの短い曲も、すごくよかったです。

橋本　ありがとうございます。少ない楽器で、静かなんだけど印象的になるようにしたいなと思って作りました。全体的にシンプルな曲が並んでいて、「多田くんは恋をしない」の世界に合ったサウンドトラックになったかなと思います。

プロフィール

（CDデータ）

■TVアニメ「多田くんは恋をしない」オリジナルサウンドトラック

〈収録曲〉
・DISC 1
01. 出会い
02. 充実した時間
03. 学校生活
04. 撮影バトル開始
05. 今日の戦慄のニャンコビッグ!
06. 帰り道
07. 高鳴る鼓動
08. あたたかな光
09. やれやれ……
10. だめだこりゃ……
11. 多田光良
12. 心の隙間
13. 何気ない日常
14. 見つめ合う二人
15. 懐かしい思い出
16. 恋は8秒
17. 優しさに包まれて
18. 焦り
19. 失恋
20. 作戦実行中
21. ミステリー
22. ディスティニーなのだ!
23. アイキャッチ 1
24. アイキャッチ 2

・DISC 2
01. 俺の名はニャンコビッグ
02. ニャンコビッグ VS 伊集院
03. ダンスパーティ
04. 王子様の登場！
05. 張り詰める空気
06. バトル
07. 珈琲でもいかが?
08. Let’s get Jazz!
09. 退屈な日々
10. 緊張
11. テレサの葛藤
12. 二人の距離
13. 止まった時間
14. シャルルとテレサ
15. ラルセンブルク
16. れいん坊将軍のテーマソング
17. いつも心は虹色に!
18. 星空を見上げて
19. 戸惑い
20. 後悔したくない!
21. 想い
22. 初恋
23. アイキャッチ 3


（取材・文／鈴木隆詩）
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