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キャラクターの色彩設計がよくないと、美術もよく見えない
── 「君の名は」(2016年)の回想シーン、「この世界の片隅に」(2016年)の波のうさぎの絵などを手がけて、「トキノ交差」はいつからスタートした仕事なのでしょう? 四宮 昨年の秋ごろから準備を始めて、スタジオに入ったのは12月です。「『もったいない』であしたは変わる」の制作を担当していたティー・ワイ・オーのディレクター、松宏彰さんが持ってきてくれた企画なので、その流れから、ひさびさにアニメーション作品を監督しようという気持ちになれました。
── 実写映像を入れた理由は何でしょう? 四宮 ディレクターの松宏彰さんは実写作品も多くつくってこられた方なので、それなら実写を入れようと僕から提案しました。今までと同じことは繰り返したくありませんでしたし、何かしらチャレンジできる要素があった方が、今後の自分の仕事にもよい影響を残すだろうと思いました。ですから、渋谷駅前のスクランブル交差点の4面ビジョンで連動した映像を上映すること、アニメ作品だけど実写を入れること。この2つが大きな動機になりました。
── 何か条件はつけられなかったのですか? 四宮 特に条件はありませんでした。アートアニメーションにするのか、それとも商業アニメ的なルックでつくるのか。やはり一般層に訴求力があったほうがいいと思い、商業アニメ風の雰囲気を僕から提案させていただきました。
── すると、女の子のキャラクターを出したのも四宮監督の判断ですか? 四宮 そうです。なぜ女の子にしたのか、理由を話すと長くなってしまうのですが、時代の波の中をたゆたう感じをスカートの揺れで表現したかったのと、描きやすさも考えました。最初は男女を出すことも考えたのですが、それほど作画スタッフが多いわけではないので、なるべくポイントを絞る必要がありました。
── やはり、美術はご自分で描きたかったと思うのですが? 四宮 これまでの仕事歴から、美術や背景を専門的に描く人と認識されているかもしれませんが、マッドハウスを受けたのはアニメーターをやりたかったからなんです。背景だけ描くのは自分としては片手落ちな気がしていて、動画はもちろん、キャラクターデザインや色彩設計まで含めてトータルにつくりたいという気持ちが強い。キャラクターの色彩設計が悪いと、美術もよく見えないんです。美術だけやっていると全体のコントロールができませんから、どのポジションでも可能な限り自分で直接やりたい。だけど、ひとりで作業するには限界があることも知っているし、どれぐらいの按配がベストなのか、まだ計りかねているところです。