アニメ・ゲームの“中の人”インタビュー・第6回: アニメーション監督/JAniCA代表理事・入江泰浩!

アキバ総研 | 2016年10月10日 09:00

1人原画について


「ソウルイーター」(2008~09)のOPでは1人原画をされ、ファンの間で話題になりました。そのほかに1人原画をされた作品はありますか?


入江 RINO LATINA IIさんの「東京鉄コン筋クリートジャングル 弐零零弐式 REMIX」(2002)のPVアニメでも1人原画をしました。あと、セルではなく線画のみですが、ケイタクさんの「少しだけ…」(2005)のPVでも1人で描きました。


―今後も1人原画をしたいと思われますか?


入江 そうですね・・・ただ、もうアニメの原画を描くという作業から離れておりまして、2015年には「ご注文はうさぎですか??」の第11話で、自分も原画を持ったのですが、作監さんの修正をなぞって原画にするという作業が、結構しんどくなってきたなと感じました。スキャンしてデータ上でトレースするのはいいのですが、A4の紙の中で忠実にトレースというのが、ちょっと難しくなってきております。細々とした部分ではなくても、たとえばほっぺのラインにしても、慣れている人だとスッと描けるのですが、現場を離れ、手が忘れていると難しくなってきます。日々の繰り返しがとても重要なのですが、今は監督業として仕事の立ち位置も変わりましたので、それも難しくなっております。






「鋼」の監督として


「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」(2009~10)の監督をされたご経緯をうかがえますか?


入江 「原作の終了に合わせるタイミングで、原作の最後までアニメを作りましょう」ということで企画がスタートしていたようで、いろいろ監督の候補はあがったと思うのですが、最終的には自分のところにお話が来ました。「鉄コン筋クリート」(2006)の原画、3Dアニメ、「ソウルイーター」のOPとやったところで、「鋼」の監督のお話をもらった感じです。2006年あたりに3Dをやっていた時には、「入江はもう手描きアニメでなく、3Dのほうに興味が移ったんだ」と思われ、その後に「ソウルイーター」の手描きOPをやった時には、「なんだ、まだ手描きに興味があるんじゃん」と思われたかもしれません。自分の中ではどちらも同じものだったのですが、「手描きをやるのなら」ということで候補にあがったのではないでしょうか。

 

―入江監督は、水島精二監督版の「鋼の錬金術師」(2003~04)にも参加されていますね。


入江 水島さんの「鋼」に関しては、1本目のOPの絵コンテ・演出をやっておりまして、それが「鋼」との関わりの最初です。その後「KURAU」をやって、「KURAU」が終わったあたりのところで、劇場版の「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」(2005)の原画をやったという流れになります。

 

―監督のお話があった時のご感想は?


入江 「鋼」の原作自体、すごく面白いと思っておりましたし、それを最終回まで4クールかけて作るというのはやったことがないことでしたので、アニメ化するのに迷いはありませんでした。

 

―水島監督作品とは一部スタッフが変わっていますね。


入江 当時のボンズの制作ラインが同時並行でいくつか動いておりましたので、その中で「鋼」のスタッフを考えていきました。たとえば、水島さんの「鋼」では、伊藤嘉之さんがキャラクターデザインをされていますが、自分の時には伊藤さんは「ソウルイーター」のキャラデと作画監督をされていましたので、伊藤さんでいく選択肢はありませんでした。もっとも、「絵としても違う方向に変えたほうが、新しい作品としてスタートできるんじゃないか」という思わくもありました。

 

―入江監督の「鋼」のキャラクターデザイナーは菅野宏紀さんですね。


入江 菅野さんのことは「エスカフローネ」のころから知っており、温厚で、誇りを持って仕事をしていただける方ですから、菅野さんがやってくれるのであれば、こちらとしては何の不安も疑問もないということで入っていただきました。(編注:菅野さんは水島監督の「鋼」及び「KURAU」の作画監督もしています)

 

―「鋼」の制作でこだわられたことを、いくつか教えていただけますか?


入江 原作を読んだ時、いろんな街が登場しますので、そのあたりの設定が膨大になるだろうなと思いました。それを放映まで1年ない状態で、どういうふうに組んでいくか考え、美術設定を強化していきました。場所が変わった時に「ここはリオール、ここはダブリス、ここはセントラル」というふうに、明確に違う場所だとわかるように、現実の街をイメージソースにして美術設定を細かく作っていきました。もともとの漫画自体も、街ごとにデザインを巧みに変えて、描き分けてはいるのですが、そこに色とか時間帯とかもろもろが入ってきた時には、もっと積極的に変えないといけないと思ったからです。建物などをアニメーターにすべてお任せしてしまうと、「何となくヨーロッパ」といった感じになってしまいますので、そうならないように「この町の特徴はこんな感じです」と差別化をするために提示しました。ですので、自分の描きたい風景というよりは、作品のシーンごとの描き分けの要求のほうが高かったですね。イラストレーターのtoi8さんに「路地裏設定」を担当していただけたのはラッキーでした。

 

―美術設定について、原作者の荒川弘さんから何かコメントはございましたか?


入江 こちらからたとえば、「セントラルの中央指令部のむき出しの階段に、屋根をつけますがいいでしょうか」といった確認のお願いはしましたが、美術周りについての異論というのは特にありませんでした。

 

―音楽についてはいかがでしょうか?


入江 何人か候補をご紹介いただきまして、千住明さんにお願いすることにいたしました。千住さんは「機動戦士Vガンダム」(1993~94)や大河ドラマの音楽を作られていて、千住さんであれば、「鋼」の「広い世界を舞台にした、人間のドラマ・生き様を支えうる音楽を作ってくれる」と思ったのでお願いしました。候補の中にはより劇的であるとか、より軽快であるとか、いろいろな音楽を得意とされる方がいらしたのですが、自分の思い描く「鋼」のイメージに合っていたのが千住さんであったという感じですね。ただ、具体的にどういった音楽を発注するかといった段階では、三間雅文さんにディレクション・コントロールをしていただきました。(編注:三間さんについては、本連載インタビュー(https://akiba-souken.com/article/27432/)を参照。)

 

―アフレコはいかがでしたか?


入江 1年3か月という長さと、若い人たちからベテランの方までが集合したキャストの人数という点で、すごく濃く、緊張感の高い現場であったと思います。あの緊張感というのは、ほかの現場ではなかなかないなと感じております。

 

―第60話後半以降は、原作マンガと並行してアニメを作っておられたそうですね。


入江 そうですね。荒川先生がネームを描かれて、ネームが上がり次第、こちらにFAXで送っていただいて、それを基にシナリオを起こして、絵コンテを作るという流れになります。コンテの最中に完成原稿が上がってくると、それを見てコンテを調整することもありました。荒川先生のネームですので、ストーリーもとても面白く作られておりました。

 

―アニメの最終話を観ますと、マンガと若干違う部分もありますね。


入江 ネームと完成原稿が違っていたというわけではありません。「ネームはこうなっています。けれども、セリフやシーン、カットなどはアニメのほうで判断して、アニメはこういった形で決着をつけましょう」ということになりました。たとえば、ネームの段階ではまだ場所の指定がなされていなかったので、「こういうふうな会話がなされるのであれば、こういう場所でやるのが、過去の話数との関連も含めていいだろうな」といった具合に、場所を決めていきました。また、マンガという媒体とアニメという媒体の違いもあります。マンガだとページをめくった時の見開き感であるとか、コマのサイズによる印象の違いというのが出せるのですが、アニメの場合は全部16:9でフレームが決まっているものですから、大ゴマとか見開きの効果ではなく、カットが切り替わった時の次の絵、次の絵、次の絵といった形で、カットの積み方やアングルを変えないと、描いている感情や空気感というのが伝わらないのです。





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