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2011年1~4月に毎日放送ほかで深夜放送され、第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞するなど高い評価を得たTVシリーズ「魔法少女まどか☆マギカ」。
最新作となる劇場版第3作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』は、全12話のTVシリーズを再構成した『[前編]始まりの物語』『[後編]永遠の物語』に続くストーリーで、脚本・作画もオリジナルのファン待望の完全新作だ。
シリーズ生みの親ともいえるプロデューサー、アニプレックスの岩上敦宏氏に企画の成り立ちから製作秘話、今後の展望についてたっぷりと語っていただきました!
(取材・文/山崎佐保子)
――――早速、企画の発案からお伺いしたいと思います。熱狂的な支持を集めたTVシリーズ「魔法少女まどか☆マギカ」ですが、劇場版新作をTVシリーズの“続編”という位置付けにした一番の理由は何だったのでしょうか?
スピンオフや、別の時間軸でやるというアイデアもあったんですけど、続編が一番難易度が高いと思ったんですよね。原作の「Magica Quartet」とも、だからこそ取り組もうという話をしました。彼女たちの“日常編"を描くというアイデアなど、選択肢もいろいろあったのですが、やっぱり「まどか」はストーリーが軸。だからこそ、あの後の物語を描こうと。簡単ではないけれど、そこにチャレンジしようと思ったんです。
――――劇場版としての続編の制作は、TVシリーズ終了後に即決定したのですか?
当初は「何かやりたいですね」と、ブレスト的に話をしていただけです。新房さんからは魔法少女たち全員がもう一度活躍する物語にしたいと希望がありました。それで虚淵さんから「こんなストーリーどう?」って具体的なアイデアが出てきて、これだったらTVシリーズではなく劇場版にしようと。アイデアがあって初めて、劇場版というフォーマットが決まったんです。それはTVシリーズが終わった後でしたね。
――――大ヒットの要因としてキャラクターたちの人気も大きいと思います。TVシリーズで散っていった彼女たちがどのように戻ってくるのだろうと、ファンは期待していたと思います。
TVシリーズの放送中にも、新房総監督から「さやかは生き返らないの?」って話が出たくらいですからね(笑)。TVシリーズを12話作って、キャラクターたちが思っていた以上に魅力的になったので。彼女たちに新たな活躍の舞台を与えたいなという気持ちも強くありました。
――――岩上プロデューサーは、新房昭之総監督×脚本の虚淵玄さん×キャラクー原案の蒼樹うめさん×制作会社シャフトのコラボレーション「Magica Quartet」の発案者として知られていますが、改めてこの組み合わせに至った経緯を教えていただけますか?
よく聞かれるのですが、要するに面白そうと思ったからなんですよ。後付け的ですけど、虚淵さんのストーリーや魅力的なセリフを今までとは違うキャラクターが演じることで、見てくれる人の幅が広がるのかなという気持ちはありました。逆にうめ先生は、新房さんと一緒に「ひだまりスケッチ」をやっていましたけれど、同人誌とかだともうちょっとシリアスで、等身の高いキャラクターを描いていたんですね。そこでシリアスな表情のうめ先生のキャラクターもいいよねって。うめ先生にとっても、これまでとはまた違うものが描けるのではと。
「まどか☆マギカ」の企画が立ち上がったのは、新房さんとシャフトと組んだ「化物語」のオンエア前なんですが、「ひだまりスケッチ」の映像的想像力を本当にすごいなって思っていたので、このメンバーで制約の少ないオリジナルをやってみたいなって気持ちもありました。それぞれのメンバーの挑戦がうまくかみ合ったんだと思います。
――――企画当初から苦労した点、迷ったところなどは?
これが、本当にないんですよね。一般論で言うと、アニメのオリジナル作品ってゼロから作る上に、すごく多くの人間が関わる集団作業なので、少しずつ思わくの違いがあったり、苦労することの方が多いと思います。でも「まどか」ではそういった苦労が一切なかった。あるとすれば放送時期が遅れたくらいかな。もう少し早めにオンエアする予定で進めていたのですが、現場的な都合もあって。苦労がなかったって言っちゃうと何もしていないみたいだけど、プロデューサーとしてはうまくいっているときは仕事ないですから(笑)。
――――オリジナルアニメは未知数な広がりに大きな期待もありますが、原作モノと違いマーケットを把握しにくいという点で不安要素もあるかと思います。そこは、作品の面白さで突き抜けられるという確信がありましたか?
ええ、全くもってそれだけです。人によると思うけれど、僕はそういった不安はあんまりないです(笑)。単純に「これ見たいよね!」って感じでしたよね。ただ、僕だけがそう思っていても、社内で「これはないでしょ!」って声が多ければ実現はしない。今回は集まったクリエイターの実績と実力に後押しされた部分は大きいです。
――――少女たちの自己犠牲で成り立つ“魔法少女”という非常にユニークなコンセプトが、最大の魅力だったのでしょうか?
最初は魔法少女から入ってもらって、開けてみると実はストーリーがシリアスで、そういったギャップもコンセプトの1つでした。そこに一番こだわっていたのは新房さんですね。TVシリーズの丸みを帯びたロゴデザインや、タイトルに“魔法少女”という冠をつけたいという強いこだわり。新房さんは演出家としてもとてもすぐれているけど、お客さんにどう見てもらうかも非常に気にかける人なので、とにかくこだわりは強かったですね。