――――世界的にも注目を集めるアニメはオリジナル作品が圧倒的に多いですよね。先の読めない意外性や、伏線が謎を呼んで視聴者があれこれ考えながらハマっていくと展開で大きな広がりを見せています。
「まどか」の場合は、それが大きな魅力になると事前から考えていました。それはTVシリーズの時も新編の時も。続編であることは事前に観客に伝えていたけれど、あらすじなどはあえて出さずにいました。「お話の続きを教えて」という原初的な魅力はアニメオリジナルならではだと思います。
たとえば原作モノだと、劇場用のオリジナルゲスト敵キャラが出てきて、その敵と戦って倒して元のストーリーに戻るというのが宿命としてありますよね。「まどか」の場合は先がどうなるかわからない。それはやはりオリジナルアニメの魅力じゃないかなと思いますね。
――――新編ではストーリーもさることながら、アニメーション自体もまた新たな一歩を踏み込んでいる印象を受けました。
それは、新房総監督と宮本幸裕監督とシャフトの力に尽きますね。正直、僕らは上がってくるまで全然わからないですから。絵コンテからも変わってくるので。全カットに「こうしたら面白いんじゃないか」という創意工夫が込められている。そこは本当にすごい。仕上がった新編を見て、身内の僕らが見ても圧倒されるような完成度でした。
――――脚本の虚淵さんは、これまでの作品でバッドエンディングを指向することが多かったような気がします。しかし「まどか☆マギカ」は、テレビ版も新編もいわゆるバッドエンドらしくはないですよね。周囲が意図的にグッドエンディングを希望したのでしょうか?
そういえば、以前みんなで打ち合わせをしている時に、蒼樹うめ先生が「最終回は気持ちよく終わりたいですよね」的な意味合いのことをぼそっと言ったんですよね。ああいうのは意外と虚淵さんに響いているかもしれない(笑)。
うめ先生のキャラクターが演じるということ自体が、虚淵さんに影響を与えていたのかもしれないですしね。虚淵さんらしくかつ感動的で、絶妙なエンディングになったと思います。
――――観客の反応は本当にさまざまで、4~5回見るファンもざらにいます。その繰り返し何度も見たくなる魅力とは、いったい何だとお考えですか?
何度も見たくなるって僕も思いますよ(笑)。商売抜きに「何度も見てね!」って言える映画ってそんなにないじゃないですか。新編は僕自身も何度も見たいと思うし、とにかく情報量が多いので、1回だけでは消化しきれない部分もありますし。アニメ史的にも、映画史的にも「こういう映画他にないよね」ってものになっていると思います。
――――劇場は、中高生を含む若者の熱気で溢れ返っていました。本作のどんな要素が、そこまでティーンたちの心をわしづかみにしているのでしょうか?
うーん、どんなところでしょう。ちょっと違う答えになってしまいますが、今は「わかりやすくないとダメ」という意見も多い中、見る人のリテラシーと言っていいのかわからないけど、新編は観客にもいろいろなものを要求する映画だと思うんです。誰にでも受け入れられる作品じゃないなとは思っていたので、その思いを分かち合えて嬉しい感じはあります。
――――魔法少女たちが直面する“希望”と“絶望”のフェーズを超越し、暁美ほむらが新たな局面へと到達した新編。さらなる続編への期待も高まりますが、現時点で続編の計画はあるのでしょうか?
できるものならと、僕は思っていますけど。今のところは何もないです。あれで終わりです。TVシリーズを終えて次をやりましょうよという話が出たときも、虚淵さんから非常に面白いアイデアが上がってきたので、やろうという流れになった。そこは、やはりアイデアありきで、それがなければ新編も存在しなかったかもしれない。新編の続きがあるかどうかは「Magica Quartet」の皆さんと話して、これなら「まどか」の次として面白いというものが上がってくれば、ぜひやりたいですね。
――――岩上プロデューサーがアニメ業界に入ろうと思ったきっかけ、影響を受けた作品などはありますか?
小中学生の時は完全なガンダム世代だったので、その流れからサンライズのアニメが好きでアニメ雑誌を読みあさっていました。あとは「風の谷のナウシカ」だったり角川アニメ映画だったり。この頃は純粋なアニメファンの視点ですね。大学時代は映画が大好きで、実写映画ばかり見ていました。特に昔の映画が好きで、ヒッチコックなんかをよく見ていましたね。当時はもう商業映画を作って生きていきたいと思っていたので、人を楽しませる映像ってどんなものだろうといつも考えていました。その2つの時期がミックスして、今の軸になっている感じです。
――――プロデューサーという立場は、監督をはじめとした制作サイドの作家性と、観客のもつ客観性とのちょうど中間でバランスをとるものですよね。
おっしゃる通りだと思います。僕は自分で絵を描いたりはできないけれど、面白がる才能はあるのかもしれませんね。それこそ視聴者的な感覚といいますか。
――――「鉄腕アトム」「ルパン三世」「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」「新世紀エヴァンゲリオン」など、各時代を象徴するような名作は多数存在しますが、「魔法少女まどか☆マギカ」もまた新たな時代を代表するような作品になったと思います。
そう言ってもらえるのは嬉しいです。5年後、10年後にもそう言われている作品になっていたらもっと嬉しいですね。
――――最後になりますが、業界の最前線を走り続けるプロデューサーとして、目指していきたい作品作りのポリシーなどはありますか?
常々言っていることですが、とにかく面白い作品を作りたい。本当にそれだけです。
(C) Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion