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各クラスタのゲストキャラクターの曲は、振り切って作ったほうが面白いと思いました
── 「エスタブライフ グレイトエスケープ」のもうひとつの特徴として、クラスタごとに全然違う社会があり、そこに暮らす人々がいるということです。毎回、エクアたちがいろいろなクラスタを訪れることで、劇伴も多様化していくことになります。たとえば、第2話では、新宿クラスタのヤクザ街に合わせて作られたヤクザ映画風の曲が使われていました。 藤澤 わかりやすく往年のヤクザ映画の劇伴をやってみました(笑)。ただ、近未来SFなので、日本のヤクザだけでなく、海外のギャング映画のエッセンスを加えたり、音も生っぽくしすぎないように心がけました。基本的には生楽器で構成していますが、ちょっとシンセを入れたりして、世界観に合わせました。
── ヤクザの親分で、一発屋のトイチという強烈なキャラクターが出てきました。彼は和服だったんですけど、配下のヤクザたちはサングラスと黒スーツで洋風でした。 藤澤 配下たちはギャングっぽいんですよね。トイチと配下たちは世界観が違っていたので、音楽で両者を近づけられればいいかなと思いました。
── トイチの曲では尺八の音が聞こえました。 藤澤 けっこう多用しましたね。あれは実は尺八ではなく、アルトフルートなんです。尺八の音を入れたのはこの1曲だけだったので、これだけのために専門の演奏家を呼ぶことはできないなという事情がありまして(笑)。フルートは奏法を変えればいろいろなことができる楽器で、もちろんプレイヤーの方が素晴らしいのが前提なんですけど、息を多めに吹いてもらうことで尺八のような音が出せるんです。
── トイチのどっしりした親分らしさが、よく表現されている曲だと思いました。 藤澤 尺八の音とともに、ストリングスも大きな音符でしか動いてないので、どっしり感が増していたと思います。そんなトイチが魔法少女に憧れているというのが面白くて(笑)。
── 魔法少女の曲も第2話で流れましたが、まさに魔法少女アニメの変身シーンの曲でした。 藤澤 ベースとドラムのプレイヤーには「日曜朝の感じが出ればいいですよね」と話して、そこを目指してもらいました(笑)。実はひと筋縄ではいかない楽曲で、それが魔法少女のマジカル感につながっていると思うんです。
── 第3話は池袋クラスタが舞台だったんですけど、この世界の池袋はペン人(ペンギン獣人)たちの街になっていて、しかも最強線という電車の線路によって東西に分断されているという、すごい設定でした。物語の中心となったのは東側に住むミハイルというペン人で、水中バレエを行うサンシャイン曲技団の団長です。見た目はペンギンなのにイケメンという、これまた強烈なキャラクターでした。 藤澤 ミハイルの曲は、山口さんの音楽メニューに「ナルシスト」と書いてあって。ナルシストが悦に入る感じと、水中バレエ団のクラシカルなイメージで、ワルツになりました。曲を作ったときは、まだミハイルのビジュアルを見てなかったんですよ。あそこまで前髪がシュッとなっているとは想像もできなくて、ビジュアルを初めて見たときはびっくりしましたね(笑)。しかも声が山口勝平さんで。
── ミハイルが山口勝平さん、親友で警官のミールペンが草尾毅さんという、すごい配役でしたね(笑)。 藤澤 あのお2人のかっこいいやり取りと見た目とのギャップはすごかったですね。ミハイルのワルツは上品さがありつつ、ちょっとうまくいってない感じも出せればいいなと思って作りました。こういう曲は、振り切ったほうが絶対に面白くなるなと(笑)。