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第1話アバンタイトルは、フィルムスコアリングの指定がありました
── では、またメインテーマ関連のお話に戻ります。第1話のアバンタイトルで流れた曲は、メインテーマをアレンジしてのフィルムスコアリングだったそうですね。 藤澤 山口さんからフィルムスコアリングでやってほしいという指定がありました。まずオリジナルのメインテーマを作って、それから第1話のアバン用のバーションに取りかかりました。ご覧になった方はわかると思いますが、まずは偽のお葬式から始まるんですよね。
そこでエクアは嘘泣きかもしれませんけれども涙を流していて、でもフェレスとマルテースはしれっとした顔をしているんです。なので音楽的にも悲壮感というよりは作戦前の緊張感を表現するような感じにして、ゲートで警報を鳴らされたところから、いよいよメインテーマが始まるという流れにしました。
── ゲートを強行突破してからは、もうアクションシーンですね。逃げながらの銃撃戦が始まって、音楽も派手になっていきました。 藤澤 ドラムが入る曲はテンポを途中で変えすぎると走ったり立ち止まったりとせわしない感じになるので、最初に一定のテンポを決めるのが難しかったですね。テンポが速すぎて焦っているように聞こえるのも、逆に遅すぎて疾走感が失われているのもダメなので、ちょうどいいところを狙いつつ、それが映像のテンポと合っているのかどうか、確かめながら作っていきました。
── オリジナルのメインテーマと、1話のアバンで使われたバージョンは、テンポは同じなのでしょうか? 藤澤 一緒です。オリジナルを作るときから、第1話アバンのテンポ感を考えていました。ただ、1話のアバンのほうはトランペットとサックスのアドリブが入っているんですよね。演奏者の方に第1話のアバンで使うことを伝えて、まだ物語が始まったばかりだから、抑え気味の演奏にしてほしいとお願いして、演奏していただきました。
── セリフが入る場所もわかっているので、そこではリズムが薄くなるんですよね。 藤澤 そうですね。リズムがスッと引いたときのクール感というのは、曲の雰囲気を一気に変えてくれるんです。
── マルテースが頭を撃ち抜かれて、頭が弾けてなくなるシーンでは、音楽が途切れて、緊張感が高まりました。 藤澤 撃たれたときに音楽が止まるというのは、山口さんの指示にあったと思います。メインキャラクターなのであそこで死ぬわけはないんですけど、見ている人はドキッとするじゃないですか。それに合わせて音楽を止めて、また流れ始めるときは、ニヤッとしていただけるようにちょっとコミカルな感じにしています。フルートを使って、なんだ、いつものことなのか、みたいな印象を狙ってますね。
── ここだけでなく、メインテーマのフレーズは、毎回どこかしらで聞こえてくるような気がします。 藤澤 メインテーマのアレンジは5曲あるんですけど、メインテーマのフレーズはそれ以外の曲でもちょっとずつ、いろいろなところで使っているんです。曲自体は違うんですけど、要所要所に同じフレーズを入れていくと、曲同士を物語の線でつなぐことができると思うんですよね。もちろん音響監督のメニューに沿いながらですけど、そうやって物語を感じさせるというのが、ここ最近、劇伴を作るうえで僕がこだわっているところです。今回は「逃げる」というテーマや主人公たちの軽快さを見せるうえで、その方法論が生きるのではないかと思いました。メインテーマのサビのメロディだけを使うのではなくて、たとえばこの曲ではイントロのリフを入れるとか、この曲ではメインテーマのコード進行だけを使うとか、そういうことをやっています。
── 視聴者としては、無意識に曲同士のつながりを感じてしまうような、そんな仕掛けですね。 藤澤 サブリミナル的な効果というか、そういうものがもたらされればいいかな、ということですね。