※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
登場人物の中では、アベルのために作った曲が一番多いかもしれません
── その後になると、1話の展開に合わせてバトル曲が並んでいます。オットーとサルマンという老騎士たちの活躍を表現した8曲目「the old knights」は勇ましく壮大な曲で、逆に2人のコミカルなキャラクターを強調しているように感じました。追っ手から逃れるサスペンス満載の「he’s behind your back」に続く10曲目の「you have to choose your way」は明るさのあるバトル曲です。雪丸たちが颯爽と戦うシーンに流れる曲で、ほかの話数でもよく使われています。 梶浦 これと12曲目の「the sea is never without a wave」もバトル曲になりますが、「海賊王女」のサントラでは、こういう系統の音楽はそれほど多くないんです。基本的には旅、冒険の物語で、誰かと戦って危機を乗り越えないといけないという展開が毎回あるわけではないので。
── 「the sea is never without a wave」には冒険のワクワク感も入っていますし、我々の現実とはまったく違った世界の魅力を描いた曲のほうが多い印象でした。 梶浦 作曲するにあたって参考にいただいた背景美術がとても美しかったですし、メニュー的にも情景を思い浮かべながら作りたくなる曲が多くて、色彩豊かなサウンドトラックにできたことがうれしかったですね。メニューに「カツオ2号の冒険」とか書いてあると燃えるじゃないですか(笑)。英語によるサントラの曲名はCDになったときに付けられるもので、実際に制作しているときはMナンバー(※ミュージックナンバー。制作サイドで用いられるBGMの整理番号であり曲名に代わるものでもある)で呼んだり、メニューにある仮タイトルで呼んだりするんですけど、中澤さんが付けられた仮タイトルは、ストレートでありながらイマジネーション豊かで、想像力を刺激されるんです。「老騎士のテーマ」とか「未知なる島」とか、グッとくる言葉が並んでいました。
── 11曲目の「his name is Abel」はタイトル通り、アベルのテーマです。重要な敵役で、かっこよくてやさしく、時に残酷さも見せる魅力的なキャラクターですね。 梶浦 アベルは最初、貴族然としたたたずまいで登場するんですよね。イギリスの優雅な貴族みたいな感じだったんですけど、次第に白から黒に変貌していくので、音楽も優雅でありながら変貌しやすいように作っているんです。「his name is Abel」も上品な感じなんですけど、1音外すとあぶなく聞こえるような曲になっています。アベルの曲は「his name is Abel」を基本に、いろいろなバリエーションがあって、どのキャラよりも多いんじゃないかな。「his」がタイトルに付いている曲はだいたいアベルの曲です。
── アベルは登場人物の中で一番変貌していくキャラクターですからね。 梶浦 そうですね。ほかのキャラクターはあまり裏表がないんですけど、アベルは陰があるので。
── タイトルに「his」が付いた曲の中にはメロディがほとんどない、海外のサスペンス映画のような曲もあります。 梶浦 アベルの怖さですね。メロディというのは基本的に理性的なものなので、きれいに響けば響くほど怖くなくなってしまうんです。聴いていても音程が取れないような曲のほうが怖さが出るんですね。
── バトル曲はDISC2の後半にも数曲入っています。こちらはストーリーが進んでいってからのバトルなので、重さがありますね。14曲目の「take action!」は和のテイストが混じった、かっこいい曲でした。 梶浦 このくらいの混じり方でいいのかなと。雪丸たちは見た目が完全に侍なのでそれで十分伝わる気がしますし、侍が活躍するシーンでいかにも和風の音楽を流してしまうと、違和感がなさすぎて面白くないというか。全編、侍の物語なら違和感を出す必要はないと思うんですが、洋風の世界観に和のキャラクターが入り込んでいるのが「海賊王女」なので、やっぱり違和感を出したいなと思いました。
── 7話で、雪丸が颯爽と現れてフェナを救うシーンでの「take action!」は印象的でした。冒頭のリズムが鳴る部分を取って尺八のような笛の音から使われていたので、より和テイストが目立って、アベルの船に先陣を切って踏み込んできた雪丸のかっこよさが、この曲によって際立ちました。 梶浦 雪丸たちの軍団は、やっぱりかっこいいですよね。個人としての強さもそうですが、会話のテンポ感がよくてチームとしてのまとまりを感じます。普段のときもベタベタし過ぎずクールな距離感があって、でも仲はよくて。あのチームに入りたいと思いますね(笑)。
── そして戦いになると本当に強くて。「海賊王女」の殺陣は、流血もちゃんと描かれていて、かなり迫力があります。刀で戦っているということが、伝わってくるんですよね。 梶浦 容赦のない殺陣ですよね。人もたくさん死んでいきますし、あの世界における戦いというものを、正面からしっかり描いていると思います。