「もっと上に」ウェイバーは自分自身の思いが乗ったキャラクター アニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」加藤誠監督インタビュー

2019年12月01日 12:000
「もっと上に」ウェイバーは自分自身の思いが乗ったキャラクター アニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」加藤誠監督インタビュー

TVアニメ「やがて君になる」の繊細な演出でファンから大きな支持を受けた記憶も新しい、加藤誠監督が手がけたのは、TYPE-MOON作品の「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」。魔術や陰謀が渦巻く世界でのミステリー作品だ。自身、これまでの演出術の総決算と言わしめるほどの工夫を凝らした仕上がりで、ファンからは早くも続編を望む声が上がるほどだ。そんな本作はどのようにして作られていったのか。加藤誠の監督術に迫る。

2作品並行して監督を務める覚悟


── 加藤監督の前監督作「やがて君になる」の最終回が放送されたのは2018年12月の末で、その3日後には本作の第0話が放送されました。準備期間を含めると作業が重なる中、それでも同時進行で監督作を進めていかれた理由は何でしたか?

加藤 最初はアニプレックスの黒﨑(静佳)プロデューサーから監督のオファーがあり、原作を渡されて、読んでみたところ、非常に面白くてすぐに引き受けたいと思いました。2作品並行作業はハードルが高いなと云う不安も同時にありましたが、トロイカの長野(敏之)社長から「チャンスがあるなら大きいタイトルをやったほうがいい」と背中を押されました。それに「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」という作品は、あおきえいさん(本作スーパーバイザー)が監督した「Fate/Zero」のウェイバーのその後を描く作品で、あおきさんの近くでこれまで何作も一緒にものづくりをしてきた身としては、その続きを自分が監督できるなら、何としてもやらなければという使命感が生意気にも湧いてきまして、最終的にお引き受けすることにしました。

── 「Fate/Zero」の世界の印象は、演出家としてどんな風に映りましたか?

加藤 Fateシリーズに触れるのは、自分はアニメの「Fate/Zero」が初めてだったんです。それを見て世界観の面白さ、深さを知って、そこからシリーズを見ていきましたので、まさにあおきさんの映像を通じてTYPE-MOON作品に入っていった感じです。歴史上の人物をサーヴァントとして召喚して魔術師と一緒に聖杯を求めるという物語の設定は斬新で、素直に斬新で面白いなと思いました。映像としてはハイエンドだし、放送当時「Fate/Zero」を見ていたときは、あまりの映像のすごさに圧倒されて、これに関わることはないだろうと思っていました。

── 「Fate/Zero」のウェイバーについてはどんな印象を受けましたか?

加藤 率直に、クソガキだなと(笑)。でも「Fate/Zero」を見ている中で、一番感情移入ができたのもウェイバーだったんです。彼は自分のエゴから、ケイネス先生の聖遺物を盗んで無理やり聖杯戦争に参戦するんですが、そこでライダーと出会い、共に歩むことでひとりの小僧から徐々に魔術師になっていく。すごく弱くて情けないからこそわかる人間らしい“生の部分”もたくさんあって、最終的に彼が一番好きになりました。


── 10代の彼の成長物語は大人であった加藤さんにも魅力的に映ったんですね。

加藤 そうですね。そんな風に自分が好きだったキャラクターが大人になった姿を監督として描けるというのは魅力的なお話でした。ウェイバーはライダーが負けたのは自分が魔術師として未熟だったからで、彼が聖杯を取るに足る存在だったことを証明したい、その一途な想いが彼を果てのない“魔術師の頂点”へと歩ませる。僕はその姿に感動し、物語の続きを彼と追っていきたいと思いました。それは僕自身が、いわゆる天才肌じゃない、特別じゃないとわかっていても、それでも映像に携わる人間として可能な限り上を目指し、にじり寄っていきたい想いとすごくリンクしたんです。その意味で、ロード・エルメロイⅡ世(以下、Ⅱ世)は自分に近いキャラクターではありました。今の自分と重ねられることはキャラの厚みにつながると思うので、彼の仕草や思いには僕自身の魂が載っているかもしれません。


── このシリーズ、序盤はアニメオリジナルエピソードで、第7話から第12話までを原作の途中の巻である「魔眼蒐集列車編」をアニメ化するという、ほかではあまり見ない構成ですが、シリーズ構成の小太刀右京さんとはどのようにお話を進められたのでしょうか?

加藤 魔眼蒐集列車編に入っていくまでに、どういうパーツ(物語を深く理解するためのアイテム)をオリジナル話数に落とし込んでいけば、視聴者がこの世界観に自然と入っていけるだろうか? と云う事をまずご相談させて頂きました。その散りばめる要素を一番生かせるお話をと小太刀さんにはお願いして、以降は上がって来たものに対してキャッチボールをしていくという構成、脚本作りでした。原作がある中で、オリジナル要素をこれほど多くシリーズに、しかも序盤に持ってくるということは非常に勇気がいることでしたので、何度も確認してはドキドキするというのを繰り返していましたね。

── 放送では第0話が先行してありました。最初からここに置こうとしたエピソードでしたか?

加藤 はい。これは導入というか、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」と云う作品はこういう世界観なんだよと説明するわかりやすいお話として組んでいきました。いわゆる一般的な推理モノではなく、魔術+ミステリーの作品だと云うことを見せた第0話だったと思います。

── 第1話は加藤監督が絵コンテを担当されました。どのような位置づけとして考えましたか?

加藤 第0話では作品の世界観を視聴者に提示した訳ですが、本格的に本編へ入っていく前にもうひとつ、視聴者がまず気になるのは、やはりウェイバーがどうやってⅡ世になったのかと云う問いです。そこでいわゆるミッシングリンクを第1話で示す必要がありました。あおきさんが第0話として作品を形にしてくれましたが、そこはあくまで0話は0話。僕としての監督の主審を改めて示した第1話が必要でした。第0話の焼き増しではなく、よいところを拾っていくという意識で絵コンテを描いていきました。ただ、この第1話は非常に苦戦しましたね……(汗)。


── それはどんなところでしょうか?

加藤 冒頭とCパートの締めくくりは最初から思いついてはいたのですが、その間を繋ぐシーン、カットがなかなか思い浮かびませんでした。第1話というプレッシャーもあったと思いますが、「やがて君になる」が終わった直後、そのままの流れで第1話の絵コンテ作業に入ってしまったため、頭の切り替えがうまい事できず、作品としての見せ方の違いにとまどってしまったんだと思います。本質的には僕が作っている筈なんですが、作品ごとに、それに見合ったレイアウトの取り方や、間の生かし方、テンポなどを変えてみたりと、いろいろ工夫したりします。ただ、前作の思い入れが強ければ強い程、頭を切り替えるためのリフレッシュ期間は長時間必要になります。そう云った意味でもたぶん、今までやってきた中で一番苦戦した第1話だったと思います。

── 最初の質問とも重なるところですが、やっぱりクリエイターにおいて頭の切り替えは重要なんですね。

加藤 そうですね。第1話は監督としても、いち演出家としてもこだわり抜いたフィルムになっています。僕が監督としてこだわっているのがシリーズ第1話の冒頭、ホントの最初ですね。視聴者がどういう世界観なのか注目して見るタイミングなので、そこで僕らの本気を見せなくてはなりません。今作でいうと、第四次聖杯戦争の冬木大橋のシーンがそれにあたります。ここだけで実はセルを1000枚ぐらい使っています。スローになるところはもちろんフルコマ(秒間24枚動画)でやっています。撮影のコンポ作業も1週間かけて組んでもらいました。スタッフすべての熱い想いが詰まったこのカットには思い出も深く、演出としても非常に手応えを感じています。


── 今作は、枚数が多めなのでしょうか?

加藤 アクション回はどうしてもカット数、セル枚数が多くなってしまいますが、その分、ほかの話数でカット数、セル枚数を少なくしたりとカロリー計算して全体の帳尻を取ったりしています。現場のカロリーコントロールも監督として大事な努めですからね。第1話は見た人の感覚では300カット以上に見えたかもしれませんが、実は280カットほどなんです。単純にカットを積めば面白くなるかというと、そうではなくて、“限られた制約の中で最大限の厚み”のある見せ方をする。それが“演出”だと思うんです。以前、「Re:CREATORS(レクリエイターズ)」の副監督をやっていた頃までは、カロリー計算がうまくできず悩んでいましたが、監督・演出経験が増えるにつれ、段々とコントロールできるようになっていきました。

── 最初の監督作である「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」(以下、櫻子さん)もミステリー作品でした。そこからの成長や変化についてご自身ではどのようにとらえていますか?

加藤 「櫻子さん」が宝石の原石だとしたら、それを磨いて少し輝きだしたのが「やがて君になる」だと思っています。監督加藤誠としての表現の確立と言うか、形になった瞬間でもあり、自分ではうまく説明できませんが、「あぁ、この演出は加藤っぽい」ってやつだと思います。

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