【プレイ・バック・アニサマ2018 その2】声優だから歌える歌、アニソンアーティストだから歌える歌――「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」2日目レポート

2018年09月08日 10:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

日本最大級のアニメソングの祭典「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」 (アニサマ 2018)が2018年8月24日~26日、さいたまスーパーアリーナにて開催された。

今回レポートするのは8月25日に開催された2日目。アイドルマスター SideM、内田真礼さん、ウマ娘 プリティーダービー、大橋彩香さん、GRANRODEO、スタァライト九九組、竹達彩奈さん、茅原実里さん、TRUEさん、TrySail、fhána、petit milady、水瀬いのりさん、Minamiさん、三森すずこさん、宮野真守さん、山崎はるかさん、悠木碧さんが出演した。
【プレイ・バック・アニサマ2018 その1】還る場所、敬意とともに見送る場所としてのアニサマ。「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」初日レポート

 

2日目のオープニングは内田真礼さんと水瀬いのりさんが「私たちをレスキューしてくれますか?」の声とともに、「ギミー!レボリューション」「アイマイモコ」とお互いの楽曲を一緒に歌うコラボでスタート。水瀬さんは自分自身の楽曲では客席を明るくあおるタイプの楽曲はあまりないことから、内田さんの楽曲である「ギミー!レボリューション」で会場と一緒に「Rescue!!」が叫べたことが楽しかったそう。はにかんだような笑顔で背中を預け合う2人の姿が印象的だった。

内田真礼さん×水瀬いのりさん

 

会場を大きく使ったパフォーマンスで度肝を抜いたのが「ウマ娘 プリティーダービー」。さいたまスーパーアリーナを競馬場に見立てて、キャスト陣がトロッコではなく自分の足でアリーナを走る演出でファンを驚かせた。駿川たづな役の藤井ゆきよさんが競馬実況風にウマ娘それぞれを紹介、ファンファーレはホーンセクションバンド・FIRE HORNSが生演奏する力の入れようだ。

ウマ娘 プリティーダービー


アニサマ最多クラスの人数の自己紹介に時間を取るかわりに、ウマ娘らしくレース風のエンターテインメントに昇華させたのはコロンブスの卵。最後の直線で居並ぶウマ娘たちを追い抜いてステージに駆けた和氣あず未さんたちはもちろん、徳井青空さんや高橋未奈美さんといったメンバーがほんの一瞬のカメラの寄りやワンフレーズの歌唱でしっかり爪痕を残していたのが印象的だった。

 

ウマ娘 プリティーダービー

 

アニメーション映像とのコラボで話題をさらったのが、petit miladyとアニメ「ポピテピピック」。「360°星のオーケストラ」と「世界中が恋をする夜」を披露した2人が妙にコントっぽいMCのやりとりを見せると、スクリーンには「ポピテピピック」タッチで描かれたpetit miladyが登場! アニメ第2話と同じく古川登志夫さんと千葉繁さんのボイスで、先ほどのMCをそのまま演じる生「ポピテピピック」を繰り広げて会場を沸かせていた。

 

petit milady

 

2日目のトリはGRANRODEOが「BEASTFUL」「Deadly Drive」「少年の果て」「Punky Funky Love」を披露。アイドルマスター SideMと宮野真守さんのパフォーマンスを受けての出番は満を持してという感じ。マイクスタンドを自在に操りながらの魂を込めたシャウトは震えるほどかっこよく、MCですかさず前出番の宮野さんをいじっていくゆるさとの落差がいい。ラストの「Punky Funky Love」はTVアニメ「黒子のバスケ」第3期1クール目OP主題歌だが、今回はホーン・セクションFIRE HORNSを加えたアルバムバージョンで。FIRE HORNによる管楽器の華やかな生演奏の分厚さが随所で目立つのも、今年のアニサマの特徴かもしれない。

宮野真守さん

 

GRANRODEO



個人的注目ポイントにフォーカスして2日目を振り返り!

ここからは個人的な注目ポイントをダイジェストで紹介していく。2日目のステージ全体を通して強く感じたのは、「声優アーティスト」という特異な存在ならではの表現の多様性だ。オープニングの内田さんと水瀬さんのコラボはアーティストとしてのものだったが、「ギミー!レボリューション」で楽しそうにコラボを楽しんでいた水瀬さんが「アイマイモコ」に入ると、身にまとう空気そのものがガラリと変わる。浮遊感のある目線の散らし方であったり、表情であったり、全身で楽曲の世界観に潜っていく感じは役者であること、声優であることが土台にあるアーティストならではの感じがした。

 

内田真礼さん

 

水瀬いのりさん

 

そして声優として、アーティストとしての多様性を体現していたのが悠木碧さんだった。悠木さんはまずはソロとして「帰る場所があるということ」を披露。緑の森のビジュアルとピアノの調べとともに、山羊の角を身に着けて歌う悠木さんの姿は幻想的ですらある。続く「永遠ラビリンス」では子猫に扮したラブリーな映像やキュートで高らかな歌声が印象的で、まずはソロアーティストとしての彼女の幅の広さを見せつけた。休憩明け一発目には「幼女戦記」ターニャ・デグレチャフ役として「Los! Los! Los!」を披露、アニサマに集った新兵たちに「5分前行動もできないのか!」と一喝してみせた。

悠木碧さん

 

悠木碧さん(ターニャ・デグレチャフ)


また、純白衣装をまとったユニット・petit miladyとしての正統派なキュートさ。そして「おねんねコンちゃん」前半の童女のような歌唱からラストのデスボイスへの変化と、今日1日で一体いくつの顔を見せてくれたのか……と瞠目(どうもく)するしかない多彩さだった。

 

petit milady

 

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は、舞台(ミュージカル)・アニメの二層展開が特徴の作品。そして舞台とアニメの両方でキャラクターを演じる声優9人によるユニットが「スタァライト九九組」だ。スクリーンに映し出された緞帳がさいたまスーパーアリーナを「劇場」に変える中、ステージに登場した九九組は「Star Divine」を殺陣ありの舞台仕様で披露! 舞台仕様ではあるのだが、露崎まひる役の岩田陽葵さんが武器をバトンのように回している姿が、アニメを見た後だとまた違った感じに見えるのがとても面白い。ステージ下の奈落からズバッと出現した小山百代さんが華麗な剣舞を見せたりと演出にも工夫がこらされていて、さいたまスーパーアリーナのステージ全体を華やかな舞台に変えてみせた。いっぽう、アニメ主題歌の「星のダイアローグ」は、TVサイズでは一切の無駄を削ぎ落として89秒に凝縮したような楽曲だが、フルサイズでは楽曲としての幅がぐっと広がる。キャストたちが2人ずつ電車を作ってステージを練り歩いたりと、ライブ曲としての遊びが感じられた。

スタァライト九九組

 

3曲目、九九組が「サクラ大戦」の「檄!帝国華撃団」をカバーしたのには度肝を抜かれた人が多いのではないだろうか。「サクラ大戦」はアニメやゲームなどのエンターテインメントコンテンツと、舞台(歌謡ショウ)で同一キャストがステージに立つ二層展開を、「スタァライト」より20年早く実現したいわば直系の先輩だ。天堂真矢そのもののようにズバッと鮮やかすぎる見得を切る富田麻帆さんや、眼鏡を直す仕草を強調する佐藤日向さん、動きのひとつひとつがケレン味たっぷりで華やかな相羽あいなさんらを見ていると、これは「サクラ大戦」の「檄!帝国華撃団」という演目を歌う聖翔音楽学園第99期生を演じているのかもしれない。間奏の真宮寺さくらの「私たち、正義のために戦います」から始まる口上は、小山さんが「私たち、きらめきのために戦います!」とスタァライト流にアレンジ。「虹の色染め上げて 躍りでる戦士たち」「暁に激情を照らし出す乙女」といったフレーズが、だんだんスタァライトっぽいフレーズに聴こえてくるのがとても面白かった。

 

スタァライト九九組

 

「アイドルマスター SideM」で印象的だったのは、2017年と2018年の顔ぶれや表現の変化だ。昨年はDRAMATIC STARS、High×Joker、S.E.Mと3つのユニットでメンバーを構成し、カラーの強いユニット曲を交えて鮮烈な印象を残した「アイドルマスター SideM」だが、今年はさまざまなユニットから個人を集めた選抜ユニットという趣き。楽曲も「Reason!!」「GLORIOUS RO@D」「DRIVE A LIVE」と、作品を代表する全体曲3曲という王道構成だ。この構成はさまざまなユニットが一緒に物語を紡ぐTVアニメを経験したからこそだろう。自信にあふれた彼らの姿や楽曲全体から立ち上るメジャー感が、さいたまスーパーアリーナでの直球真っ向勝負を可能にしたのだと思う。

 

アイドルマスター SideM

 

個人的に面白かったのは、このメンバーでの「DRIVE A LIVE」。「アイドルマスター SideM」は初期からユニット単位での展開をしていることもあり、各ユニット内の歌声や個性のバランスがしっかりしている。自然、パート分けなども収まるところに収まりやすいのだが、今回は各ユニットから選ばれた混成構成だ。トロッコに分乗しての歌唱なこともあって、時折歌声の中から子供のようにキュートで強いスーパーハイトーン(岡村直央役の矢野奨吾)がぐわーっと伸びてくるのがすごく新鮮だった。スクリーン越しの姿も、普段ライブではユニットのメンバーと一緒の姿を見ることが多いので、各メンバーが順番にカメラで抜かれていく流れがなんだかいつもとは違う、新しい光景に見えた。「We are 315!!」の声とともに、真っ白な光の洪水の中でポーズを取る誰もがキラキラした笑顔だったのがすごく印象的だった。

 

さて、先ほど「女性声優アーティスト」という存在ならではの多様性について書いたが、それが目立ったからこそ、逆の意味で際立って見えたのがMinamiさん、茅原実里さん、TRUEさんというアニソン界を代表するアーティストが並んだゾーンだ。

 

Minamiさん

 

Minamiさんの「Precious Memories」は最初のアニサマである「Animelo Summer Live 2005-THE BRIDGE-」でも歌われた曲であり、ある程度上の世代にとっては本当に特別な楽曲だ。この曲で編曲を務めたアニサマ皆勤賞男・飯塚昌明さんが栗林さんの後ろでさらっとギターを弾いているのがすごくエモーショナルだった。

 

Minamiさん

 

TRUEさんの「Sincerely」「UNISONIA」「DREAM SOLISTER」という楽曲の並びは、女性アニソンアーティストのひとつの到達点と言ってもよいのではと思うほどのパフォーマンス。「DREAM SOLISTER」が始まった時に会場全体から立ちのぼった「この曲が聴きたかった!!」というオーラは、アニソンっていいな、素晴らしいなと感じるものだった。

 

TRUEさん

 

そんな2人のパフォーマンスが強烈だったからこそ、凄みが感じられたのが茅原実里さん。「Remained dream」は壮大な聴かせるナンバーで、そのあとにわらべうたのようにおだやかにやさしく歌いだす「みちしるべ」を持ってきた。この曲順は、茅原さんの「みちしるべ」からTRUEさんの「Sincerely」へと、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」楽曲をつなげる意図があったのだと思うが、ライブの終盤に“聴かせる”タイプを連ねて勝負できるのは本物の表現力があればこそ。スモークの中歌い上げる茅原さんの慈愛に満ちた眼差しが記憶に残った。

 

茅原美里さん

 

fhána

 

三森すずこさん×茅原実里さん

 

TrySail

 

大橋彩香さん

 

竹達彩奈さん

 

山崎はるかさん

 

【セットリスト】 

M01:ギミー!レボリューション(内田真礼×水瀬いのり)

M02:アイマイモコ(内田真礼×水瀬いのり)

M03:うまぴょい伝説(ウマ娘 プリティーダービー)

M04:Make debut!(ウマ娘 プリティーダービー)

M05:グロウアップ・シャイン!(ウマ娘 プリティーダービー)

M06:OH MY シュガーフィーリング!!(竹達彩奈)

M07:Hey!カロリーQueen(竹達彩奈)

M08:帰る場所があるということ(悠木碧)

M09:永遠ラビリンス(悠木碧)

M10:ゼンゼントモダチ(山崎はるか)

M11:Star Divine(スタァライト九九組)

M12:星のダイアローグ(スタァライト九九組)

M13:檄!帝国華撃団(スタァライト九九組)

M14:Million Futures(水瀬いのり)

M15:Starry Wish(水瀬いのり)

M16:NOISY LOVE POWER☆(大橋彩香)

M17:YES!!(大橋彩香)

M18:わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~(fhána)

M19:ケセラセラ(fhána)

M20:青空のラプソディ(fhána)

M21:WANTED GIRL(TrySail)

M22:Truth.(TrySail)

M23:adrenaline!!!(TrySail)

M24:Los! Los! Los!(悠木碧(ターニャ・デグレチャフ))

M25:aventure bleu(内田真礼)

M26:Smiling Spiral(内田真礼)

M27:One Unit(Minami)

M28:Precious Memories(Minami)

M29:Remained dream(茅原実里)

M30:みちしるべ(茅原実里)

M31:Sincerely(TRUE)

M32:UNISONIA(TRUE)

M33:DREAM SOLISTER(TRUE)

M34:360°星のオーケストラ(petit milady)

M35:世界中が恋をする夜(petit milady)

M36:おねんねコンちゃん(petit milady)

M37:JOINT(Mimorin×Minorin(三森すずこ×茅原実里))

M38:Reason!!(アイドルマスター SideM)

M39:GLORIOUS RO@D(アイドルマスター SideM)

M40:DRIVE A LIVE(アイドルマスター SideM)

M41:The Birth(宮野真守)

M42:SHOUT!(宮野真守)

M43:シャイン(宮野真守)

M44:BEASTFUL(GRANRODEO)

M45:Deadly Drive(GRANRODEO)

M46:少年の果て(GRANRODEO)

M47:Punky Funky Love(GRANRODEO)

M48:Stand by...MUSIC!!!(アニサマ2018出演アーティスト 2nd Day)

 

(取材・文:中里キリ)

画像一覧

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。