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劇伴はラーメン店さんのテーマソング
── 第7話「全国」は唯一のオリジナル回です。シリーズの中盤にオリジナルを挟んだのはなぜですか? セトウ 夏休みにどこかへ出かけるエピソードを描きたかったんです。場所はどこにしようかと相談したのですがなかなか決まらず、髙橋さんが「むしろどこにも行かないで、東京の中で全国のラーメンを食べ歩いてみたらどうだろう」と提案してくれました。結局は行かないという案が大正解でしたね。ラーメン発祥の地である浅草を舞台にできましたし、遊園地で遊ぶという夏休みらしい展開も盛り込めました。
── オリジナルゆえの苦労はありましたか? セトウ いえ、方向性が決まってからはスムーズでした。髙橋さんがシナリオを書いているので、オリジナルであってもキャラクターがブレることはありませんでしたからね。浴衣姿を披露したり、メロンパンやかき氷を食べたりと、4コマ日常アニメのようなほのぼのとした空気も出ていて、鳴見(なる)先生にも新鮮に感じていただけたようです。
── 第10話「未知味の拉麺」は小泉を想い続ける悠をホラータッチで表現したことが話題になりました。 セトウ でも原作の時点でかなり異色のエピソードなんですよ。カラフルなラーメンを食べて「ラーメンって宇宙だよね」と悟る話ですから(笑)。水色のスープがピンクに変わっていく不思議なラーメンにあわせて、小泉観察日記を書いている悠をミステリアスに描いたら、結果としてああいう風になりました。私としては原作の流れのままやってみただけなんです。
── ただ悠が小泉の写真をコラージュして、ツーショット写真を作るシーンは原作には存在しません。 セトウ そうでしたっけ? (原作を読んで)あれ、ホントだ(笑)。あのサイケデリックな悠はドラマでは難しいでしょうね。佐倉さんには申し訳なかったですが、アニメならではの要素を入れることができてよかったと思います。
── 第10話も含めて、多くの話数のコンテは小野学さんとセトウ監督のお2人で担当しています。 セトウ はい。小野さんは私の師匠のような存在で、今回はたまたま時間が空いていたのでたくさんお願いできました。私は撮影出身なのですが、2005年放送の「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」で小野さんと一緒に仕事をしたことが、演出に転身したきっかけになったんです。「小泉さん」でも小野さんのアドバイスが生きた部分が多いですね。たとえば最終話のラストでメインキャラが揃ってからのかけ合いは、コンテで足してもらっています。仲良くなったことが、より伝わってくるフィナーレに仕上がりました。
── 音楽もOPテーマ「FEELING AROUND」とEDテーマ「LOVE MEN HOLIC」がどちらもラーメンをテーマにしていて、作品の統一感に貢献しています。 セトウ 音楽についてはフライングドッグの福田(正夫)プロデューサーにお任せしました。普通のアニメソングとは印象が違っていて、予想外の方向に一歩踏み出した感覚が面白いなと思っています。私が何でもOKを出してしまうので、福田さんも少し暴走気味だったかもしれません(笑)。鈴木みのりさんのOPテーマも、西沢幸奏さんのEDテーマも、どちらも歌詞に遊び心があって面白いですよね。
── 劇伴のジャンルも幅広く、攻めている内容になっています。 セトウ 通常の劇伴では印象が弱くなるだろうと考えて、サニーデイ・サービスの田中貴さんと元マグースイムの細野しんいちさんを福田プロデューサーに紹介してもらいました。サニーデイ・サービスの音楽はもちろん聴いていたのですが、田中さんがあんなにラーメンに詳しいことは知らなかったんですよ。ラーメン愛好家としても活動していて、年に600杯ぐらい食べるそうです(笑)。劇伴は初めてとのことでしたが、サンプル曲はポップな仕上がりで、「小泉さん」の女子高生らしさとマッチするだろうなと感じました。
── 曲の発注はどのように進んでいきましたか? セトウ 通常の劇伴では「うれしいときに流す曲です」という風にシーンの感情に合わせた発注をします。でも「小泉さん」はお店ごとの劇伴を作ってもらっていて、「田中さんが考えた一風堂のテーマを作ってください」とお願いしました。これは田中さんだから可能だったリクエストですね。「中本のテーマソングをお願いします」なんて普通の方にお願いしても絶対に無理ですから(笑)。そんな無茶なお願いも田中さんと細野さんは笑って快諾してくれました。
実際にできあがった劇伴はバラエティに富んでいて、ある曲はテクノだったり、流しのギター風だったりとさまざまでした。でも曲を流して、テーマになったラーメンと一緒に食べてみると、不思議とハマるんですよ。「田中さんと細野さん、すごいな……」と私が言うのもおこがましいですがビックリしました。「小泉さん」では1店1曲という贅沢な劇伴になっていて、サウンドトラックにも収録しています。中本だったら「北極。哀愁のタンメン」といったタイトルも付いてるので、ぜひサントラも楽しんでほしいですね。