「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第四章 天命篇上映開始直前!ヤマトサウンドの要・吉田知弘音響監督インタビュー!

2018年01月24日 12:480

衝撃の「さらば宇宙戦艦ヤマト」体験から、音響監督への道

 

──吉田さんご自身の「ヤマト」原体験は、どのようなものだったのでしょうか?

 

吉田 小学生のとき、巨人軍が好きだったので、アニメ「侍ジャイアンツ」(1973)を毎週見てたんですよ。なので日曜日夜7時半には日本テレビ系を見る習慣がついていました。「侍ジャイアンツ」の後番組が「宇宙戦艦ヤマト」だったので、「へぇ~」と思いながら何の気なしに見始めたのが原体験ですね。最初の発見は、「あれ? 主人公の声がおんなじなの?」でした。変な子どもですよね(笑)。そこから、もうどっぷりハマってしまいました。

 

映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」も、父親についてきてもらって、徹夜で劇場に並んで封切り初日に観ています。とにかくあの悲劇的な結末、そして音楽と効果音とセリフ、そして「静寂」に打ちのめされましたね。クライマックスの富山敬さんの古代のセリフ──「命というのは、たかが何十年の寿命で終わってしまうようなちっぽけなものじゃないはずだ。この宇宙いっぱいに広がって、永遠に続くものじゃないのか? 俺はこれから、そういう命に自分の命を代えに行くんだ。これは死ではない!」(※注:吉田さんはこのセリフをその場でスラスラと暗唱)を聴いた瞬間に、自分でも驚くぐらいの勢いで涙が出たんですよ。10歳にして重く大きな死生観を突き付けられたという印象でした。アニメーションには、それほど子どもの心を動かすだけの力があることを、みずから実感したというか。だから、少しでも恩返ししたいなという思いから、自然にこの仕事を選んでいったのかもしれません。

 

音響関連の仕事に就くのも「ヤマト」がきっかけなんです。中学高校の先輩が、「ヤマトよ永遠に」以降の音楽ディレクターをしていまして、いろいろとお手伝いをしているうちに、旧作の西崎義展プロデューサーの会社「ウエスト・ケープ・コーポレーション」に音楽ディレクターとして入社することになりました。90年代半ばに日本コロムビアから出たCD「BGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト」シリーズの選曲・解説をしたり、音楽発注、録音、BGM選曲など、音響制作の一連の流れを学んだりしているうちに、OVA作品「YAMATO2520」(1995)で、作品としての「ヤマト」に初めて参加させていただくことになります。

基本は音楽ディレクター出身なんですが、ある時、高校時代に演劇部にいたことをウッカリしゃべってしまって(笑)。そうしたら周囲が、「じゃあ、アフレコ演出も含んだ音響監督を目指せば?」と背中を押してくれたんです。その後、「マッハGoGoGo」(1967)の時代からアニメの音響監督を務めている大ベテランである本田保則さんのアーツ・プロにお世話になり、NHKのアニメ「プリンセスナイン 如月女子高野球部」(1998)で、音響監督として独り立ちすることができました。そして2009年の映画「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」でも音響監督を任されるようになり、「2199」を経て「2202」に至っています。

ウチは両親も祖父も銀行員の家系で、しっかり働いて、趣味はその稼ぎでやりなさい、というマジメな教育を受けてきたんですが、まさかこんな形で子どものころから大ファンだった「ヤマト」に仕事で関わるとは夢にも思っていませんでした。本当に感慨深いですが、嬉しさより、とにかくプレッシャーのほうが強いですね。

 

 

柏原満さんによる、伝説のヤマト・オリジナルサウンドエフェクトを継承する

 

──音響監督のお仕事としてSE(効果音)という領域もあると思いますが、「2199」に引き続き、柏原満さんによる旧作のオリジナルサウンドエフェクトを扱うことになりましたね。

 

吉田 私が柏原満さんと最初にお仕事をしたのは、音楽とSEだけで宇宙戦艦ヤマトの世界観を再現しようという趣旨のCD「Sound Fantasia 宇宙戦艦ヤマト」(1996/日本コロムビア)でした。その後の「復活篇」でも、やはりあのSEを作品本編に使用したくて、ぜひにとオファーはしたんですがかないませんでした。2012年の「宇宙戦艦ヤマト 復活篇 ディレクターズカット版」の時にも再度お願いして、ようやく音源をお借りすることができました。「2199」「2202」では、その際にデジタル化してあった音源を、フィズサウンドクリエイションさんに現代風のサウンド環境に合うように調整をしてもらいながら使用しています。

 

柏原さんが創り出してきた「ヤマト」の効果音は、当時のシンセサイザー「ミニモーグ」の音をベースに、効果音の世界で古くから使われている様々な技法による現実音をミックスして、さらにその再生速度を調整したり、エフェクトをかけたりと、大変な手間をかけてでき上がっています。たとえばヤマトの航行音は、当時のジャンボジェット機の飛行音が大元になっているんですが、その痕跡はほとんど感じられないでしょう? 今の音響機材では音がクリアすぎて「味」が出なかったり、その当時ならではの機材にしか出せない音があったりと、今ではどうやってその音を作り出したのか、想像すらできないようなものもたくさんあります。

なぜ柏原さんの音がこんなに豊かなのか……。それは、最初から「作りたい音」のイメージが頭の中にあって、試行錯誤の中でそれに近づけていく作業を常にされているからだと、私は思っています。適当にテープや機材をいじっていたらできちゃいました……というものではないんです。信じられないクリエイティビティですよ。柏原さんご自身、SFが大好きで、小説を読んでイメージをふくらませることを若い時分から繰り返していたそうです。そういう素地があってこその、あの効果音なんですよ。私たちが使わせていただく時も、その発想と風合いを大事にしながら使っていこうと、常々スタッフで話しています。

 

音源をお借りした時は、柏原さんが保管されていた400本近くあるアナログの6mmテープを、すべて再生/コピーしながら内容を確認する作業を延々と繰り返しました。テープ自体が経年劣化しているので、状態に合わせて乾燥させたり、クリーニングしたり、つなぎ目を全部貼り直したりと、すべての作業を終えるまで2年近くかかっています。大変な作業量でしたけど、聴き慣れたあの効果音が、クリアな音で次々と耳に飛び込んでくる瞬間は、私にとっては至福の時間でもありました(笑)。波動エンジンの音などは、完成版の音源だけでなく、制作過程の様々な素材音源も残っていたりして、発見と驚きの連続でしたね。

 

 

「2202」のアフレコ現場を包む熱い雰囲気と「ライヴ感」

 

──声優さんに対する演出指導も音響監督のお仕事のひとつだと思いますが、「2202」のアフレコ現場はどのような雰囲気なのでしょうか?

 

吉田 「2202」の収録には、昔のアフレコ現場のような熱い雰囲気がありますね。シーンの流れや空気を大事にして、皆で一緒に「生」でその場面を作りあげていくような形です。40歳代以上の声優さんにとって、かつてはそれが当たり前のアフレコの空気だったんですが、最近は、事前にリハーサル用のDVDと台本が声優さんの手元に渡っていて、しっかり自分の中で演技を作ってから収録にのぞむ場合が多くなっています。場合によるとそれが収録全体の流れに合わないこともあったりするんですが、「2202」の現場はそうではなく、「かけ合い」から生まれてくるよさを存分に生かすことのできる雰囲気を持っています。「第二章」の、ヤマトとアンドロメダがすれ違う瞬間、古代と山南が同時に「衝撃に備えー!」と叫ぶシーンも、後の編集を考えると別々に録音したほうが都合がいいんですが、ここは瞬間の間合いと気のぶつかり合いこそが大事なので、あえて同時に演技してもらい、収録しました。通信機を介しての会話などもそうです。いっぽうの声に通信音風のエフェクトをかける必要があるので、別録りのほうが楽なんですけどね。そういう場面でも、会話の緊張感・ライヴ感を大事にしたいので、別録り・部分録りは、なるべく少なくするように心がけています。

 

キャスティングに関しても、音楽と同様、まずは羽原監督や福井さんの意向をヒアリングして、私のほうで候補の声優さんを選出し、その中から決めていく手順ですね。重要キャラはもちろん監督が最終決定しますが、ゲストキャラの決定は私が任されることもあります。基本的には羽原監督と福井さんがアフレコにも付きっ切りで演出立ち会いをされるので、私の役割は、その指示の橋渡しや、試しに数パターンの演技を録ってみてのセレクト作業などが中心です。でも、これ以上はないというほどのベテラン声優さんが揃っている現場なので、こちらから多くを語る必要はほとんどなく、実にスムーズに収録は進んでいきますよ。「2199」から引き続きのキャラクターが多いので、声優さんたちの間に、すでに信頼関係ができあがっているとも言えますね。

 

──まもなく上映開始の「第四章 天命篇」の音響的な見どころ・聴きどころをおうかがいしたいのですが。

 

吉田 「第二章」あたりまでは、「2199」ででき上がっている作品イメージを「さらば」「ヤマト2」の世界観とどう融合させるのか、その手順をしっかりと踏んでいる状況でした。音楽的にもそれに歩調を合わせていて、旧作音楽と「2199」音楽を中心に使っていました。宮川彬良さんの新作音楽がなかなか流れないことにヤキモキしていた方も多かったことと思います。しかし同時に、「2202」独自の展開が大きく広がりを見せる「第三章」から、徐々に新作音楽の割合が増えてきていることにもお気づきなのではないでしょうか? ガトランティスやテレサの正体が見え始め、デスラーも再登場する「第四章」では、それが一気にドーンと花開くことになります。宮川彬良さんの新曲を待っていた皆さん、お待たせしました。これでもかというくらい流れますので、どうぞ楽しみにしていてください。

 

──本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 


 

(取材・文/不破了三)

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