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モータースポーツ事業とフィギュア商品の並存
──レーシングチーム“グッドスマイルレーシング”の代表もつとめてらっしゃいますが、モータースポーツとフィギュアの世界との関連は、どう考えてらっしゃいますか?
安藝 関連までは考えてないです(笑)。最初は人から頼まれて、プロジェクトに関わっていたのですが、途中から僕らが主導する立場になってしまいました。しかし、その立場に立ったからには一定の効果を出さないと、お互いに不幸なコラボレーションになってしまいます。レースで言うなら、勝利が必要。ただし、勝つだけでは継続性がありませんので、レーシングチームとして採算をとっていかねばならない。それが、けっこう難しいんです。 今でいうクラウドファンディングのような形でお客さんに支えられつつ、企業スポンサーが関連グッズをつくる……という仕組みの中では、グッドスマイルレーシングはうまく行っているケースでしょう。ミニカーやフィギュアなどの関連商材をリリースして、今では「レース場に行けば初音ミクに会える」と、子供さんもサーキットに来てくれるようになりました。新たなファン層獲得という意味では、ずいぶん役に立っているつもりです。
──逆に、モータースポーツとフィギュアとを、完全に分けてしまおうとは考えませんでしたか?
安藝 何か事業を始めるときは、多少のシナジーがあったほうが、やりやすいです。たとえば、僕らはコアなファンを集めるのが、比較的得意です。レースにも、コアなファン層で成立している部分があります。そうした層に、どんな情報を伝えていけばよろこんでもらえるのか。新たなファンが入ってきたとき、レースの本質的な面白さを伝えるにはどうしたらいいのか。そうしたコミュニケーションは、僕らの得意分野。何年かかけて、僕らとお客さんとの関係を密接にしていく。人生で勝った、負けたという話は出にくいけれど、レースならば「負けた、くやしい」といった強い言葉を出せますよね。そうした強い感情を、チーム側とファン側が共有していくのは面白い。「グッスマはレースを頑張ってるから、商品も買ってやるか」といった形で、レースとホビーとはうまく融合はしています。しかし、お互いに背中をあずけていない、独立したビジネスという意味では、まだ少しレースは弱い。今はまだ、レースとホビーとを一緒にやったほうが有利なわけです。それは、アニメ部門やゲーム部門、エアレース部門にも同じことが言えますね。
その世界でいい物は、外の世界でも受け入れられる
──変形するヘッドホン「THP-01 Stealth Black」を開発したり、ラジオ「Hint(ヒント)」の製作にも参加されていますが、グッドスマイルカンパニーはどのような関わり方をしているのですか?
安藝 ヘッドホンに関してはデザインや変形機構の考案のほか、量産の進行管理もやっていますし、音のチューニングや、どのアーティストと組むべきかも考えています。海外のアーティストやミュージシャンとのコネクションが強いので、そのパイプを生かしています。
──クラウドファンディングで出資を募ったラジオ「Hint」は、ホビー商品として作っているのですか?
安藝 ラジオはラジオで、オーディオマニアのようなコアな人たちがいます。そのいっぽうで、ラジオには社会的意義もあります。「Hint」は災害時に役立つよう、このラジオさえ近くにあれば、スマートフォンに自動的に情報が転送される機能が入っています。もしかすると、この機能が、世界中のラジオに搭載されるかもしれない。そのとき、「俺が(クラウドファンディングに)出資したんだぞ」と自慢できれば、ちょっとした人生の彩りになるでしょう。だけど社会性だけではお金は集まりませんから、「本当はここを訴求したいんだけど、出資を集めるには、こっちも外せないポイントだよね」とコントロールするのが、僕らの役目だと思いました。新興のマニアック弱電メーカーですから、軽いフットワークで関わることができます。「ラジオ局がラジオを作る」というのも初の試みだし、トピックスとして小気味がいいですよね。リズムのあるプロモーションができました。それと、発起人の吉田尚記さんの熱気に感染しました。決してあきらめない粘り強い姿勢は、強烈でしたね。 ですから、「Hint」の開発は、ホビーとはほとんど関係がありません。その世界でいいと思われている物は、外の世界でもいいと思ってくれる人がいるんじゃないだろうか。グツグツと加圧されたマーケットを、ポンと外へ出していくことを難しいとは感じていなし、そこへ怖れずにタッチできるのが、うちのチームの強みです。