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「エスペーロ」を聴きながら街を歩くと、風景のすべてが愛おしく見えるんです
── では楽曲についておうかがいします。イタリア語の「エスペーロ」を調べると、いくつかの意味があるんですよね。 牧野 私は、「希望」という意味でこのタイトルが付けられたと解釈しました。歌詞の最後も「見つめていたい 希望満ちる空」となっていて、素敵だなって。「ARIA The BENEDIZIONE」の「ベネディツィオーネ」は「祝福」という意味なので、それとも関連づけられているのかなと思いました。
── 歌詞の第一印象はいかがでしたか? 牧野さんが歌った以前の「ARIA」ソングは河井英里さんが作詞されていましたが、今回はその後を継ぐような形で、松浦有希さんが書かれています。 牧野 「ARIA」シリーズの歌詞と言えば英里さんですよね。ただもう残念ですが実現することはないので・・・。でも、松浦さんが今回歌詞を手掛けてくださって、いただいた音源を最初に聴いたとき、「ああ、『ARIA』だ」と感じたんです。私が感じたものを素直に出せば、また「ARIA」の歌を歌えると確信できたんです。自分の感じたまま、歌えばいいんだという安心感が、この曲にはありました。それがすごくうれしかったです。
── ネオ・ヴェネツィアの風景というか、「ARIA」の世界観全体を俯瞰したような歌詞ですよね。 牧野 曲の中で自分が主人公になるのではなく、語り部になるようなアプローチで歌っていったほうが、曲に寄り添えるように感じました。この曲を聴きながら目を閉じると、ネオ・ヴェネツィアの景色が心の中に浮かび上がってくるような、そんな雰囲気にできればいいなと。制作が始まったのが、昨年の秋頃だったのですが、いただいた仮歌を聴きながら秋の街をお散歩すると、すごく気持ちがよかったんです。木の葉のすき間から見えたり水面に反射したりする太陽のキラキラした光が、この曲に合っていて、目に映る景色すべてが愛おしく感じられて。「エスペーロ」を聴いてくださる方も、私と同じような気持ちになっていただけるように歌っていきました。
── 「ARIA The BENEDIZIONE」のストーリーとの関連性については、いかがですか? 牧野 何かを大切に思うことや見守る温かさを感じる歌詞で、どのキャラクターの想いにも当てはまると思います。最後まで聴くと、明るい未来が感じられて、先ほども言った通り、希望があるんです。
── 「ARIA」は代を受け継いでいく話でもあって、世代をまたぐ温かいつながりが描かれていた歌詞でもあるのかなと思いました。作曲は窪田ミナさんで、本当に美しく「ARIA」らしいメロディなんですよね。 牧野 初めて曲を聴いたとき、「ただいま」って言いたくなる感じがありました。和音の構成や楽器の鳴り方が独特だからだと思うんですけど、ミナさんの曲だとすぐにわかるんです。それが懐かしくもあり、感動的でもあり、歌うのは難しいなあと思ったり(笑)。
── やっぱり、「ARIA」の主題歌は難度が高いんですね。 牧野 以前、コード譜をいただいたことがあったんですけど、実際のミナさんのピアノではそのコードじゃない音も鳴っているんですよね。きっとテンションコードをいっぱい付けていらっしゃって。そこからあの雰囲気が生まれているんだなあと思います。しかも、「エスペーロ」の演奏には、ずっと「ARIA」の劇中音楽を担当してこられたChoro Clubの笹子重治さんと沢田穣治さんが参加してくださっていて、「ARIA」らしさに満ちあふれた曲になりました。
── 作曲者も演奏者も歌い手も、みんな「ARIA」に最初から関わってきた人だということですね。 牧野 「ARIA」の曲を歌わせていただくにあたって、こんなに幸せな環境はないと思いました。
── 2曲目には「ARIA The BENEDIZIONE」のエンディングテーマ「ウンディーネ ~2021 edizione~」が収録されています。これは、TVシリーズ第1期のオープニングテーマ「ウンディーネ」のニューバージョンです。 牧野 イントロのピアノのメロディがかつての「ウンディーネ」ととてもよく似ているので、当時から見ていたファンの方には、懐かしく感じていただけると思います。こちらにもChoro Clubの笹子重治さんと沢田穣治さんが参加してくださって、実はテンポは元のバージョンよりも少し速くなりました。
── 「ウンディーネ」を新たにレコーディングして、いかがでしたか? 牧野 「ウンディーネ」は私の2ndシングルで、レコーディングしたのは16年も前のことです。そのときと比べて、自分の中で変わっていったものが絶対にあるし、この曲を歌うための大事なものをなくしてないかなと、レコーディング前は少し不安になったというか、いろいろなことを考えてしまったんですね。でも、「ウンディーネ」「ユーフォリア」「スピラーレ」という「ARIA」のTVシリーズの3曲は、自分のライブを始め、いろいろな場所でずっと歌わせていただいてきて、私はこの3曲と一緒にここまで歩んできたと言っても過言でないなと思って。私が過ごしてきた時間、積んできた経験が、新しい「ウンディーネ」に反映されていくという気持ちになって、素直に歌うことができました。
── かつての「ウンディーネ」があり、今の「ウンディーネ」があるというのも、流れる時間を大切に受け止めているということで「ARIA」的なんですよね。 牧野 そうですね。新しくなったオケに心を合わせて、今の私のまま歌うのが正解だと思いました。でき上がった曲を聴き比べてみると、2005年に録った「ウンディーネ」にははかなさがあって、今回のほうは人間的に自立した感じを乗せられたのかなと。素敵な物語の最後に流れる新しい「ウンディーネ」を、ぜひ劇場で味わってください。