「ライブへの渇望」&「今の音楽の聴き方」がわかる! 今聴くべき最新アニソン10選! 出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2021冬」

2021年02月25日 19:410

BEASTARS(第2期) OP
「怪物/YOASOBI」

 

今現在、日本でもっとも注目されている音楽ユニット「YOASOBI」によるアニメソング、というだけでも期待値、注目度が十分に高いことがうかがえます。が、楽曲自体はメジャーセブンスを多用したこれまでのYOASOBIらしいアレンジとは違ったアプローチのサウンドになっているのが面白い。これだけ世間から注目される中、大方の予想をいい意味でも裏切る方向にサウンドを舵取りするのはクリエイターとして強靭なメンタリティがなければできないことです。

サウンドは全体的に音の密度感が少なく、必要な音以外は極限まで省かれていて、このあたりはYOASOBIらしさがあります。

音の密度感というのは、音の情報量ということで、言葉を選ばずに言えばYOASOBIのサウンドはいい音ではありません。この「いい音」というのはオーディオ的な観点の話であって、音楽にとっての「いい音」とは違った次元のお話です。端的にいえば「チープ」なんですが、これが絶妙に音楽的な働きをしていてアンサンブルの肝になっているのです。リッチで豊潤な響きがあってお金がかかっているのが一発でわかるゴージャスな音、これももちろん「いい音」ですが、この音楽に必要な音であるか、という観点で見ると(音楽にとって)いい音じゃない、となります。

YOASOBIのサウンドは(オーディオ的には)いい音じゃない、けれども(音楽的に)非常にいい音といえるのではないでしょうか。

スマホや小さなスピーカーを再生環境として想定した場合、オーディオ的にいい音とされる音はほとんど録音した通りに再生できません。音の情報量が大きすぎてスマホ程度のスピーカーでは受け止めきれないのです。その点、YOASOBIのサウンドは小さなキャパのスピーカーでも印象をまったく変えずに再生できる。今の時代に求められる理由は、そういったところにもあると思います。

  

天地創造デザイン部 OP
「Give It Up?/96猫」

 

先述の「怪物」と共通する特徴として、音の密度がそこまで高くないサウンドが素晴らしくいい。楽器の数が少ないということにも注目したいところです。

曲中──A’のセクションで急にレゲエ、ダブっぽくなるところに抜群のバランスのよさがあるので、おそらくはここから逆算して全体の楽器、音数を決めたのではないか、と思うくらいこのレゲエセクションが強いです。特にドラム、「カーン」と抜ける甲高いスネアの音色は曲のジャンルを一撃で決定づける印籠のような存在感。

逆に言えば、この「カーン」なスネアが鳴っていないと、周りがどんなにレゲエっぽくしてもレゲエにならないんです(超極論ですが)。レゲエは音を出すところよりも音を止めるところに音楽的なエネルギーが生まれるジャンルなので、必然的に全体の音数が少ないアレンジになっているのです。楽曲自体はレゲエだけではなく複合的なアレンジで構築されていますが、それぞれのベースとなっているジャンルから派生しているのがわかるアレンジの教科書のような曲だと思います。

  

蜘蛛ですが、なにか? ED
「がんばれ!蜘蛛子さん/私(CV.悠木碧)」

 

強いです。もしかしたらこれ、今期で一番じゃね?と思うくらい(一番でも全然いいんだけど)よすぎて驚きました。いわゆるネタ曲の分類になると思うのですが、行き当たりばったりで作られたり、ネタ先行でつくられたりしていない。とにかく、聴けば聴くほどものすごく緻密に計算されて、きっちり作られている楽曲としか思えません。

いや、そんなことは全然なくて、本当にネタ一発の貫通力のみでぶっちぎったのかもしれない。曲の後半で唐突にガバキックが入るところを考えると、もしかしたらこの曲はハードコアテクノ経由のサンプリング音楽を標榜しているのかもしれません。

楽曲はアイドルソングの定型と言えばそうだけれども、この曲をここまで強くしているのは確実に蜘蛛子役・悠木碧の存在でしょう。声優がいかに「声のプロフェッショナル」であるかがわかります。何回も繰り返し聴きたくなる中毒性の高い楽曲です。

ホリミヤ OP
「色香水/神山羊」

 

楽曲の構成、各楽器のアプローチはバンドのダイナミズムにのっとっているのに、シンセやエレドラがふんだんに使われているので完全にテクノポップな仕上がりとなっており、最高に素晴らしいです。

曲の顔となる印象的なフレーズや音色にオールドスクールな、時代を感じるテクノの教科書のようなネタが使われているので耳なじみがとてもいいです。こういった手法は最近ではサカナクションが代表的ですが、大元を辿ればYMOが元祖です。YMOにはテクノポップとひと括りにはできない音楽性と多様性がありひと言で語るのは難しいですが、歌謡曲から今日のJPOPに至る日本の音楽シーンを決定的に変えた存在であることは、今さら私なんかが説明するまでもないでしょう。この曲もYMOの影響下にある楽曲と言えますが、リズムの緩急や表情にEDM由来の文脈が入っているのがとても面白いし興味深い。

レトロな雰囲気を出しつつも、音楽自体は紛れもなく「今」の必然性にあふれています。

  

闇芝居(第8期) ED
「Twilight feat.Pecori/imai」

 

最後は出口が選ぶ今期イチの楽曲ということで、「Twilight feat.Pecori」

いやもう完全によすぎて言葉がないです。個性の塊としか言いようのないアクの強さで何にも似ていないのに、どうしてこんなにキャッチーで聞きなじみがあるのか。とにかくめちゃくちゃかっこいい。

8期に突入する「闇芝居」ですが、ほぼ毎回選出している気がします。いつも思うのが、どこからこんなにすごい音楽を見つけてくるのか、ということです。楽曲のよさと世間の認知度がまったく釣り合っていない。なので、「闇芝居」の楽曲をきくといつも「とんでもない音楽に出会っちゃった……!」という戦慄にも似た気持ちになります。

この曲はgroup inouのTRACKを手がけるimaiさんのソロ曲。この辺に「お!?」と思った方、ぜひ聴いてください。絶対ハマります。

  

以上、今期10曲お送りしました!

今回は楽曲自体の解説ではなく、楽曲をこうやって聴いたら楽しいよ!的な副読本みたいな内容になっているのに、今、読み返して気づきました。たまにはこんな切り口もいいでしょう(誰に聞いてるんだ)。

皆さんの好きな作品、好きな楽曲はありましたか? もし未見の作品や未聴の曲があったら、これをきっかけに触れてもらえると幸いです。

 

それでは、次回は春の季節にお会いしましょう!

(文/出口博之)

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(C) 板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会

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(C) 「闇芝居」製作委員会 2020

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(C) 壁井ユカコ/集英社・アニメ「2.43」製作委員会

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