「地獄は美しい場所であってほしい」──古川知宏(監督)×樋口達人(シリーズ構成)×中村彼方(作詞家)TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」放送打ち上げロングインタビュー(後編)

2018年11月30日 12:000
「地獄は美しい場所であってほしい」──古川知宏(監督)×樋口達人(シリーズ構成)×中村彼方(作詞家)TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」放送打ち上げロングインタビュー(後編)

2018年7月~9月にTVアニメを放送、2018年10月にはミュージカル「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-#2 Transition」を上演。現在はスマホアプリ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」が絶好調と、とどまることなく多層展開を繰り広げる「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」。

そんな本作がどのように生まれたのか、そしてTVアニメ放送終了後の今だから聞けるエピソードをTVアニメ監督を務めた古川知宏さん、シリーズ構成・全話脚本の樋口達人さん、アニメ全曲作詞と戯曲脚本を担当した中村彼方さんに前回に引き続き聞いていく。ラストには「130g」「全裸待機」といった気になるワードについても聞いているので、ぜひ最後までお付き合い願いたい。

⇒ 古川知宏(監督)、樋口達人(シリーズ構成)、中村彼方(作詞家)が集結! TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」放送打ち上げロングインタビュー(前編)

古川知宏監督の創作のルーツ

──前回、アニメ制作的なテクニックや作画枚数のバランスについてもうかがいました。「スタァライト」はかなり古川監督のカラーが強い作品だと思うので、古川監督の創作のルーツをうかがってみたいです。影響を受けた作品などはありますか?

 

古川 僕は次男なんですよ。それで年上の兄と、兄の友達が盛り上がっている作品がすごくいいものに見えたので、少し年代層が高めの(現在40歳前後の層がターゲットの)作品をよく楽しんでいました。それから映画が好きで、大学時代は歴史を学んでいたこともあって、好きな監督の作品は遡って見るタイプでした。実相寺昭雄監督(TV作品)や鈴木清純監督・新藤兼人監督・北野武監督が大好きでしたね。洋画はもっと長くなるので割愛いたします。アニメを作る側として影響を受けたり作り手として最初に意識したのは明確で、庵野秀明さんですね。

 

──すごくしっくり来ました。「スタァライト」の変身バンク演出を見て幾原邦彦監督の影響を言う人が多いですが(※編注 古川監督は幾原監督の下で演出のキャリアを積んできた)、幾原監督のベースは80年代以前の文法じゃないですか。「スタァライト」は間違いなく「エヴァンゲリオン」以降、90年代の水から生まれた作品だと感じました。

 

古川 幾原さんは70年代の影響が色濃い方ですね。やっぱり90年代に見たものが自分の根っこにあります。漫画はあまり読まないほうだったので、学生時代は映画と、あとはMTVとかですね。学校の近くに住んでいた、友達の八木くんの家がケーブルテレビに入っていたので、よく入り浸っていました、その八木くんが「新世紀エヴァンゲリオン」にめちゃめちゃハマったんです。僕は「これは庵野秀明といって『ふしぎの海のナディア』のだな…」などと解説をしながら、「トップをねらえ!」のビデオを借りに行ったりしました。

 

 

──最終話の「約束タワー」のあたりの見せ方や、華恋がすっとんでいくようなシーンに、80年代以降のガイナックステイストをそこはかとなく感じました。

 

古川 僕はアニメーター出身なので、アニメの動きのリズムの快楽、ああいうダイナミックさがすごく好きなんです。ロジックではない部分で観客の感情を揺さぶる見せ方というか…自分の中にアニメづくりにおいてそれとは別の軸として存在しているのは、幾原さんから学んだ「作品の要素をいかにカリカチュア」するか、そして現場を保持してフィルムを完成させるための技と仕組みですね。みんながいわゆる「幾原演出」として受け止めているものの中には、実はアニメーション制作上のコストパフォーマンスとテーマやビジュアルの提示のためのものが表裏一体になっている要素がすごくあるんです。体力がない現場でも現実的に1本のフィルムを作り上げて完成させる、東映で磨かれた技とノウハウがあるんですね。幾原さんはそのテーマ性や作家としてのあり方がクローズアップされがちですが、「アニメーションを娯楽として完成させてテーマを視聴者に届ける」という技術に関して、抜きん出た方なんです。5年間一緒に仕事をして、幾原さんの技術を一番ロジカルに解析したのは自分だと思っています(笑)。

 

──なるほど、枚数を減らし、意味のない無駄に凝った作画の工数を減らし、それを実現するための手法を開発して演出につなげる、という、前編でうかがった手法の裏にある技術と思想こそが幾原さんに学んだものだということですね。

 

古川 そうです。映像的リズムとして影響を受けているのは庵野さんや北野武監督で、詳しい人が見れば幾原さんと自分のカット割やカッティングがかなり違うのがわかると思います。第七話のカッティングなどは、ところどころ岡本喜八監督をイメージしています。幾原さんから学んだのはクリエイターとしての生き方で、とても感謝しています。

あと全然関係ないですが、個人的に「幾原邦彦」という個人が好きですね。作家とか監督とか関係なく。

 



中村彼方さんは「ボールを受け止めて、投げ返す速度」がずば抜けていた

──中村彼方さんはアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の楽曲全曲の作詞を担当しているほかに、アニメでは「戯曲脚本」としてクレジットされています。作品の鍵を握る戯曲「スタァライト」はどのように生まれたのでしょうか。

 

古川 打ち合わせを重ねるうちに雪だるま式にふくらんでいった流れに、中村さんが巻きこまれた感じですね。

 

中村 (笑)。

 

──ベースになるアイデアは古川監督から出たんですよね。

 

古川 そうですね。この作品は塔がモチーフで、塔といえば旧約聖書にバベルの塔が出てきたり、伝説・伝承によく現れるモチーフです。神聖で手が届きづらい、天に向けて積み上げる人間の営為の象徴のようなモニュメントですね。東京タワーを物語の核に据えた塔押しの作品なのだから、塔を巡る物語を描いた戯曲が必要だろう、というのが発端です。2人の女の子が禁忌に触れて離れ離れになって、というイメージや、「お持ちなさい あなたの望んだその星を」というフレーズ等の断片を中村さんにお伝えしました。“星つみ”を“星罪”と書いてくれたのを見て、ありがとう!と思いましたね。

 

樋口 最初に公開されたトレーラームービーに、監督がやりたいことが全て入っていたんです。

 

古川 まず最初、脚本会議に作詞家として参加していた中村さんに、戯曲の制作を無茶振りしたのはキネマシトラス社長でプロデューサーの小笠原宗紀さんです。

 

中村 最初、私は意見を出すというより、作詞のヒントになる話を聞く目的で会議に参加していたんです。小笠原さんも正式な依頼というよりは、やったらいいじゃん、みたいな軽いノリだったんですよ。

 

樋口 コミック版の「オーバーチュア」の脚本を中村さんに任せたときと同じやり口ですね(笑)。

 

古川 最初は樋口さんに任せる予定だったんですが、樋口さんには全話脚本をお願いしているので、制作スケジュール的に誰かに頼んだほうがいいだろうとなりまして。

 

樋口 ただその時点で数限りなく打ち合わせを重ねており、チーム内の意識の共有が強固にできあがっていて。

 

古川 もうみんなスタァライト脳なので、たとえば十一話のアレンジ版「舞台少女心得」に「幕間」「舞台袖」みたいな舞台っぽさのあるワードを加えてほしい!とご相談すると、「舞台少女心得 幕間」がタイトルとして用意されていたりしました。やりたいこと目指していることの共有がしっかりできているんですね。

 

 

樋口 そういうチームなので、そこに別の新しいライターを入れて戯曲を書いてもらうというのは難しいな、と。それなら誰かのリソースを割くか、誰かが新しいことに挑戦するしかない。その時に作詞家として会議に参加していた中村さんにふわっと白羽の矢を立てたのが小笠原さんだったんです。「(中村さんは)絵本書いてたんですよね?」ってすごい振り方で。

 

古川 そう、絵本と戯曲の脚本の話つなげちゃうんだ、すごいなこの人、と思って(笑)。

 

樋口 でもそこで、やります、と即答する中村さんもすごいんですよ。

 

中村 そうですね。私はそういうボールをいただいた時点で、挑戦したい気持ちがすごくありました。小笠原さんは冗談半分で言われたんだと思うんですが、お話をいただいたからにはやろうと思いました。

 

古川 翌週には形になっていたよね?

 

中村 次の日には叩き台になるものを提出しました(笑)。

 

古川 数日後に小笠原さんからあがりましたと言われた時は、本当に驚きました。小笠原さんはプロデューサーとして、作品の形が拡張するように適切なタイミングで面白いボールを各所に投げ込んでいらっしゃいました。アニメーターに対してもそうで、今回ならプロップデザインの谷紫織さんにもそういうふわっとした挑戦のボールを投げてました。そういうボールって受け止められる人と受け止められない人がいて、よけてしまう人が多いんです。中村彼方さんの場合は、受け止めてからスパーンと返球するスピードと勢いに驚きました(笑)。

 

 

──フローラとクレールと6人の女神たち、の設定は誰発信なんですか?

 

樋口 物語の中でこういう位置づけの戯曲で、物語はこのように展開する、という情報はあらかじめ伝えてあって、戯曲の登場人物の名称などは中村さんが考えたものです。

 

──話の流れで、第100回聖翔祭で大場ななが演じていた「9人目の役」がなんなのかをうかがってもいいですか?

 

樋口 そのあたりは実は、10月26日発売のコミック「少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア2」収録の最終話で描かれています。

 

中村 ぜひ単行本でご覧いただけると幸いです!

 

樋口 実はアニメの第九話の中にも、女神たちの設定にまつわる情報がこっそり入っていて、気づいてくれた方もいらっしゃったようですね。

 

──最終話の第100回聖翔祭の、ななの衣装が第99回の衣装をデザインベースにしているのが印象的でした。

 

樋口 あれは古川さん、素晴らしいな、と思いました。

 

古川 過去のものを持ちながらも、新しい何者かとして描きたくて。デザインを発注する時に、ほかの女神たちの衣裳は新しくしてもいいけど、ななちゃんはそのままで色だけ変えようとオーダーしました。第九話を経たばなななので、執着ではない何かを表現させてあげたかった。あとはテクニック的なものとして、前のものと新しいものが同時に出ていないと駄目なんです。全員の衣裳が変わっていたら、なにがどう変化しているのか舞台上の姿から伝わらないので、変化のポイントと変わらないポイントをわかりやすくするための演出です。ななちゃんは過去のものを持ったまま、生まれ変わった新しい存在を演じていることを表現しました。そのうえで、見守っていました、のような物語に沿った台詞を追加しています。

 

 

──舞台のラストのななが詠うように言う台詞は、アニメで成長した小泉さんにしか表現できないものだったと思います。変化といえば、ラストシーンで華恋とひかりの口上が変わる演出も最高でした。

 

樋口 ある意味、あのシーンに至るために舞台少女達の物語を積み上げてきたところがあるんです。第十一話の流れをふまえて、第十二話は絵と音楽で勝負して、言葉としては口上で締めようと話し合っていました。

 

古川 華恋の口上の「みんなをスタァライトしちゃいます」を「あなたをスタァライトしちゃいます」に変えてもいいのかどうかは、最後の最後まで悩んだんです。でもそんな時に樋口さんが、「それがやりたいことなら、やるべきだ」って背中を押してくれたんです。もう兄貴!ですよ(笑)。

樋口さんは要所要所で僕の背中を教えてくれるんですね。舞台ではひかりとまひるが演じていた「嫉妬のレヴュー」を、アニメで華恋とまひるに変えてもいいのか悩んでいた時に、樋口さんが「古川さんやりましょう、これは愛城華恋の物語なんだから」と言ってくれたんです。この企画ではクリエイティブで悩んでいる時に、年長者たちがぽんと背中を押してくれるのが本当にありがたかったです。

 

樋口 山田音響監督しかり、小笠原プロデューサーしかり、企画の古里尚丈さんしかり。僕もですが、古川監督が何かをやりたいと考えている時は、同じ場所で迷うよりも、こういう選択肢もあるよ、と提案するようにしています。漠然と考えているよりもその選択肢を「ない」と選ぶだけで、道筋は随分とはっきりするので。

 

 

──アニメ第五話で舞台と違う対戦カードが現れたことで、新しい何かがはじまったドキドキがすごくありました。

 

古川 賛否両論を覚悟していたので、思った以上にお客さんがしっかり受け止めてくれたのが嬉しかったです。

 

樋口 第四話で華恋が主人公として立つことを決めていたので、第五話のレヴューがひかりとまひるなのは、ドラマの構成としてはちょっと違うな、と。

 

古川 あの第五話あってこその第九話なのかな、とは思います。第五話で、まひるの気持ちは華恋にぶつけることでしか昇華できないと思うんです。逆に第九話では、華恋がやっつけてもななの気持ちは解消されないと思うんですね。だから別の経路で、純那に救われるお話にしました。

 

樋口 春休みにひとり実家に帰らない純那と、それを見守るなななど、2人の関係性を積み上げていったのもそのためです。

 

台本の台詞が、本人の言葉になっていく

──関係性に注目すると、真矢×クロの関係性や心情については十分読み取れるだけのものを積み上げたうえで、第十話をメインディッシュに仕上げた感じですからね。

 

樋口 あの2人に関しては、あえて描かないことで関係性を立てる、という書き方をしています。

  

古川 書き方といえば、第九話で華恋が戯曲「スタァライト」の英語本を絶賛するシーンを見たスタッフが、なんで華恋ちゃんオタクみたいな口調になるんですかって言っていて、言われてみるとオタクの口調に聞こえるんだけど。あれはテンションが上がってるんですよね?

 

樋口 大好きな古いマンガの初版本を見つけた時の気分、そんな自分の感覚をから出た台詞です。やっぱり「スタァライト」は彼女たちの原点なんですよ。自分が大切にしているものについての感動と感謝、それを誰かと共有できる喜びですね。だからあのシーンへの反応は「急に華恋が敬語になった」という人と、「わかる!!」という人に二分化されていましたね。

 

中村 私はすごくわかりました。たぶん相手がひかりちゃんだからこそ、華恋ちゃんはそういう一面を素直に出せたんじゃないかと思います。

 

 

──そういえば先日、別件で華恋役の小山百代さんにインタビューした際に監督たちに何か質問がないか聞いたところ、「私、ちゃんと成長できてましたか?」と、とても心配そうにおっしゃっていました。

 

古川 小山さんはクライマックスに舞台がせり上がっていく時の(低い、地の底から響くような)「ノンノンだよ」の言い方を聞いて、「よくぞここまで……」と思いました(笑)。それぐらいよかったです。「ノンノンだよ」は元々樋口さんが作った台詞ですが、アニメを通じて愛城華恋と小山百代の台詞にしっかりなったなと思いました。大事な台詞をきちんと自分の台詞にできたということが一番の成長だと思うんです。

 

樋口 監督、あそこの「ノンノンだよ」は「あしたのジョー」のイメージでって言ってましたね。

 

古川 「あしたのジョー2」の矢吹ジョーのイメージです。めんどくさいオタクですいません(笑)。僕の言葉だと絶対伝わっていないんですが、その時の音響監督の山田さんのディレクションがとても明確で。下を向いて発声するように指導していたんです。

 

──小山さんは舞台出身の方なので、身体の使い方で説明してもらえてわかりやすかったようです。

 

樋口 第九話のアフレコなどでは、イメージしたななの声が出ない時に、相羽さんがブースの中で手を引っ張っていた、なんてエピソードがあるんですが、そうすることで力が入った声が出るんですね。物理的にもいろいろ工夫しながら、みなさん演じてくれています。

 

古川 最近、小山さんの「スタァライトしちゃいます」の台詞を(CMなどで)あちこちで聞くんですが、「だんだん言い慣れて自分の台詞になってきたな……でも、まだまだこれからだぞ!」と思いながら聞いています(笑)。

 

──他の九九組の皆さんについても、成長を感じたことなどがあれば聞きたいです。

 

中村 私は小泉さんがばななのループの秘密という大きな爆弾を持った状態で、どう大場ななという役を舞台で、アニメで作っていくかで悩みながら作っていったと思うんですね。おおまかな設定を知っていても、アニメの第七話を実際に見るまではなかなかイメージしにくい設定だったと思うんです。だから第九話での小泉さんの感情を爆発させるような演技や、レヴュー曲「星々の絆」での表現の広がりを見た時は感動しましたし、やっぱりななは小泉さんなんだなと思いました。

 

古川 キャスト全員にそれぞれ思い出があり、感謝したいことがあってここでは語りつくせないですね。

実はこの作品を始める時に山田音響監督が、数名を除いて声優経験がない女の子も多いメンバーで1クールのアニメを作る時に、いわゆる「声優らしい」演技をさせようとしてもいいことはないと話していたんです。彼女たちが舞台もやるのだから、「彼女たちそのもの」を好きになってもらったほうがいいと。

でも、こっちの予想を超えたとてもいい演技が時折「スルッ」と出てくることがあったんですよね。

 

 

──キャスト達自身の声優としての成長力が、大人たちの予想を超える速度だった。

 

古川 わかりやすい例だと、たしかどこかの話数で、岩田さんがマイク前に立つのが怖くなくなったと話していたんですね。そういったことだったんじゃないかと思います。その時に山田さんがくるっと振り向いて「どうしよう古川くん、なんだかうまくなっちゃったんだけど、ある意味困っちゃうんだけど」と話していたのを覚えています。ある程度「不慣れ」なのを作品の味にしていたので、急な成長はキャラクターのふり幅から逸脱しかねなかったので。とはいえ嬉しいことではありましたので、山田さんにもそのふり幅をうまくコントロールして、作品に当てはめていただきました。

 

樋口 まひるは第五話を経て第六話で立ち位置が「お姉ちゃん」に変わったこともよかったのかもしれませんね。

 

中村 第十一話のまひるちゃんの「舞台で、待ってるね」の台詞、本当に素敵でした。

 

樋口 それまでの重みがずばっと乗っていて、こんな表現力のある子なんだと思いました。

 

古川 山田さんといえば、後半だんだん相羽あいなさんの演技にハマっていったのが面白かったですね。相羽さんの演技にちょっと癖がある感じがクロディーヌというキャラに合っていて、すごく面白いと話していました。舞台らしい演技の富田麻帆さんとの対比、組み合わせもよかった。

 

樋口 クロディーヌは「わたし」じゃなくて「んわたし」と頭が鼻にかかるんですね。あれでキャラが一気に立ったのは、山田さんのディレクションのおかげです。

 

 

──フランス語っぽさと子役っぽさが両方感じられる発音ですね。

 

古川 確かに子役出身の人特有の癖ってあるよね。ちゃんとちゃんとのチャントリーマァム。

 

樋口 結構みんなダジャレ好きですよね。ちゃんとちゃんとは監督の作です。

 

古川 こういう打ち合わせの現場には高確率で歌舞伎揚げ、アルフォート、カントリーマァムがあるんですよね(笑)。チャントリーマァムみたいな小ネタは本編ではそっと卓上に置くぐらいしかできないから、コミックの「オーバーチュア」を読んでくださいと。僕「オーバーチュア」めちゃくちゃ好きなんですよ。

 

樋口 ダジャレと言えば「ばなナイス」も予想以上に愛していただいてよかったです。

 



最後に疑問解消のコーナー

──最後に限られた時間ですが、アニメを見て気になった細かい疑問点をいくつか聞かせてください。まずは寮で真矢とクロディーヌだけなぜ個室なんでしょう。

 

樋口 主席と次席だからです。それぐらいの特権を与えたほうが2人のキャラが立ちますし、あの2人を同室のルームメイトにすることによるデメリットが大きすぎるから、という判断もありました。離れていることによって関係を描けるのがトップの強さ。でもそう監督に相談したら、クロディーヌのベッドがいつの間にか天蓋付きになったのはびっくりしました(笑)。

 

古川 対比的に真矢は余分なもののない簡素な部屋ですね。

 

 

──第一話と第四話で、子供の頃の華恋とひかりの劇場での座り位置が逆になっているのはなぜですか?

 

古川 あれはこの作品は裏読みして考察できる作品ですよ、というメッセージをキャッチしてもらうためにいれたノイズです。

 

──見事にハマって、2人が大切にしている過去が別のものだったらどうしよう、とか悩んでしまいました。

 

古川 そういった仕掛けを用意することはできたのですが、それをやると物語の主役がキャラクターから仕組み、ストーリーの側に流れてしまうんですね。お客さんには最終的に、華恋がひかりを助けてほしい、迎えに行ってほしいと思ってもらうのが目的ですから、そこからずれてしまうギミックは入れませんでした。仕組みの面白さはななちゃんに担ってもらっています。

 

 

──ひかりが学園から消えたあととか、いくらでも重たくしようとすればできる場面でも抑制していたイメージです。

 

樋口 彼女たちは舞台少女の世界をみずから選ぶという、すでに大きな選択をした存在です。トップスタァになる、という強いエゴを持った少女たちは、同じ世界に生きる仲間ではあるものの、互いに競い合わねばならない以上、いなくなった人間よりも前に進むことを選ぶ。そういう部分を描きたかったんです。

 

古川 あとは脚本会議で今のお客さんが求めているものを考えた時に、一話完結で次回に引っ張らないことは方針として決めていました。暗く悲しいテンションで過ごす1週間は避けたいと思ったので。

 

──ひかりが英国のキリン・オーディションで負けたあと、体重が130g減っていました。なぜ130gなのでしょうか。

 

古川 「21グラム」という映画にも使用されていた人間の魂の重さは21gというモチーフがありますよね。そういう感じで、「キラめきの喪失」を目に見える形で決定的な何かが失われたことを表現したかったんです。ただ、背中からシュワシュワと光が抜けていくような描写をしてしまったら安っぽい絵になってしまうので、明確に数字で表現しました。ただ、21gという数字は使いたくなかったので、体内から失われたことを見ている人に実感してもらえて、何かゾクッとしてもらえる数字って何かないかなと思った時に、人体の臓器の重さにしたくて腎臓の重さ130gにしました。樋口さんには「サーモンサンド」や「ハンドクリーム」みたいな「たわいもないモノ」を対比的に組み込んでいただいて、よりクッキリと送り出していただきました。脚本家としての経験と技術の高さを感じました。

 

──最終話の「約束タワーブリッジ」はどのように生まれたんでしょうか。

 

古川 自分の中で第10話の「アタシ再生産」というワードをしっかりと描ききれていなかった感覚があったので、最終話では愛城華恋そのものとアタシ再生産という言葉をしっかりと「同じ地平にあるもの」「作品世界に息づく言葉」として描きたいと思ったんです。アタシ再生産はオープニングやPVで使用していたテロップロゴの表現でいく予定でしたが、カッティング後に僕の希望で「電飾」に変更しました。アタシ再生産というロゴは濱祐斗さんにデザインしてもらったものなんです。濱さんのデザインは本当に素晴らしくて、作品を彩ってくれたんですが、ただそれとタワーをそのまま並べるだけではなんとなく、作品の世界にハマらない気がしたんです。あのテロップロゴと東京タワーを…なんて言ったらいいのかな。キャラクターと作品世界の血肉にする道具というか。

 

樋口 舞台装置としてですよね?

 

古川 それ! 樋口さん天才! 兄貴!!

 

樋口 何年一緒にやってると思ってるんですか(笑)。

 

古川 テロップロゴと東京タワーを舞台装置に落としこむために、舞台のイメージから電飾を入れました。

 

樋口 あと監督、十一話のひかりの全裸について、話しておいてください。

 

 

──(笑)。では最後の質問として、砂漠でひかりはなぜ全裸土下座待機していたのか教えてください。

  

古川 裸って、「強い」じゃないですか。それに全部失った感じがする。仲間に送り出された華恋がたどり着いた先で、みんながびっくりするような映像が僕自身見たかったんですよ。ひかりちゃんがいる場所は地獄であるべきだと思っていて、僕の中で地獄は美しい場所であってほしいんですよ。美しいものに囲まれている虚無って、きれいなほど怖いと思うんですよね。女性の体が折り曲がっている姿ってフェティッシュで美しいと思うので、そのフェティッシュさ、美しさって僕が映画や映像作品に求めているものなんです。オープニングの(舞台で横たわる)ひかりもそうなんですが、本編ひかりちゃんはなかなか出番が来ないので、オープニングの出番は大事なんですが、衝撃と美しさを両立する表現が僕にとっては裸なんです。

 

樋口 美しい、大好きなラストシーンです。

 

──なるほど、よくわかりました。今日は長時間ありがとうございました。

 

樋口 今日話したような内容を、打ち合わせでは毎回終電まで話していたんです。

 

中村 本当に充実した時間でした。

 

──この作品がどういったところから生まれたのかわかった気がします。「スタァライト」、そしてこのチームの新作がいつか見られることを楽しみにしています。重ねてありがとうございました。

 

 

(取材・文/中里キリ)

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  • 「地獄は美しい場所であってほしい」──古川知宏(監督)×樋口達人(シリーズ構成)×中村彼方(作詞家)TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」放送打ち上げロングインタビュー(後編)

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少女☆歌劇 レヴュースタァライト

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放送日: 2018年7月12日~2018年9月27日   制作会社: キネマシトラス
キャスト: 小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
(C) Project Revue Starlight

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