アニメライターによる2018年秋アニメ中間レビュー【アニメコラム】

2018年11月25日 12:000

企画記事

アニメコラム

2018秋アニメ

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2018年秋アニメを中間レビュー。「小説家になろう」の人気作「転生したらスライムだった件」、ボーイズラブ作品が原作の「抱かれたい男1位に脅されています。」、「月刊アクション」連載のホームコメディ「うちのメイドがウザすぎる！」、テレビCMから生まれた異色シリーズ「でびどる！」、日曜朝一の怪獣アニメ「愛玩怪獣」をピックアップしました。

転生したらスライムだった件

主人公・三上悟はゼネコン勤務の37歳で、アニメの主人公としては年齢が少し高め。現実世界で過ごした時間が長かったからなのか、彼は生まれ変わった異世界でもサラリーマン時代をよく振り返る。村を救ってほしいとお願いするゴブリンの姿はかつての部下と重なり、ドワーフに連れてこられた酒場では取引先との接待を思い出す。そんな現実との地続き感が主人公を親しみやすいキャラクターにしている。
もっとも親近感がわくのは、エルフという言葉を聞いたときの反応だろう。彼が知識を総動員して思い描いたエルフ像は、アラフォーのオッサンが妄想する90年代風のエルフそのものなのである。あのエルフが画面に映るだけで、三上悟の37年が一体どんな人生だったのか手に取るようにわかってしまい、もはや他人とは思えないほどの一体感に包まれる。捕食者のスキルは視聴者たる我々にも発動していたのだ。

抱かれたい男1位に脅されています。

抱かれたい男ランキング1位を守り続けてきた西條高人が、その座を奪った新人俳優・東谷准太にプライベートでも喰われてしまうラブストーリー。高人は子役時代から芸能界の第一線で活躍し、芸歴20年を誇る大ベテラン。カメラを向けられたときの真剣な眼差しと、ベッドで見せる甘い表情のギャップがかわいらしく、普段はキラキラ天使の東谷を激しい肉食獣へと変貌させる。
映画やドラマの撮影風景を描いた本編はもちろん、作品にまつわるプロモーションもていねいに作り込まれている。Twitterでは高人と東谷の公式アカウントをそれぞれオープン。取材の現場やロケ弁などを写真付きで投稿しており、2人のプライベートを堪能できる。高人が東谷にフォローを返していなかったり、写真にお互いの姿が映り込んでいたりと、細かなポイントにもニヤリとさせられる。

うちのメイドがウザすぎる！

元航空自衛隊員という経歴を持つ鴨居つばめが、ロシア人の母を亡くした小学2年生・高梨ミーシャの家に、新人メイドとしてやってくるドタバタコメディ。小さい女の子が大好きなつばめと、メイドを家から追い出したいミーシャのバトルは、自衛隊とロシアという組み合わせゆえに壮絶な仕上がり。ときには背景動画まで駆使して、つばめのウザさやミーシャの狼狽（ろうばい）っぷりがこれでもかと描かれている。
総作画監督がクレジットされていない第6話では、つばめの元上官でドMの鵜飼みどりが登場。広角の構図を巧みに用いたハイテンションな映像が繰り出されていく。つばめが筋トレにはげむEDアニメも、メインキャストがかけ合う主題歌「ときめき☆くらいまっくす」とマッチしていて何度も見たくなる出来映え。

でびどる！

テレビCMの15秒枠で放送されていたアニメ「コチンPa!」が第3期では15分に拡大。放送枠換算で60倍の大ボリュームになって帰ってきた。悪魔少女のアイラ、シマ、はなの3人が世界征服のためアイドルを目指すストーリーで、番組後半はお題に答える大喜利コーナーに突入。三森すずこ、井口裕香、花澤香菜と女性キャストの珍回答を楽しめる。
注目は、3人を指導する露血ッ斗先生役を務める「ROCKETMAN」ことふかわりょう。情報番組「5時に夢中！」での淡々とした司会さばきに定評のある芸人が、人気声優を相手に辣腕をふるいまくる。大喜利を無茶ぶりされたときには、シュールの貴公子と呼ばれていた時代の鋭さも顔を見せ、どこか懐かしさも味わえるギャグアニメとなった。

愛玩怪獣

日曜の朝一番に放送されている怪獣アニメ。休日の早朝にふさわしい爽やかな作品かと思いきや、正体不明の怪獣たちが東京を破壊し尽くすディザスターな内容で、寝ぼけまなこの視聴者を覚醒させる。登場する怪獣は毎回異なっており、ぬいぐるみのような見た目ながら何だかグロテスク。車を次々に串刺しにするイヌ型怪獣・愛玩剣、高層ビルに貼り付くカメレオン型怪獣・愛玩変、流れるプールに突如現れたカエル型怪獣・愛玩蛙。どれも悪夢から抜け出してきたかのようなデザインだ。
背景はリアルなタッチで表現され、ときには怪獣からの1人称視点も交えることで、その巨大さが強調されている。人間がすべてデッサン人形として描かれている点もホラー感を倍増させ、日曜の朝であることを忘れさせる一作。

（文・高橋克則）

(C) 川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会
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