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高垣彩陽ニューシングル「Futurism」「今を刻むうえでも大事な1枚に」

2017年08月01日 12:000

声優

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「祈ることしかできない」その理由とシンプルに形にした理由

── 2曲目の「世界と私はつながっているのだから」を作られたKOKIAさんとは「機動戦士ガンダム00」で「高垣彩陽 come across フェルト・グレイス」という形で楽曲を作っていただいた2009年以来ですか？

高垣　はい、そうなんです。come acrossは、役者がキャラクターとの間に立って、このアーティストさんとやりたいという人と曲を作りましょうという企画だったので、その時に当時一番聴いていたKOKIAさんとご一緒したいということでかなえていただいたんです。あの時はソロデビューする前で、高垣彩陽としてはじめて歌ったので、KOKIAさんにいろいろ気持ちを引き出していただき、すごく印象深いレコーディングになりました。いつかKOKIAさんとまたご一緒したいとずっと願っていてオファーもさせていただいていたのですが、なかなかタイミングが合わず、今回満を持して書いていただくことができました。

── 「世界と私はつながっているのだから」はどのようなテーマでお願いされたのでしょうか？

高垣　昔からそうだったんですけれども、身近な人に悲しいことがあったりとか、国内外のさまざまな悲しいニュースだったりを目にした時に浮かんだ「祈ることしかできない」というワードをいつか歌にしたいなと思っていました。それを曲にしていただくんだとしたらKOKIAさんがいいなと思っていたので、それを今回かなえていただきました。特にそう思ったのが、昨年9月にニューヨークに1人旅をした際のことです。きらびやかなブロードウェイや五番街があるいっぽうで、貧困を間近に見る機会がありました。そこには私より若い人も、親子連れもいたりして、その人たちに私ができることは何なんだろうという答えの出ない葛藤に襲われました。そうした思いを抱えてセントパトリック教会に行った時に「私には今日出会った人たちのために」と祈った経験が、今回の楽曲作りの大きなエネルギーになりました。KOKIAさんにそのことをお話した際、イメージとしては教会音楽みたいなものを想像していたのですが、「彩陽さんがそういう曲がいいというのだったらそちらの方向でもいいけれど、こういうテーマはシンプルな言葉と音楽のほうが伝わるものもあると思うし、メッセージがはっきり伝わるような歌を歌う彩陽さんの曲も聴いてみたいです」とおっしゃってくださいました。そういう風に言ってくださるんだったらぜひそちらで、とお願いしたところ、こういうジャジーで、ストリートで歌っているような距離の近い感じの楽曲になりました。

── リズムも向こうの音楽を思わせるような感じですね。

高垣　ちょっとシャッフルが入っていたり、フェイクの部分をKOKIAさんが仮歌で入れてくれていたのですが、もうそれがすばらしくて、そのままリリースしたいくらいでした（笑）。私ってリズム音痴だし、こんな風に格好よくフェイクを入れられるかなと思ったのですが、かといってガッツリ練習して臨むのとも違うので、KOKIAさんのスタジオで録らせていただく中でつかんでいきました。最初は熱く伝えたほうがいいのか、それともちょっと引いたほうがいいのかというテンション感も、何回もやる中でリズムの取り方や遊び方がわかってきたかも、という感覚を得られたので、そこは自分としても新たな挑戦だったと思います。

── 高垣さんのシングルの3曲目は毎回、クラシックやミュージカルの楽曲カバーを収録されていますが、今回の「Happiness」は、5月まで出演されていた「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」の曲です。収録までの時間がこれほど近いのは初めてでは？

高垣　そうですね。1、2曲目はその公演期間中に録っていました。「Happiness」は大千秋楽を迎えた数日後に録りました。ラストの一番大事な曲で、いつかカバーしたいなと思っていたのですが、終わってすぐがいいのか、それとも時間を置いてからがいいのかと思った時に、その前の2曲が希望とともに苦しみも伴う曲でもあるので3曲めは明るいメッセージがある曲のほうがいいのではと思い、ホットな気持ちのまま歌うことにしました。

── 歌についてはどんな思いを抱きましたか？

高垣　歌詞を読んでいただければわかるように、子供たちやスヌーピーも含めてみんなが、それぞれ好きなものや楽しい瞬間、うれしかったことや幸せに感じるものをそれぞれ歌っていくという曲なんです。私は「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」に出演する以前に、友人が出ていたミュージカル曲を集めたコンサートでこの曲を聴いていたんです。そのときは翻訳して、演者がそれぞれ好きなものを替え歌みたいにして歌っていたのですが、それがすごく印象に残っていて。今回出演するにあたって、「あのときの曲はこの作品だったんだ！」と知ったんです。稽古中、自分がうまくできなくて悩んで辛い時もありましたが、「差し入れのチョコレート美味しかったな」とか「制作さんがかけてくれた言葉がうれしかったな」とか思い出しながら、この曲の「よかった探し」のスピリットにすごく助けられました。他の人ともよかったことをシェアしたりして、元気をもらったりして、この曲自身が私を励ましてくれました。歌詞を読んでいると、「靴紐が結べた」とか本当にさりげない日常のことにも幸せが隠れていることに気づかせてくれるんです。ミュージカルのセリフで「今日もそんなに悪い日じゃなかったな」というのがあるのですが、1日の終わりにそう思えることって幸せなことだと思うので、そんな風に思えるきっかけになる歌だったらいいなと思っています。リスナーの方には、聴きながらその日自分に起きたよかったことを思い浮かべて、替え歌にしていただけたらうれしいです（笑）。

── 編曲の奈良部さんはミュージカルには関わっていらっしゃいますか？

高垣　いえ、そうではなく、ひとつ前のシングルのカップリング曲「夢が教えてくれるもの」を作曲していただいたご縁でこちらのアレンジをお願いしました。普段は自分からあまり言わないのですが、今回はテンポとかピッチについていろいろと注文を出させていただきました。というのも、今回気づいたのですが、ミュージカルって、歌っている人はもちろん、演奏している人にも歌心とか芝居心がないとうまく噛み合っていかないんですよね。歌詞の意味やそのシーンで描かれていることを音楽でも表現するには、演奏する側がそれを理解して演技に乗っているものである必要があります。極端な例で言えば、幸せなシーンのゆったりした曲が、すごく重たかったら悲しそうに聴こえてしまいます。特に公演と時期が近いこともあり、それとまったく同じにしたいわけではなかったのですが、ここは笑顔で歌いたいとか、余韻をもう少し残してとかいろいろお願いしてワガママ言いまくってしまったのですが、奈良部さんのお力もあって、残せてよかったと思える曲になりました。

── この1枚はいろんなドラマが詰まった作品になりましたね。高垣さんはソロやスフィア、声優、舞台や朗読など活動も幅広くなさっていて、それぞれを通じて得たものが1枚にビッシリ詰まっている。

高垣　まさにそうだったらいいなと思います。こんなに幅広く声を使ったフィールドで表現させていただき、そのたびに壁に突き当たりもしますが、学び得ることもたくさんあります。いろんな所からインプットしてきたものを、また次の場面でアウトプットしていくということを繰り返させてもらえて、こんなにもいろいろな世界の人たちとの出会いがあり、そこでしかできない経験をさせてもらって、本当に自分は恵まれているなと改めて思いました。そこで得たことが実はここに生かせるとか、ここにも当てはまるかもしれないということを日々勉強しています。今回のミュージカルは4年ぶりだったこともあり念願でしたし、自分としても得るものがすごく大きい体験だったので、その期間中にこの1枚を生み出せたことは、ひとつ今を刻むうえでも大事な1枚になりました。

＜取材・構成：日詰明嘉＞

■11th Single「Futurism」